キヤノンメディカルシステムズ,「Advanced Imaging Seminar 2023」を3年ぶりに現地開催
2023-3-6
3年ぶりに現地開催された
「Advanced Imaging Seminar 2023」の会場風景
キヤノンメディカルシステムズ(株)は2023年2月25日(土),「Advanced Imaging Seminar 2023」を,JPタワーホール&カンファレンス(東京都千代田区)とライブ配信のハイブリッドで開催した〔4月10日(月)〜5月12日(金)までオンデマンド配信〕。同社の最新技術とその臨床応用を紹介する本イベントは,新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響を受け,2021年と2022年はオンラインでの開催を余儀なくされていたが,今回,3年ぶりの現地開催となった。「Meaningful innovation. Made Possible. 臨床に裏づけされた新たなイノベーション」をテーマに掲げ,Healthcare IT,MRI,CTの3つのセッションが設けられた。
冒頭,挨拶に立った同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,同社が開発した国産初(2022年11月同社調べ)のフォトンカウンティングCTが国立がん研究センター先端医療開発センターに設置され,臨床研究が開始されたことを報告。また,本セミナーでは,ディープラーニング技術を活用した低侵襲かつ高精細な画像の臨床活用の実際などが報告されるとし,今後もAIを活用したMeaningful innovation.に注力していきたいと述べた。
次に,同社国内営業本部クリニカル営業推進部の長村晶生氏は,同社が提供するAIソリューションブランド「Altivity」について述べた。Altivityの下に結集した,医療データの高品質化やオペレーションの最適化を進化させるAI技術として,Deep Learning Reconstruction(DLR)の「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」や超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」などを挙げ,さらに,Precision Medicineの達成に向けた同社の今後の展開を展望した。
「Session 1:Healthcare IT」は,森 墾氏(自治医科大学医学部放射線医学講座)が座長を務め,2演題が設けられた。
藤本晃司氏(京都大学大学院医学研究科リアルワールドデータ研究開発講座)は,「AI画像解析によるがんのフォローアップ 診断支援」と題して講演した。CTで検出するのが困難な骨転移の検出をサポートする技術として,人工知能(AI)技術を搭載した画像診断支援システム「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」の骨経時差分技術「Temporal Subtraction For Bone」について概説。また,腫瘍の経時変化をトラッキングし,RECISTレポートの作成を支援する技術として,医用画像処理ワークステーション「Vitrea」に搭載された腫瘍の経時変化のトラッキング技術「Region Tracking」を紹介した。
柴田宗一郎氏(聖マリアンナ医科大学脳神経内科)は,「リアルワールドにおける虚血性脳卒中AI解析の今と未来〜Abierto RSS for Neuro〜」と題して講演した。脳梗塞診療において読影精度を一定にし,急性期治療(特にrt-PA静注療法)の安全性を向上するためのツールとして,「Abierto RSS for Neuro」の有用性を検討。Abierto RSS for Neuroを用いることで脳卒中専門医と同等の読影精度が得られるほか,rt-PA投与が禁忌の症例への誤投与を減少できるなど,安全性向上にも寄与する可能性を示唆した。
「Session 2:MRI」は,富山憲幸氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室)が座長を務め,3演題が設けられた。
平井俊範氏(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学講座)は,「Deep Learning Reconstructionの新たな展開」として,同社とのDLRの共同研究の概要を報告した。AiCEを用いることで画像ノイズが低減されSNRが向上するほか,AiCEはcompressed sensingや「FAST 3D mode」などの高速化技術との併用も可能であること,PIQEにより組織コントラストを保ちつつ空間分解能を向上できることなどが,豊富な臨床例を踏まえて紹介された。
柿木崇秀氏(京都大学医学部附属病院放射線診断科)は,「骨軟部領域におけるDeep Learningを用いた高分解能イメージングの新たな展開」として,特に肩関節2D Thin Slice ImagingにおけるDLRの有用性を報告した。AiCEを活用することで,2D 1mmスライス厚画像およびMPR画像で臨床的に有用な情報が得られるが,PIQEではさらに,より小さなFOVでの高分解能化や撮像時間短縮が可能になるなど,骨軟部領域における高分解能イメージングの活用の幅が広がることが期待されると述べた。
伊東克能氏(山口大学大学院医学系研究科放射線医学講座)は,「腹部高精細イメージングの臨床応用」と題して講演した。AiCEやPIQEを併用した高精細T2-FSEイメージングでは画質改善効果が得られるほか,AiCEと新しい高速化技術である「Modifide Fast 3D mode」を併用した高精細ダイナミックイメージングによって,撮像時間の短縮化,高分解能化,画質の安定化が図られると述べた。また,k-spaceベースのパラレルイメージング法を用いた「Expanded SPEEDER(Exsper)DWI」では,展開エラーによるアーチファクトが生じづらく,small FOV高分解能DWIの取得が可能になると報告した。
「Session 3:CT」は,高瀬 圭氏(東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野)が座長を務め,3演題が設けられた。
山口隆義氏(華岡青洲記念病院放射線技術部)は,「超解像Deep Learning再構成PIQEの実際」と題して,冠動脈CTにおけるPIQEの有用性を報告した。高度石灰化や冠動脈ステントの描出において,PIQE は,Full IRの「Forward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTion(FIRST)」やAiCEと比較しより優れた結果が得られ,高解像度とノイズ低減を両立させる技術であると述べた。その上で,新たな工夫としてPIQEによるsmall focusでの撮影について概説し,さらなる画質向上への期待を示した。
遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科)は,「CTガイド下骨生検におけるSpectral CTの新たな可能性」と題して,Area Detector CT(ADCT)「Aquilion ONE / PRISM Edition」を用いた手法について講演した。CTガイド下骨生検にSpectral Imaging(dual energy)を用いることで物質弁別が可能となり,骨内部の変化をとらえやすくなるとしたほか,骨生検への新たな取り組みとしてElectron Density(電子密度)の臨床利用の可能性などに言及した。
本セミナーの最後には,吉岡哲志氏(藤田医科大学医学部医学科耳鼻咽喉科・頭頸部外科)が,「高精細CTとAiCEが耳鼻科領域の画像診断にもたらす変化」と題して講演した。本領域においては画一的でない多種多様な治療が行われるため,症例に応じた治療選択に役立つ画像が求められる。Aquilion Precisionでは,微細な構造物も明瞭に描出するほか,病理所見と近似した画像が得られることで,疾患によっては治療方針の決定法に変革をもたらす可能性があることが示唆された。また,2022年に登場した中内耳用のAiCEである「AiCE innerear」の優れたノイズ低減効果が,微細な組織の解剖学的評価に有用であることが示された。
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