第5回Rise Up CT Conferenceが現地とオンデマンドのハイブリッドで開催
2024-6-19
今回は会場とオンデマンド配信で開催
第5回Rise Up CT Conferenceが,2024年5月18日(土)に会場(国立がん研究センター中央病院)とオンデマンドによる配信(配信期間:5月22日〜6月9日)で開催された。共催はキヤノンメディカルシステムズ(株),アミン(株),(株)イーメディカル東京,シーアール中部(株),(株)根本杏林堂,総合司会は長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)が務めた。プログラムは,キヤノンメディカルシステムズによるCT装置情報提供,「画論からのトピックス」3題,「アプリケーションソフトセッション」3題,「装置性能に関するセッション」4題,「Rise Up Lecture」が設けられた。開会に当たって挨拶した代表世話人の石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)は,「Rise Up CT Conferenceは,キヤノンメディカルシステムズの共催を得て同社の最新CTについて,ハードウエアやアプリケーションを含めたソフトウエア,さらにその臨床応用などの知見を共有して活用することをコンセプトに開催している。今回も高精細CTや立位CT、超解像画像再構成技術であるPIQE(Precise IQ Engine)など最新技術の評価や臨床的有用性について充実したプログラムとなった」と述べた。
「CT装置情報提供」では,キヤノンメディカルシステムズからITEM2024におけるCTを中心とした展示内容の説明があった。今回,CTコーナーでは新たなフラッグシップCTとして高精細ADCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」が初展示された。その特長のほか,PIQEの適用が拡大(Lung,Body)されたこと,新たな体動補正技術「CLEAR Motion」が実装されたことなどを説明した。「画論からのトピックス」では,辻岡勝美氏(藤田医科大学)を座長として「画論 31st The Best Image」からCT部門優秀賞受賞の3施設が講演した。「単純CTにおけるBrain LCDを用いた体幹部STAT画像への適応」(刈谷豊田総合病院・本多健太氏)では,急性期脳梗塞検出用として開発された「AiCE Brain LCD」を,救急での体幹部の単純CTに適応したことで視認性やCT値の向上などの効果を得たことを発表した。「大腸CT検査にスペクトラルスキャンが有効であった1例」(水戸済生会総合病院・佐々木允氏)は,スペクトラルスキャンによるモノクロマティックイメージングでバリウム懸濁液のCT値を上げ,デジタルクレンジングの精度が向上することを報告した。「高精細CTガイド下BPAが奏効した、重症の末梢型慢性血栓塞栓性肺高血圧症」(藤田医科大学病院・片方明男氏)では,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)において,心電図同期下の高精細CTの撮影と3D作成で診断や治療ガイドに貢献した症例を紹介した。
「アプリケーションソフトセッション」は,宮下宗治氏(イーメディカル東京あかつきクリニック)と根宜典行氏(神戸大学医学部附属病院)が座長を務めた。
「Aquilion ONE / INSIGHT Edition 装置の可能性」を講演した田北 諭氏(佐賀大学医学部附属病院)は,高精細ADCTであるAquilion ONE / INSIGHT Editionの可能性として,3D Landmark,管電圧70kVと0.24秒/回転,PIQE(Lung,Body)の3つを挙げて説明した。田北氏は,PIQEのBodyやLungによる再構成画像を提示し,高精細画像の提供によって早期膵臓がんや間質性肺炎の読影や3D画像処理において精度の向上が期待できると述べた。
続いて,「4D-CTを用いたエンドリーク評価の新たな洞察」を三井宏太氏(佐賀県医療センター好生館)が講演した。三井氏は,ステントグラフト内挿術(EVAR/TEVAR)のエンドリーク評価について,4D-CTのデータをリニア補間技術を用いることで視認性を向上しエンドリークのタイプ診断を可能にしたことを報告した。最後に,「Bone Bruise Image:BBI(骨挫傷イメージ)解析完全マニュアル」と題して岩坂 徹氏(松江市立病院)が講演し,dual energy技術であるvirtual non calcium image(VNCa)を用いたBBIについて,データセットの取得方法から画像再構成,DE解析,MPR作成まで解析の進め方について詳細に説明した。
「装置性能に関するセッション」では,遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院)と茅野伸吾氏(東北大学病院)が座長を務めた。最初に,酒向健二氏(中部国際医療センター)が「PIQEの臨床活用」を報告した。酒向氏は,超解像画像再構成技術であるPIQEによる冠動脈ステントの描出能について,AiCE,FIRST,AIDR 3D,FBPでファントムによる計測を行った結果を報告し,PIQEでは分解能の向上,ステント内腔の視認性が向上しており,臨床画像においても3mm未満のステントの評価も可能になると述べた。「舌癌の深部深達度評価における高精細CTの精度」を講演した佐藤誠也氏(国立がん研究センター中央病院)は,高精細CTとMR画像の深部到達度を比較し,相関性と測定精度の評価を行った結果を報告した。2つの画像間では,すべての再構成アルゴリズムおよび再構成スライス厚の組み合わせで正の相関を示し,高精細CTの5mmスライス厚の画像を用いることで従来CTよりも良好な測定が可能になると述べた。続いて,大家佑介氏(小樽掖済会病院)が「大腸がんの手術支援画像における高精細CTの実力」を講演した。大家氏は,消化器専門病院での高精細CTの活用について,大腸がん(横行結腸がん)の術式決定に寄与した一例や,従来CTとの血管描出能の比較などを報告し,高精細CTでは大腸の末梢血管の描出能が向上したことで郭清範囲を縮小することができ,より侵襲の少ない手術に貢献できていると述べた。最後に,「Rise Upright CT〜Start upから1年のBig upと未来へのBrush up」と題して,塚本一輝氏(藤田医科大学病院)が立位CT(Upright CT,TSX-401R)の最新の臨床報告を行った。同施設では立位CTで1日平均50件(最大70件)の検査を行っている。臥位のCT撮影との違いでは,脂肪の位置や静脈の太さ,肺野体積の変動などで画像が変化すること,症例では気胸や変形性膝関節症,鼠径ヘルニア,耳管開放症などで立位ならではの所見が得られることを紹介した。塚本氏は,「見えていたものの見え方が変わるのが立位CT。今後は機能検査や造影検査にも取り組み,立位にしかわからない疾患の診断が可能になるようにトライしていきたい」とまとめた。
「Rise Up Lecture」では石原氏が座長を務め,久野博文氏(国立がん研究センター東病院)が「頭頸部癌における最新CT技術の臨床応用+Photon-counting detector CT初期経験」と題して講演した。久野氏は,頭頸部がん診療の動向について国立がん研究センター東病院における集学的治療の現状を含めて紹介し,頭頸部のCT撮影技術として取り組んでいるdual energyやサブトラクション,高精細CTやディープラーニングを用いた再構成技術の活用などの撮影方法などを詳細に説明した。最後に,2023年7月から同院で稼働しているキヤノンメディカルシステムズのフォトンカウンティングCT(プロトタイプ)による頭頸部領域の臨床について画像を含めて紹介した。
●問い合わせ先
Rise up CT Conference事務局
http://riseupct.kenkyuukai.jp/