ITEM2024 富士フイルム ブースレポート
画像処理をコア技術としてMRI,CTからPACS,AIまでヘルスケアの課題をトータルに解決する製品群をアピール
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2024-5-10
富士フイルムブース
富士フイルムグループは,富士フイルム(株),富士フイルムメディカル(株),富士フイルムヘルスケア(株),富士フイルム医療ソリューションズ(株)の4社合同でブースを構成し,展示ホールのCからDにまたがる広大なスペースを使って展示を構成した。ブースは,会社ごとではなく,ITEM 2023と同様にA(読影ソリューション)からN(デジタルX線TVシステム)まで14のカテゴリーに分けて展示した。富士フイルムホールディングスは,2024年に90周年を迎えるが,その節目に当たって企業の新たなパーパスとして「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を掲げた。そのパーパスは,ブース上部に設けられた大型ディスプレイでも繰り返し表示されていた。ヘルスケア事業は,グループの売上高の3割以上を占める大きなセグメントとなっている。その中で画像診断機器を扱うメディカルシステム事業については,2024年7月1日に向けて国内の組織再編が進められている。ITEM 2024は,一足先に富士フイルムのメディカルシステム事業の融合と,さらなる進化を感じさせる展示となった。
ITEM 2024に向けては,開催直前までに多くの新製品がリリースされた。その中でも,4月8日に発表されたのが,完全ゼロヘリウムを実現した1.5テスラ超電導MRI「ECHELON Smart ZeroHelium」とワイドボア1.5テスラ「ECHELON Synergy」だ。特にECHELON Smart ZeroHeliumについては,“F”ujiの頭文字を冠した「FCT」の第一弾製品の64列128スライスCT「FCT iStream」とともにブースの最前面にフィーチャーされ,「地球上の笑顔の回数を増や」すことができる先進技術の概要とそのコンセプトが,プレゼンテーションの中で繰り返しアピールされた。
●MRI:完全ゼロヘリウムの1.5T超電導MRIやAI技術でモーションアーチファクトを除去するStillShotを紹介
●CT:高画質の提供と検査ワークフローの向上を可能にする“FCT”の新製品「FCT iStream」を大きくアピール
●X線:カメラアシスト機能を搭載したデジタルX線画像診断システム「FUJIFILM DR BENEO-Fx」の新モデルを展示
●マンモグラフィ:トモシンセシスバイオプシーに対応した「AMULET SOPHINITY バイオプシーポジショナー」を展示
●X線TV:“3WAY ARM”で内視鏡検査を支援するデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Apex」
●超音波:肝脂肪化を評価する「ATT(iATT)」を標準搭載した「ARIETTA S750 DeepInsight」を展示
●ワークステーション:“Opening of New Stage.”を実現する「SYNAPSE VINCENT」の新機能を紹介
●PACS:SYNAPSE SAI viewer Ver2.4の新機能とビューワと連動する新しいレポートシステム「SYNAPSE SAI Report」を展示
●治療RIS:一からデザインを見直し放射線治療を支援する部門情報システム「RADISTA TheraRIS」を展示
●MRI:完全ゼロヘリウムの1.5T超電導MRIやAI技術でモーションアーチファクトを除去するStillShotを紹介
MRIコーナーで大きくフィーチャーされたECHELON Smart ZeroHeliumは,独自の冷却機構によって完全ゼロヘリウムを実現した。MRI装置では,超電導状態を維持するため磁石を極低温(−269℃)に保つ必要があり,冷却媒体として液体ヘリウムが使用されている。液体ヘリウムは,気化すると700倍に膨張することからトラブル発生時の安全対策としてヘリウムガスを屋外に排出するための排気管の設置が必要となる。これによって,設置場所が制限されるほか,MRI装置の設置の際にも慎重な扱いが求められる。また,吸着事故などで磁場を落とした場合には専門のサービス員による復旧作業が必要で,2日以上のダウンタイムが発生する。さらに天然資源である液体ヘリウムは産出量が少なく,産出国も全世界で7か国と限られており調達や安定供給が難しい状況にあるのが現状だ。
ECHELON Smart ZeroHeliumでは,磁石を熱伝導率の高い金属で囲んで冷凍機による極低温を効率良く伝えることで冷却して液体ヘリウムを使わずに超電導状態を維持する機構を開発した。液体ヘリウムをまったく使わないことで,排気管などの設備が必要なく高層ビルなどこれまで設置の難しかった場所にも設置が可能になる。また,吸着事故などのトラブル時にはユーザー自身による復旧作業が可能で,装置のダウンタイムを削減して安定稼働が可能になる。
ECHELON Synergyには,新たに被検者の体動を検知する「Synergy Vision」が搭載された。Synergy Visionでは,ボア内に設置した2つのAIカメラで被検者の状態をモニタリングして,被検者の体動を検知する。体動があると通知音と画面表示で検査者に通知するほか,画像データにモーションアーチファクトが確認された場合,「StillShot」を利用して画像を改善できる。StillShotでは,Synergy Visionと連動して体動の影響のあるデータを除去し,画像再構成することでアーチファクトを抑制した画像を提供できる。体動を原因とするモーションアーチファクトの発生率は50%程度あると言われており,その多くが再撮像となりMRI検査のスループットに影響している。Synergy VisionとVisual StillShotによってモーションアーチファクトを検知して,その場で対応したり画像再構成で画像を改善することで,再撮像の頻度の低減が期待される。StillShotは,T1,T2,FLAIRをはじめ,3D画像を含めたあらゆる画像種で使用可能となっている。そのほかにもSeriesSaveでは,検査を中断した場合にそれまでの撮像データから繰り返し演算処理を行うことでデータ補完して画像を提供することができる。
また,AI技術を活用して新たに開発したノイズ除去技術「Synergy DLR」をバージョンアップして,トランケーションアーチファクトの低減や画像尖鋭度の向上を図った。画像種を問わず適用が可能で,高速撮像法「IP-RAPID」や体動アーチファクトを抑制する機能「RADAR」との併用も可能となっている。
●CT:高画質の提供と検査ワークフローの向上を可能にする“FCT”の新製品「FCT iStream」を大きくアピール
CTではFCT iStreamのほか,体動アーチファクトの低減技術や検査をサポートする自動化機能を強化した64列CT「SCENARIA View Plus」を展示した。
FCT iStreamは,富士フイルムの“F”の文字を冠した“FCT”の第一弾として2023年12月に国内で発売され,RSNA 2023の展示ブースでもお披露目された。日立製作所の画像診断関連事業の買収後,富士フイルムの開発スキームや技術を注ぎ込み,一から設計し直して開発した最初のCT装置となる。FCT iStreamは,CTとしての高画質・低線量・高速撮影の提供はもちろんのこと,富士フイルムグループのCTとして,検査オーダからスキャン,画像解析,読影という検査ワークフローのすべてを,富士フイルムグループの製品やシステムでトータルに提案することで,病院における検査業務に最適な提案が可能になる。その中で,中核となるFCT iStreamのさまざまな機能をブースで紹介した。ハードウエアとしては,6MHUのX線管装置を搭載し最大管電流670mAの高いX線出力が可能で,造影検査を多く行う施設でも運用しやすいスペックとなっている。また,画像処理機能「IPV」,検査効率向上技術「SynergyDrive」を搭載し,3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT Core」を採用して,高速,高精細な画像検査を効率的なワークフローで実施できる。
SCENARIA View Plusは,心臓検査にも対応した64列CTとして2022年に登場した。今回の展示では,適用対象が拡大されたポジショニングサポート機能の「AutoPositioning」やスキャン範囲自動設定機能「AutoPose」の新機能,胸部(肺野)領域をターゲットにしたモーションアーチファクト低減技術「Body StillShot」などを中心に紹介した。
AutoPositioningは,寝台の上に設置されたカメラの映像から患者の特徴点(顔の目,鼻,口や腰,足首など)をAI技術で自動認識して,ワンボタンで最適な位置まで寝台が自動で移動する。SCENARIA View Plusは開口径が80cmと広く,寝台の左右動も可能で正中位まで自動で合わせることが可能になる。さらに,AutoPose機能では撮影されたスキャノグラムから撮影範囲の自動設定が可能で,頭部ではOMラインに合わせた設定など撮影範囲や最適なFOVが推奨条件として設定される。最新バージョンでは,適用対象部位がAutoPositioningとAutoPoseともに14種類に拡大された。
従来のCardio StillShotに加えて,肺野・縦隔・大血管など胸部領域のCT撮影時に適用可能なBody StillShotを搭載した。Body StillShotは,胸部領域の撮影時に適用可能で非剛体位置合わせによって四次元の動きのベクトルを算出して適応することで,体動アーチファクトを低減する。収集したRaw Dataから被写体の動く方向と量を四次元的に算出する際に,体軸方向の連続性を広範囲に維持することでアーチファクトの少ない画像を提供する。心電情報を必要としない演算アルゴリズムを採用しているため,胸部ルーチン検査へ適用でき,IPVとの併用も可能となっている。
●X線:カメラアシスト機能を搭載したデジタルX線画像診断システム「FUJIFILM DR BENEO-Fx」の新モデルを展示
X線撮影システムのコーナーでは,デジタルX線画像診断システム「FUJIFILM DR BENEO-Fx」の新モデルを展示した。BENEO-Fxは,X線画像診断システムのハイエンドモデルで,FPDには同社の「FUJIFILM DR CALNEO HC SQ」を搭載し,散乱線成分を低減するVirtual Grid処理やダイナミック処理(いずれも有償オプション)で高画質画像が得られる。新モデルでは,懸垂器部分に12インチ大画面タッチパネル液晶モニタを搭載し,撮影に必要な情報を確認しやすくした。さらに,コリメータ部分に搭載したカメラの映像を利用したカメラアシスト機能が利用できる。カメラアシスト機能では,モニタに表示された患者の映像上にX線照射領域やAECセンサの位置などを重ねて表示するオーバーレイ表示機能,ポジショニング時の静止画とライブ映像の差分を表示して体勢の変化を通知する体動表示・通知機能によって,位置決め操作をサポートして再撮影のリスクを軽減する。
また,同コーナーでは,昨年のITEM 2023で発表され,富士フイルムのシナジーを象徴する製品として注目を集めたX線画像診断システム「CALNEO Beyond」も展示された。CALNEO Beyondは,透視撮影にも対応したDR「FUJIFILM DR CALNEO Flow」を組み合わせることで,1台で一般X線撮影からX線透視撮影までを可能にする。導入施設では,整形領域でX線撮影で骨折が判明し整復が必要になった場合に,部屋を移動することなく透視下で処置を行うなど,装置の特徴を生かした診療が可能になっているという。今回の展示では,X線骨密度測定装置「ALPHYS LF」も組み合わせて展示した。ALPHYS LFは一般X線撮影システムの撮影台との組み合わせて検査が可能な骨密度測定装置で,これによって一部屋で撮影,透視,骨密度測定が可能なことをアピールした。ALPHYS LFには,新たにAI技術を生かして開発された腰椎自動解析機能が搭載され,解析時間の短縮や測定結果のばらつきを抑制して解析精度の向上が図られている。
●マンモグラフィ:トモシンセシスバイオプシーに対応した「AMULET SOPHINITY バイオプシーポジショナー」を展示
デジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY」は,富士フイルムが培ってきた低線量・高画質の技術に加え,AI技術を活用して開発したプロジェクション機能「Positioning MAP」や「ポジショニング解析機能」で再現性の高い撮影をサポートするマンモグラフィシステムとして,昨年のITEM 2023で発表され大きな注目を集めた。今回の展示では,2023年12月にリリースされた専用オプションである「AMULET SOPHINITY バイオプシーポジショナー」の機能を中心に紹介した。ユニットは,ポジショナー,バイオプシーバーティカル用圧迫板,操作パネルで構成されており,それぞれ小型化されてセットアップが容易になっている。特長の1つが,7インチのタッチパネルカラーモニタを搭載した操作パネルである。画面には,乳房のシェーマ図や針の座標などがグラフィックに表示され,実際の様子と見比べながらターゲットと針の位置関係を把握して生検を進めることができる。トモシンセシスバイオプシーに対応し,AMULET SOPHINITYで撮影したトモシンセス画像でターゲットを選択すると,三次元の座標を表示して生検をサポートする。生検針を装着するニードルホルダーに傾斜(10度)をつけて,トモシンセシス画像撮影の際の針の重なり低減して視認性を高めた。また,ターゲティング時にはトモシンセシス撮影から再構成した合成2D画像(S-View)を生検の位置決めに利用できるのも特長だ。S-Viewでターゲットをクリックすると対応するトモシンセシス画像にジャンプする。従来は,2D画像で確認した所見箇所に該当する場所をトモシンセス画像のスライスから探す必要があったが,これによって操作の手間を省き検査時間の短縮を実現する。そのほか,標本撮影コリメータを搭載して検査中に乳房を圧迫したまま標本の確認ができるほか,圧迫板の洗浄ができるようにするなど,バイオプシー検査全体におけるワークフローの改善を図っていることをアピールした。
●X線TV:“3WAY ARM”で内視鏡検査を支援するデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Apex」
デジタルX線TVシステムのコーナーでは,2022年に発売されたデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Apex」を展示した。内視鏡検査・治療に特化したX線TVシステムの最上位機種で,X線管を搭載したアームが縦・横だけでなく,斜め方向にも可動することで,患者を載せた天板を動かすことなく異なった角度からターゲットを確認して検査・治療が行える。また,声で画像処理などの操作が行えるボイスコントロール「MAGICHAND」や散乱X線を可視化する線量マップ「IntelliMAP」など,使いやすさや安全な検査を支援する機能を搭載した装置となっている。ITEM 2024では,検査室内の画像確認用液晶モニタを天吊りするアームを保持する支柱を,装置の背面に取り付けられる「セキュアアーム」の機構を新たに搭載したことを紹介した。これによって検査室の天井工事が難しい場合でも液晶モニタが設置できる。
●超音波:肝脂肪化を評価する「ATT(iATT)」を標準搭載した「ARIETTA S750 DeepInsight」を展示
超音波診断装置のエリアでは,肝臓の脂肪量を評価する機能である「ATT(iATT)」を標準搭載した新製品「ARIETTA S750 DeepInsight」を展示した。富士フイルムヘルスケアは,超音波の減衰を利用して肝脂肪化の程度を推定するための指標としてAttenuation Measurement(ATT)を提供してきた。iATTでは,解析範囲や送受信の設定方法,減衰計測方式の見直しなどの技術開発を行い,高い減衰推定性能を実現した。iATTは,超音波を用いたCAP法(フィブロスキャン)やMRI-PDFFの測定結果との相関性が高く,非侵襲的かつ簡便に脂肪肝の評価が可能な方法である。超音波減衰法による肝脂肪化評価は,2022年の診療報酬改定で保険収載(200点)された。また,iATTを標準搭載したARIETTA S750 DeepInsightは,「超音波の減衰量を非侵襲的に計測し,肝臓の脂肪量を評価するための情報を提供するもの」として医療機器製造販売承認を取得している。ARIETTA S750 DeepInsightは,組織の硬さを評価する機能「Shear Wave Measurement(SWM)」を搭載し,肝線維化の評価を含めて肝臓の総合的な評価が可能となっている。
●ワークステーション:“Opening of New Stage.”を実現する「SYNAPSE VINCENT」の新機能を紹介
3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」は,最新バージョンであるVer7.0の新機能を中心に紹介した。SYNAPSE VINCENTは,富士フイルムの画像認識技術をベースに開発された3Dワークステーション(WS)として診断や治療に活用されてきた。その画像解析技術は,同社のCTやMRIにも画像処理のコア技術として搭載され,AI技術と組み合わせて活用されている。
Ver7.0は“Opening of New Stage.”として,従来の3D画像作成や術前シミュレーションなど3Dワークステーションの枠にとどまらず,新たなステージへと展開する多くの新機能やアプリケーションが追加されたことをアピールした。ブースでは,多くの新機能の中から「脳脊髄液腔解析」「椎弓根スクリューシミュレータ」「CRT症例検索」を紹介した。
脳脊髄液腔解析は,ハキム病〔特発性正常圧水頭症:idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus(iNPH)〕の判別に用いられるくも膜下腔の不均衡分布(DESH)の解析に必要な脳の領域を自動で抽出して解析を行うアプリケーションである。DESHの解析に必要な,シルビウス裂・脳底槽,高位円蓋部・正中のくも膜下腔を自動でセグメンテーションして体積比を算出する。脳脊髄液腔解析は,富士フイルムのクラウド型AI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space」を活用して,名古屋市立大学と共同開発した技術を搭載したものだ。また,頭部領域では「脳区域解析」の区域分けの数が107区域まで増加した。詳細な区域分けによって,例えばMRIの定量的磁化率マッピング(Quantitative Susceptibility Mapping:QSM)と対比させて神経変性疾患の病態観察に役立てることが期待される。
椎弓根スクリューシミュレータでは,ボリュームデータから作成された椎体の3D画像を利用して,自動認識した椎体に対して留置するスクリューの位置をシミュレーションできる。椎体の認識には,SYNAPSE VINCENTの任意断面観察用アプリケーションである「スライサー」を利用し,非造影データから大動脈抽出を行い,血管との位置関係なども確認が可能だ。椎体手術のための専用アプリケーションなどもあるが,椎弓根スクリューシミュレータでは3DWSを利用してより簡便にシミュレーションが可能になる。
CRT症例検索は,化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)の際に類似の過去症例を検索できるアプリケーション。アストラゼネカ社と共同で開発されたもので,切除不能なステージIII非小細胞肺がん(Non-small cell lung cancer:NSCLC)が対象。CT画像の腫瘍位置指定により過去の症例データベースから類似した症例を検索して放射線治療計画の情報を参照できる。
そのほか,手術シミュレーションの支援として,サーフェスレンダリングに新しいレンダリング技術(Order Independent Transparency)を採用,「+肝臓変形機能」では術前に切除断面を3D画像でシミュレーションできるなど,より臨床に即した機能が強化された。
●PACS:ビューワ一体型の新しい読影レポートシステム「SYNAPSE SAI Report」を初披露し,最新版SYNAPSE SAI viewerとの連携による読影業務効率化を紹介
読影ソリューションコーナーでは,AIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer」の最新バージョンであるVer2.4と,ビューワと連携して読影ワークフローを支援する新しい読影レポートシステム「SYNAPSE SAI Report」を展示した。SYNAPSE SAI viewer(以下,SAI viewer)は,2019年の登場以来,富士フイルムのメディカルAIブランド「REiLI」の下,高画質化,視認性の向上,臓器セグメンテーション技術をベースにした読影支援などを目的として開発を進めてきた。今回の展示では,最新のVer2.4で搭載されたSAIフィルタの対象臓器拡大や大動脈ビューなどの機能に加えて,ビューワ一体型読影レポートシステムとして新たに登場した「SYNAPSE SAI Report」との連携機能を中心に紹介した。
SYNAPSE SAI Report(以下,SAI Report)は,SAI viewer上に表示した画像上で直接,解析結果の表示や所見文の作成が可能で,作成した所見文はSAI Reportにそのまま転記できるなど,ビューワとの連携性を高めて読影業務支援およびワークフロー改善に貢献する読影レポートシステムである。
所見文の作成では,例えば,SAI viewerの膵臓吸収値強調フィルタでは,臓器セグメンテーション技術を活用して膵頭部,膵体部,膵尾部の3つの解剖区域のラベリングが可能だが,この解析結果を取り込み,腫瘤の部位,大きさなどの数値を含めてた所見候補文が作成される。このように,所見文候補作成機能によってSAI解析結果を候補文に取り込んで,所見文の候補を提示する。さらに作成した所見文とキー画像をSAI Reportに転記すると,SAI viewerに紐付いたハイパーリンクが作成される。ハイパーリンクは診療科に提供される参照レポートにも付与され,依頼医はリンクをクリックすることで対象画像の確認が簡単に行える。放射線科の読影環境では,過去所見のハイパーリンクをクリックすることでキー画像だけでなく,今回の検査のシリーズの中から自動でスライスを合わせて表示される。タグ情報から同じ条件のシリーズを選択して表示することも可能で,手動で過去画像を選択してレイアウトを並べ替える必要がなく読影を効率化できる。
SAI viewer Ver2.4では新機能を紹介した。対象臓器が拡大されたSAIフィルタの肺動脈低吸収値強調フィルタは,造影CT画像上の肺動脈から周辺臓器と比較して低吸収領域に色を付けて表示して造影欠損域の血栓有無評価できる情報を提供する。肺塞栓症は急性期には死亡率の高い疾患であり,慢性の場合には自覚症状が少なく発見が難しいという課題があり,ほかの部位を目的とした造影CT画像からリスクをピックアップすることで,診断支援につながることが期待できる。また,大動脈ビューはSAI viewer上で直行断面/ボリュームレンダリング(VR)/CPRの3画面を表示させ,胸部大動脈から腹部大動脈の中心線に直交する断面を自動認識する。認識された各断面から大動脈短径が最大となる箇所を強調表示することができるので,計測結果の再現性や読影業務の効率化が期待できる機能だ。
●治療RIS:一からデザインを見直し放射線治療を支援する部門情報システム「RADISTA TheraRIS」を展示
放射線情報システム(RIS)や線量管理システムを展示した診療放射線技師支援ソリューションのスペースでは,富士フイルム医療ソリューションズの放射線治療部門情報システム「RADISTA TheraRIS」を展示した。これまで「ShadeQuest」のブランド名で提供してきた治療RIS(TheraRIS)を,新たに富士フイルムの「RADISTA」ブランドの製品としてリニューアルした。RADISTAの“Simple&Quality”のコンセプトの下,画面デザインを見直して視認性や操作性を高め,複雑で多職種がかかわる放射線治療のワークフローを支援するソリューションとして機能や使い勝手を向上した。画面デザインついては,富士フイルムのデザインセンターとともに色味や画面設計などすべてを一から見直し,よりシンプルでわかりやすく情報を表示するように変更した。画面の配色は,白色をベースとして,禁忌や感染情報などの注意が必要な項目が目立つようにした。また,基本となる治療歴画面の表示では,従来は多くのタブを使って切り替えて参照するようになっていたが,常時表示が必要な情報を絞ってわかりやすく表示し,さらに詳しい情報は「詳細を表示」ボタンで参照できるように変更した。そのほか,現在治療がどこまで進んでいるか照射線量の蓄積を示した進捗ゲージの表示などで,多職種が参照する放射線治療の「電子カルテ」として安全で正確な治療業務を支援する。また,スタッフが記載するコメント欄は従来は画面ごとに分かれていたが,1つに集約することで情報共有がしやすくなった。
「ワークフロー」画面は,治療プラン開始までの各職種の業務をカレンダー表示で一覧して共有できる機能だ。機能としては以前から提供されていたが,RADISTA TheraRISになりデザインが一新されてより一覧性と視認性が高まった。ワークフローでは,1日の業務量が画面上で把握でき,表示を切り替えることで診察や輪郭作成,照射など職種ごとのタスクも確認できる。完了できなかったタスクは赤で表示されるため,全体の進捗状況も直感的に把握できる。そのほか,富士フイルムグループとして提供する放射線治療計画支援ソフトウエア「SYNAPSE Radiotherapy」,PACS「SYNAPSE」,診断RIS「RADISTA Workflow」などとの連携が可能でトータルで放射線治療・診断の業務を支援できることをアピールした。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムメディカル株式会社 営業本部マーケティング部
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
mail:[email protected]
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムヘルスケア株式会社
住所:〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
mail:[email protected]
URL:https://www.fujifilm.com/fhc/ja
●お問い合わせ先
社名:富士フイルム医療ソリューションズ株式会社
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
TEL:03-6452-6880
URL:https://www.fujifilm.com/ffms/ja