Claris Road Show 2024 OSAKA,FileMakerを活用した医療分野でのローコード開発の最新事例を報告
2024-7-19
大阪では4年ぶりの開催となる
「Claris Road Show 2024 OSAKA」
「Claris Road Show 2024 OSAKA」が,2024年7月9日(火),10日(水)の2日間,グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場,大阪市北区)で開催された。FileMakerの開発者やユーザーが集うプライベートイベントで大阪での開催は2019年以来,4年ぶりとなる。オープニングキーノート,FileMaker開発導入事例やテクニックなどの最新動向を紹介するセッション,スポンサー企業がブース展示を行うショウケース,FileMakerなどClaris製品に関する相談を受け付けるClaris Barなど多彩なプログラム,イベントが用意された。ショウケースには,(株)バルーンヘルプ,(株)ジュッポーワークス,Vonage Japan(合),(株)サポータス,(株)イエスウィキャン,(株)ジェネコム,(株)寿商会,(株)DBPowers,パットシステムソリューションズ(有),(株)アイ・アンド・シー,エーアールシステム(株),カワイ事務機(株)が出展した。
セッションでは,FileMakerを活用した医療分野での導入事例として5演題が行われた。
メディカルセッション1では,「待合室の患者さんに適切な情報をオンタイムで提供する」と題して、有賀啓之氏(DBPowers代表取締役),田村 豊氏(札幌白石記念病院情報管理室室長)が講演した。同院では,外来での患者の待ち時間や順番を表示する「ウェイティングボードシステム(診察案内表示システム)」をFileMakerを使って構築した。診療待ち時間が長い,順番がわからないといった課題解決のため,電子カルテとの連携,画面と音声での案内,シンプルでわかりやすい表示,低コストなどを条件に検討したが,ベンダー製のシステムは画面カスタマイズに制限があり,納期や予算も想定に見合わないという結果となった。同院では,田村氏を中心にFileMakerを活用して診療や経営支援のためのさまざまなカスタムAppを構築してきた実績があり,診察案内についてもFileMakerでの構築を検討。音声による案内や画面表示などの技術的に難しい部分があったことから,すべて内製ではなく外部のDBPowersに開発とサポートを依頼して短納期で予算内でシステムの導入を実現した。田村氏は,「院内にFileMakerのノウハウがあり,またFileMakerへの理解のある経営陣がいたことで,スムーズに進めることができた」と述べ,有賀氏も,「FileMakerに精通したスタッフが院内にいることで,課題を共有しながら構築でき短時間での導入が可能になった」と評価した。
メディカルセッション2「医療データ共有のセキュリティと効率化:名古屋大学病院の腎生検レポート事例研究」では,浅野直子氏(名古屋大学大学院医学系研究科・腎臓内科)が,腎生検の検査やレポート作成などの業務を管理するシステムをFileMakerで構築した経緯とそのデータを他施設と共有して運用する際のセキュリティの確保の実際について講演した。腎生検では,多種類の顕微鏡検査のために複数の検体が必要で,1人の患者でも複数回の検査が行われるなど,検体の管理に手間がかかっていた。さらに同院の腎臓内科では,関連病院(27施設)の受託検査も行っており,検査件数は年間約800症例(全国平均は1施設年間40症例)に上っていた。浅野氏は,この腎生検の管理システムを2004年からFileMakerで構築,検体の管理や過去のデータの検索,関連病院への至急報告書の作成などの機能を実装した。独力でバージョンアップを重ねてきたものの,件数の増加やレジストリ登録に伴う症例データの詳細化・複雑化に対応するため,Clarisのイベントで紹介された深澤真吾氏(松波総合病院)にサポートを依頼。FileMaker Serverの導入,機能のブラッシュアップなどを進めた。講演では,バーチャル顕微鏡の運用に伴って必要となった関連病院とのセキュアなネットワーク構築や外部からのFileMakerデータ参照の仕組みなどを含めて,サポートを行った深澤氏が登壇して構築のポイントを説明した。
メディカルセッション3は,「精神科病院におけるDX化の取り組み:さきがけストーリー」が行われた。精神科病院の情報管理や物品、労務管理のカスタムAppの構築について,片岡達博氏(未来Switch)と樋口裕二氏(さきがけホスピタル院長),黒河 葵氏(同公認心理師)が講演した。岡山県高梁市の精神科病院であるさきがけホスピタルでは,FileMakerで構築された「Sakigakeシステム」が稼働している。Sakigakeシステムは,患者情報管理や各種書類作成,ベッドコントロールシステムなどを搭載した「状元」(情報管理),職員向けの労務管理やインシデントレポートなどの機能を搭載した「榜眼」(労務管理),院内の売店の在庫管理や仕入管理,患者の預かり金管理などを行う「探花」から構成される(システムの名称は科挙に由来)。樋口氏が自作した医師用書類作成のシステムからスタートし,現在は院内にFileMaker構築の専門部署(情報管理・心理室)を設けて,院内でのシステム開発を進めている。その中で,預かり金管理システムなど難易度の高い開発部分をClarisパートナーである未来Switchに依頼,クラウド管理やセキュリティなども含めて役割分担することでスムーズに構築できた。同院では,スタッフ全員が開発者であることをめざして,FileMaker開発の教育も積極的に行っているが,未来Switchがスタッフのトレーニングを担当したことを紹介した。
メディカルセッション4では,「デジタル変革による医療現場の進化:iPhoneで医療DXを加速」について,荒川優也氏(松波総合病院リハビリテーション技術室課長),深澤真吾氏(同FMDセンターチーフ・エンジニア)が講演した。岐阜県羽島郡の松波総合病院(501床)では,iPhone800台以上を導入,FileMakerで構築したClinical Supporting System(CSS,診療支援システム)が稼働するなど医療DXを強力に推進している。その中で,リハビリ部門では,リハ室と病棟が遠い(別の建物で移動に200mかかる),スタッフが病棟をまたいで動く必要あり,従来のPHSでは情報共有に時間がかかるといった課題があった。そこでコミュニケーションツールとして,「Dr2GO」をiPhoneのアプリとして開発した。これによってチャットによるスタッフの情報共有や残業申請なども可能になり業務効率が可能になった。また,回復期病棟のリハビリ業務では,パッケージのリハビリ支援システムが稼働していたものの,CSSやExcelなどに情報管理が分散しており,入力先がわかりにくい,多職種の情報共有には紙が必要などが課題だった。これをFMD(FileMaker Developer)センターと協力してCSSでの一括管理を進めて,業務改善や紙の削減などを実現した事例を紹介した。
また,ランチョンセミナーでは,「Claris FileMaker × 生成AI 医療現場における可能性」と題して,園生智弘氏〔TXP Medical(株)代表取締役〕による講演が行われた。園生氏は,急性期をターゲットにした「NEXT Stage ER」「NSER mobile」などを展開するベンチャー企業であるTXP Medicalの事業について説明し,さらに現在開発を進めている生成AI(ChatGPT4)を用いた“Speech To Text”,文書生成自動化,レジストリ登録自動化などの取り組みについても紹介した。
●問い合わせ先
Claris Road Show 事務局
(株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND内)
Eメール [email protected]