キヤノンCTのユーザーが集う第4回「Rise Up CT Conference」が開催
2023-6-26
会場とWebのハイブリッドで開催された
第4回のRise Up CT Conference
第4回「Rise Up CT Conference」(共催:キヤノンメディカルシステムズ)が,2023年5月13日(土)に国立がん研究センター中央病院とオンラインのハイブリッドで開催された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で2021年,2022年はオンラインで開催されたが,今年は会場参加も可能になった。総合司会は長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)が務めた。プログラムは,「CT装置最新情報提供」2題,「画論からのトピックス」3題,「アプリケーションソフトセッション」4題,「装置性能に関するセッション」5題,「Rise Up Lecture」が設けられた。
開会に当たって挨拶した代表理事の井田義宏氏(藤田医科大学)は,「Rise Up CT Conferenceは,キヤノンメディカルシステムズのCTユーザーを中心に情報共有を通じてCTを有効に活用し,質の高い画像を医師,そして患者に届けられることを目的にしている。今回は装置性能からアプリケーションの最新情報まで充実したプログラムを組むことができた。本日の発表を明日からの診療に役立ててほしい」と述べた。
CT装置最新情報提供では,最初にキヤノンメディカルシステムズから「ITEM2023概要」が報告された。ITEM2023のCTコーナーで展示された80列CT「Aquilion Serve」と高精細CT「Aquilion Precision」のポイントやJRC共催ランチョンセミナーの内容などを紹介した。続いて,庄司友和氏(東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター/Pediatric CT研究会代表)が,欧米に比べて「小児CT被ばく低減プロジェクト〜活動の背景とその意義」を発表した。庄司氏は,キヤノンメディカルシステムズと取り組んでいる小児CT被ばく低減プロジェクトについて「Aquilion ONE / PRISM Edition」での検討結果を基に報告した。
続いて画論からのトピックスとして,辻岡勝美氏(藤田医科大学)を座長として,2022年12月に開催された「画論 30th The Best Image」でのCT部門受賞施設からから3題の発表があった。山下勝礼氏(浜松医科大学医学部附属病院)の「術中PerfusionCTによる下肢EVTの評価」では,包括的高度慢性下肢虚血(CTLI)に対して術中に4D-CTPを行い血流評価を行うことで治療効果判定が行えることを報告した。稲毛秀一氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院)は,「肝門部胆管癌術後の包括的肝臓CT検査」について発表し,心電同期Dynamic Volume Scanなどさまざまなテクニックを使って肝臓ダイナミックCTに加え肝臓のCTパーフュージョン検査を行うことで包括的な肝臓CT検査が可能になったと述べた。最後に,「TEVAR術後のSINE (Stent graft induced new entry) 評価」と題して櫻河内裕氏(広島市立北部医療センター安佐市民病院)が発表し,TEVAR術後に発生するSINEに対して4DCT撮影を行い,血流のカラー表示を行うことで診断能が向上した症例を紹介した。
続いて行われたアプリケーションソフトセッションでは,座長を遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院)と根宜典行氏(神戸大学医学部附属病院)が務めた。最初に北野哲哉氏(滋賀県立総合病院)が「vHP(バリアブルヘリカルピッチ)の活用法」と題して,頭頸部,胸腹部の大動脈CTA,下肢動脈CTAでのvHPの使用経験を発表した。続いて佐藤英幸氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院)は,「Vitreaにおける肺血栓塞栓症に対するカラーマップ調整」について発表し,肺血栓塞栓症に対するdual energy CT(DECT)を用いたカラーマップ表示の有用性を紹介した。「がん診療のための非剛体サブトラクション画像」を発表した瓜倉厚志氏(国立がん研究センター中央病院)は,非剛体レジストレーションとサブトラクション(SURESubtraction)によってDECTでなくても精度の高いヨード画像による診断が可能なことを説明した。最後に,室賀浩二氏(長野赤十字病院)が「Deep Learning based Spectral CTの脂肪強調画像」について報告した。室賀氏は,物質弁別(3-material decomposition)のパラメータ調整で脂肪強調と抑制画像を作成して脂肪を客観的に評価できることを報告した。
装置性能に関するセッションでは,座長を宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生北見病院)と茅野伸吾氏(東北大学病院)が務めた。大橋芳也氏(札幌医科大学附属病院)は「高精細CTにおける門脈系静脈3DCTのキモ」と題して発表し,静脈を描出するdouble-bolus tracking法の可能性を報告した。野村恵一氏(国立がん研究センター東病院)は,注目が集まる「プロトタイプフォトンカウンティング検出器搭載型CTの基礎画質評価」について述べた。「PIQE:物理特性から臨床応用へ」を発表した水津利仁氏(日本医科大学千葉北総病院)は,超解像技術のPIQEについて拡大再構成の活用や冠動脈CTでの精度向上や被ばく低減の可能性を発表した。「低被ばく・高解像度の小児心臓CT画像を目指したDeep Learning Reconstructionの効果」を発表した長岡重之氏(長野県立こども病院)は,より低線量で高精細な撮影が求められる小児心臓CT領域でFIRST,AiCE,PIQEの比較評価を行い,低線量域でDLRが効果を発揮すると述べた。最後に「Aquilion Serveの使用経験~INSTINXによるスループット向上」を岩倉圭祐氏(焼津市立総合病院)が発表した。AI技術を応用して検査ワークフローを改善するINSTINXのコンセプトを中心に発表した。
装置性能に関するセッション
Rise Up Lectureでは,石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)が座長を務め,井田氏が「CT研究から広がった多彩な経験」と題して講演した。井田氏は,ヘリカルスキャンの開発から始まり,東芝(現・キヤノン)メディカルとの共同研究,日本放射線技術学会などの学会活動や標準化(GALACTIC),日本X線CT専門技師認定機構まで自身のCT研究を振り返りつつ,物事を進めるには自分の病院だけでなく「人類に必要か?」という大きな視点で考え判断して前に進むことが必要だと述べた。
最後に代表理事の交代が発表され,新たに石原氏が就任した。石原氏は,「ハードウエアやソフトウエアがますます進化する中で,診療に役立てるような有用な情報を提供していきたい」と述べ,会を締めくくった。
●問い合わせ先
Rise up CT Conference事務局
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