「MRIの神髄を極める」をテーマに,第51回日本磁気共鳴医学会大会が開催

2023-10-5

MRI


「MRIの神髄を極める」がテーマ

「MRIの神髄を極める」がテーマ

2023年9月22日(金)〜24日(日)の3日間,軽井沢プリンスホテルウエスト(長野県北佐久郡軽井沢町)を会場に,第51回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM2023)が開催された。大会長は,阿部 修氏(東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座)が務め,テーマには「MRIの神髄を極める」が掲げられた。初日9月22日8時55分から行われた開会式において,阿部氏は今回のテーマについて,MRIは領域が多岐にわたっており,それらすべてを極めるのは困難であるが,自身の専門領域を極める機会としてほしいと述べた。阿部氏の挨拶にもあったとおりMRIの技術・臨床は多岐にわたるが,それらをカバーするために,今回も充実したプログラムが組まれた。主なプログラムとしては,特別講演3セッション,シンポジウム29セッション(韓国のKorean Society of Magnetic Resonance in MedicineとのKSMRM-JSMRM Joint Symposiumを含む),教育講演15セッションなどが用意された。また,2日目の9月23日には,第8回国際磁気共鳴医学会・日本チャプター学術集会〔ISMRM JPC 2023,大会長・渡邉嘉之氏(滋賀医科大学医学部附属病院放射線医学講座)〕も同時開催された。

大会長:阿部 修 氏(東京大学)

大会長:阿部 修 氏(東京大学)

 

日韓の交流を深めるKSMRM-JSMRM Joint Symposium

日韓の交流を深めるKSMRM-JSMRM Joint Symposium

 

2日目に開催された第8回国際磁気共鳴医学会・日本チャプター学術集会(ISMRM JPC 2023)

2日目に開催された第8回国際磁気共鳴医学会・日本チャプター学術集会(ISMRM JPC 2023)

 

9月22日に行われた特別講演1「レジェンドが語る」では,平井俊範氏(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学講座),岡田知久氏 (京都大学大学院医学研究科附属脳機能総合研究センター)が座長を務め,MRIの臨床と基礎それぞれの領域で長年にわたり活躍してきた2人が登壇した。最初に,青木茂樹氏(順天堂大学健康データサイエンス学部/順天堂大学大学院医学研究科放射線診断学)が,「MRI研究の先端を往く:データ分析からデータサイエンスの世界へ」をテーマに講演した。青木氏は,「楽しい」「新しい」「なぜ」をキーワードに臨床研究の魅力について語った上で,MRIにおける統計,データ分析について,人工知能(AI)やfMRI,ディフュージョン,MR fingerprintingを例に紹介した。さらに,青木氏はMRIをはじめとした放射線医学におけるデータサイエンスの展開についても触れ,日本医学放射線学会が進めるJ-MIDの取り組み,スーパーコンピュータ「富岳」を用いた全脳シミュレーションなどの研究概要を紹介した。

特別講演1:青木茂樹 氏(順天堂大学)

特別講演1:青木茂樹 氏(順天堂大学)

 

次いで登壇した巨瀬勝美氏〔(株)エムアールアイシミュレーションズ〕は,「MRIの歴史:多様な側面からの概観」と題し,MRIの開発や黎明期から現在に至るまでの歩みを解説した。ポール・ラウターバーらの核磁気共鳴画像法の開発から,その後の機器の進歩や日本におけるMRI装置の発展について,自身の経験も交えて紹介。さらに,今後のMRIについて触れ,MRIは数学が重要であり,コンピュータサイエンスをベースにした研究開発が重要だと述べた。

特別講演1:巨瀬勝美 氏(エムアールアイシミュレーションズ)

特別講演1:巨瀬勝美 氏(エムアールアイシミュレーションズ)

 

9月23日にも「レジェンド」が登壇する企画が設けられた。シンポジウム23「キャンプファイヤートーク『レジェンドと話そう』」では,荒木 力氏(山梨大学名誉教授)と小川誠二氏(東北福祉大学感性福祉研究所)が,自身の研究者としての歩みを振り返った。座長は青木伊知男氏(量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所)と福永雅喜氏(自然科学研究機構生理学研究所生体機能情報解析室)が務めた。2名の講演後には,キャンプファイヤーを模したトークセッションが設けられ,2人のレジェンドを囲んで和やかな雰囲気で研究者のあるべき姿などを学ぶ機会となった。

和やかな雰囲気で行われたシンポジウム23「キャンプファイヤートーク『レジェンドと話そう』

和やかな雰囲気で行われたシンポジウム23「キャンプファイヤートーク『レジェンドと話そう』

 

29セッション設けられたシンポジウムのうち,9月22日に行われたシンポジウム1「4D Flow MRIの20年(来し方と行く末)」では,竹原康雄氏(名古屋大学大学院医学系研究科新規低侵襲画像診断法基盤開発研究寄附講座)と渡邉嘉之氏が座長を務め,6題の発表があった。最初に登壇した真鍋徳子氏(自治医科大学附属さいたま医療センター放射線科)は,「4D flow MRIの心血管疾患への臨床応用」と題して発表した。真鍋氏は大動脈と肺動脈における4D flow MRIを取り上げた。大動脈については,大動脈弁狭窄症において血流を可視化し,経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)施行前後の評価に有用だと説明。さらに,肺動脈については,流出路狭窄の評価が可能だと述べた。そして,病態に合わせてパラメータを使用でき,定量的な評価が可能で,術後のフォローアップに有用だと指摘した。

シンポジウム1に続いて行われたシンポジウム6「膀胱癌・前立腺癌のMRI」は,高橋 哲氏(愛仁会高槻病院イメージングリサーチセンター)が座長を務めた。最初に,有田祐起氏〔Department of Radiology, Memorial Sloan Kettering Cancer Center/慶應義塾大学 医学部 放射線科学(診断)〕がオンラインで発表した。有田氏は,「膀胱癌筋層浸潤診断システム(VI-RADS)~標準的な撮像法・読影評価と臨床応用に向けた最近の知見~」をテーマに発表した。有田氏は,米国放射線専門医会(ACR)が進める膀胱がんの筋層浸潤を診断するためのVI-RADSについて,T2強調画像,拡散強調画像,ダイナミックMR画像によって筋層浸潤を5段階で評価するという概要を解説。日常診療に用いるため方法を紹介した。

2日目9月23日に設けられたシンポジウム12「Diffusion MRI of the Breast」では,久保田一徳氏(獨協医学大学埼玉医療センター放射線科)と佐竹弘子氏(名古屋大学医学部附属病院放射線部)を座長に,4人の発表者が登壇した。この中で後藤眞理子氏(京都府立医科大学大学院医学研究科放射線診断治療学)は,「Advanced Breast DWI:現状と課題」をテーマに発表した。後藤氏は,intravoxel incoherent motion(IVIM)やdiffusional kurtosis imaging(DKI)の良悪性鑑別に関するメタアナリシスについて解説を行い,臨床応用に向けた可能性に言及した。また,飯間麻美氏(京都大学医学部附属病院先端医療研究開発機構放射線診断科)は,「乳房DWI標準化の現状と必要性」をテーマに,Japan Quantitative Imaging Biomarkers Alliance(J-QIBA)が進める乳房MRIでのパラメータの標準化などについて報告した。

同じく9月23日に行われたシンポジウム16「T1/T2マッピングを心臓診療に活かす」では,宇都宮大輔氏(横浜市立大学大学院医学研究科放射線診断学教室)と石田正樹氏 (三重大学大学院医学系研究科放射線医学)が座長と務め,6題の発表があった。尾田済太郞氏(熊本大学病院画像診断・治療科)は,「心アミロイドーシスにT1/T2マッピングを活かす」をテーマに発表した。尾田氏は,T1マッピングによる心筋細胞外容積分画(ECV)が40%以上ある場合に心アミロイドーシスが疑われることなどを説明したほか,タファミジスの治療効果判定での有用性を説明した。さらに,T2マッピングの有用性にも触れ,マルチパラメトリックMRIでの評価の重要性に言及した。また,加藤真吾氏(横浜市立大学大学院医学研究科放射線診断科)は,「ファブリー病診療に心筋マッピングを活かす」と題して,T1マッピングによる心筋のダメージや繊維化,ECVの評価,酵素補充療法の効果判定などの有用性を解説した。

同日のシンポジウム20「アーチファクトショー」では,鈴木雄一氏(東京大学医学部附属病院放射線部)が座長を務めた。福澤 圭氏(虎の門病院放射線部),小島慎也氏(帝京大学医療技術学部診療放射線学科)が,アーチファクトの発生した画像を供覧。クイズ形式で参加者が回答しながら進められた。設問ごとに,アーチファクトが発生した理由や原理,防ぐための撮像ポイントなどを解説された。30問の出題があり,最も正解の多かった上田 亮氏(慶應義塾大学病院放射線技術室)が最終日に表彰された。

最終日の9月24日には,シンポジウム27「RTとMDで考える臨床画像のあり方2023」が設けられた。座長を髙橋沙奈江氏(杏林大学保健学部診療放射線技術学科)と加藤 裕氏(名古屋大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)が務め,5施設の医師と診療放射線技師が,診断で求められる画像とその撮像技術について発表した。最初に登壇した新谷好正氏(小樽市立病院脳神経外科)と大浦大輔氏(小樽市立病院放射線室/北海道大学大学院保健科学院)は,「Acute ischemic stroke(AIS)診断における完成型としての7min protocolの臨床的インパクト」をテーマに,血栓回収療法 における時間短縮のためのプロトコールを紹介した。同院では,急性期脳梗塞の診療において,拡散強調画像,ASL,MRA,black blood image,FLAIR,T2強調画像,coronary MRAを7分で撮像し,並行して治療の準備を進めることで,時間短縮を図っている。このプロトコール設定について検討経緯などが医師と技師それぞれの視点から報告された。

次回,第52回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM2024)は,2024年9月20日(金)〜22日(日)の3日間の日程で,幕張メッセ国際会議場(千葉県千葉市)を会場に行われる。大会長は,小畠隆行氏(量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所)が務め,「量子・分子で解き明かすMR医学」をテーマに掲げた。

ポスター発表は3会場に分けて展示

ポスター発表は3会場に分けて展示

 

企業展示には17社が参加

企業展示には17社が参加

 

●問い合わせ先
第51回日本磁気共鳴医学会大会
運営事務局
株式会社コンベンションリンケージ内
TEL 06-6772-6389
E-mail [email protected]
https://www.c-linkage.co.jp/jsmrm51/

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