第52回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM 2024)が「量子・分子で解き明かすMR医学」をテーマに開催
2024-10-21
大会テーマは「量子・分子で解き明かすMR医学」
第52回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM 2024)が,2024年9月20日(金)〜22日(日)の3日間,幕張メッセ国際会議場(千葉県千葉市)で開催された〔オンデマンド配信は10月7日(月)~31日(木)〕。小畠隆行氏(量子科学技術研究開発機構)が大会長を務め,テーマには「量子・分子で解き明かすMR医学」が掲げられた。初日20日に行われた開会式で登壇した小畠氏は,千葉県での開催は初めてあることを紹介した上で,今回のテーマについて触れ,基礎研究から臨床応用に展開できるような研究・開発に光を当てた大会にしたいと述べた。
このテーマに基づいて組まれたプログラムは,主なものとして,大会長指定講演が2講演,シンポジウムが30セッション,教育講演が14講演,ハンズオンセミナー,一般演題などで構成された。このうち,シンポジウム18は,恒例の韓国Korean Society of Magnetic Resonance in Medicine(KSMRM)とのジョイントセッションであった。また,21日にはISMRM JPC2024〔会長:福永雅喜氏(自然科学研究機構生理学研究所)〕が開かれた。
20日には,竹原康雄氏(ハイメディック名古屋)と丹羽 徹氏(東海大学医学部専門診療学系画像診断学)が座長を務めたシンポジウム1「流れのMR医学」が設けられ,5名が4D Flow MRIとarterial spin labeling(ASL)について発表した。このうち,関根鉄朗氏(日本医科大学武蔵小杉病院放射線科)は,「4D Flow MRIが拡張する新しい学びと先端技術の活用法」をテーマに登壇した。関根氏は,4D Flow MRIについて,新しい撮像法で全身の撮像が可能であり,未開拓な領域が多いと説明。ボリュームデータを取得することから選択的に4Dデータを処理できることや,マルチパラメトリック解析が可能であるといった有用性を解説した。また,兵藤良太氏(名古屋大学大学院医学系研究科新規低侵襲画像診断法基盤開発研究寄附講座)は,「4D Flow MRI:介入治療術前後(大血管・門脈)」と題して発表した。4D Flow MRIは,腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術の術後評価,肝移植手術後の門脈狭窄に対するステント留置の評価などで有用であると説明した。3番目に発表した山田茂樹氏(名古屋市立大学脳神経外科学講座)は,「4D Flow MRIによる水頭症の脳脊髄液の流れ場」と題して,富士フイルム(株)の「SYNAPSE VINCENT」に採用されている「4Dフロー」が手術適用の判定に役立つと紹介した。このほか,ASLについては,渋川周平氏(順天堂大学保健医療学部診療放射線学科)が四肢領域,栂尾 理氏(九州大学大学院医学研究院分子イメージング・診断学講座)が脳血流の動態イメージングを中心に発表した。
同じく20日にはシンポジウム5「What's New?−ISMRM2024レポート−」が行われた。福永氏と立花泰彦氏(量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所)が座長を務めて,4名が発表した。最初に登壇した飯間麻美氏(名古屋大学大学院医学系研究科新規低侵襲画像診断法基盤開発研究寄附講座)は,プログラム委員の立場から業務内容などを紹介したほか,発表が採択されるポイントとして,適切なカテゴリを選択し,タイトルを重視してストーリー性のある内容にすることなどを挙げた。また,「ISMRM2024における超低磁場・超高磁場MRIの話題」をテーマに発表した黄田育宏氏(情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター)は,超高磁場MRIの導入が広がっていることで,特別な装置ではなくなりつつあり発表が減少していると指摘。一方で,低磁場MRIは発展途上国などでの医療アクセス向上が期待されていることから,発表が増えていると述べた。
21日には,シンポジウム13「撮影するなら知っておきたいMRIの安全性/MRIカードがない?デバイス患者の安全なMRI施行のために」が行われた。星 由紀子氏(東北大学病院診療技術部放射線部門)と真鍋徳子氏(自治医科大学附属さいたま医療センター放射線科)が座長を務めて,5名が発表した。まず,東 美菜子氏(宮崎大学医学部病態解析医学講座放射線医学分野)が,2022年に実施したMRI検査の安全管理に対する全国多施設フォローアップ調査について報告。2018年の調査後の改善状況を解説した上で,放射線科医や磁気共鳴(MR)専門技術者などが不在の施設への対策が必要だと述べた。また,秦 博文氏(北里大学病院放射線部)は,日本磁気共鳴医学会のインシデント報告の分析結果を取り上げて,ヒューマンエラーを防ぐための運用体制に言及した。本シンポジウムでは,日本医学放射線学会,日本磁気共鳴医学会,日本不整脈心電学会が2024年1月12日に発表した「心臓植込みデバイス患者のMRI検査に関する運用指針 3学会合同ステートメント改訂」も取り上げられた。安部治彦氏(地方独立行政法人くらて病院)は,検査適用の考え方や安全性評価,クラス分類,検査を行う場合のフローチャートなどを解説した。
同じく21日に行われたシンポジウム19では,佐久間 肇氏(三重大学)と真鍋氏が座長を務め,「心筋の炎症を診る」をテーマに3名が登壇した。最初に発表した太田靖利氏(国立循環器病研究センター放射線部)は,「ガイドライン改訂をうけた心筋炎に対する心臓MRIおよび諸問題について」と題して,2023年に改訂された「心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」を取り上げた。その上で,検査時間が長いという心臓MRI検査の課題を解決する方策として,ファントム練習による撮像時間短縮を紹介したほか,パラメトリック・マッピングによる評価に関して,好酸球性心筋炎,薬剤性心筋炎の症例を提示。病態のモニタリングと予後評価についても解説した。
21日には,このほか,会場の参加者が撮像音からシーケンスを回答するというシンポジウム22「シーケンスチャート&音クイズ」〔座長:鈴木雄一氏(東京大学医学部附属病院放射線部)〕や,三森文行氏(元・国立環境研究所)と山下康行氏(地方独立行政法人くまもと県北病院理事長)の2人のレジェンドを囲むシンポジウム23「Campfire Talks on the Beach『レジェンドと語ろう』」などが設けられた。
最終日の22日には,伊東克能氏(山口大学大学院医学系研究科放射線医学講座),吉満研吾氏(福岡大学医学部放射線医学教室)が座長を務め,シンポジウム24「AI技術(denoise, super-resolution)を用いた腹部イメージング:技術的特徴と臨床応用の現状」が行われた。本シンポジウムでは,キヤノンメディカルシステムズ(株)の「AiCE」と「PiQE」,シーメンスヘルスケア(株)の「Deep Resolve」,GEヘルスケア・ジャパン(株)の「AIR Recon DL」と「DL Speed」と呼ばれる新たな技術,(株)フィリップス・ジャパンの「SmartSpeed AI」について,発表者が使用経験を報告した。
また,閉会式前には,小畠氏が座長を務める大会長指定講演2「大会の総括とMRIの基礎系研究の展望」が行われ,黒田 輝氏(東海大学情報理工学部情報科学科)が登壇した。黒田氏は,今回の大会を振り返り,テーマにふさわしく,多核種イメージング,超偏極,CESTなど一般臨床では普及していないが確実に進展している内容が豊富に盛り込まれていたと述べた。その上で,今後基礎研究を展望し,まだ知覚できていない研究分野の存在を信じて地道に,強いモチベーションを持って研究を続けることが重要だと訴えた。
この後表彰式・閉会式が行われ,小畠氏が実行委員長の岸本理和氏(量子科学技術研究開発機構),プログラム委員長の富安もよこ氏(量子科学技術研究開発機構)のほか,関係者,参加者に謝意を述べた。また,第53回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM2025)の大会長を務める三木幸雄氏(大阪公立大学大学院医学研究科放射線診断学・IVR学教室)が挨拶した。次回は,「異分野とのクロストーク」をテーマに,2025年8月29日(金)〜31日(日)の日程で,アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター,兵庫県姫路市)を会場にして開催される。
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