バリアンメディカルシステムズ,「Varian Oncology Summit 2022」をオンラインで開催
2022-9-6
「Varian Oncology Summit 2022」がオンラインで開催
(株)バリアンメディカルシステムズは2022年8月28日(日),同社製品の最新臨床応用などを各領域のエキスパートが報告する「Varian Oncology Summit 2022」をオンラインで開催した。同社は2018年まで,同社製品の導入施設が使用経験などを報告する「varian seminar」を毎年開催してきたが,今回から名称が変更された。4年ぶりに対面でのイベント開催をめざしていたが,新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑み,オンライン開催へと変更。全国の複数の会場から講演の様子が中継された。9月16日〜10月31日まではオンデマンド配信も行われる。本イベントには約470名が登録し,当日は約250名が視聴した。
イベントの開催に先立ち,同社専務執行役員の福島権一氏は,2021年4月のSiemens Healthineersとの統合後の同社の現状を報告し,バリアンのブランドと国内の組織を維持することでユーザーとの関係を深めていきたいと挨拶した。
続いて,製品関連プログラムとして5つのセッションが設けられた。
「1. Meet the pioneers : ETHOS Therapy」では,溝脇尚志氏(京都大学大学院)と中村光宏氏(京都大学大学院)が座長を務め,人工知能(AI)を活用した適応放射線治療(Adaptive Radiotherapy)ソリューションである「ETHOS Therapy」について,京都大学から3名,九州大学から2名,鹿児島大学から2名の,計7名の演者による講演とパネルディスカッションが行われた。
京都大学からは,まず中村氏が「ETHOS Therapyの概要」と題して講演。従来法とETHOS Therapyによる適応放射線治療のフローを比較しながら,ETHOS Therapyでは治療の大幅な効率化が図れることなどを紹介した。岩井貴寛氏(京都大学大学院)は,「膵癌に対するEthosを用いたAdaptive RTへの取り組み」として,最適なビーム配置の検討や,治療中の呼吸量・波形のモニタリングシステムによる呼吸性移動対策などについて報告した。伊良皆 拓氏(京都大学医学部附属病院)は,「HalcyonからEthosへのアップグレード時のコミッショニングおよびMobius 3Dのコミッショニングについて」と題し,コミッショニングの具体的な手順やポイントなどを紹介した。九州大学からは,まず髙木正統氏(九州大学病院)が,「当院のEthosによるonline-adaptive radiotherapyの現状:臨床編」として,頭頸部領域での術後照射を例に挙げて治療計画に関する検証結果などを報告した。続いて技術編として,福永淳一氏(九州大学病院)が「ETHOS臨床使用報告」と題し,治療開始前後に行ったさまざまなチェックリストの作成や検証結果について詳述した。鹿児島大学からは,まず伊藤宗一朗氏(鹿児島大学病院)が,「On-line Adaptive Radiotherapy〜Ethosの臨床使用を考える〜」として,ETHOS Therapyに適した症例について具体例を挙げ治療のポイントなどを紹介した。最後に,豊田雅彦氏(鹿児島大学病院)が,「頭頸部を主とした技術的初期経験」として,on-couch adaptationの有用性や頭頸部におけるmonitor unit(MU)値の特徴,線量計算などについて詳述した。
続いて行われたパネルディスカッションでは,online-adaptive radiotherapyの臨床的有用性や,ほかの治療との症例の振り分け,on-couch adaptationにおけるコンツーリングや最適化,線量計算,品質保証(QA)/ 品質管理(QC)への対応などについて活発な意見交換がなされた。
「2. Halcyonによる全身照射の試み」では,中村和正氏(浜松医科大学)が座長を務め,近畿大学における「Halcyon」を用いた全身照射の実例を踏まえて2名の演者が講演した。まず,門前 一氏(近畿大学医学部)が序章として,効率的な強度変調放射線治療(IMRT)が実施可能なO-ring型リニアックであるHalcyonの治療スピードを生かした長軸照射〔全脳全脊髄照射(CSI)や全身照射(TBI)〕への取り組みについて,実施までの経緯や治療計画のポイントなどを概説した。続いて,植原拓也氏(近畿大学大学院)が,TBIのプランニングスタディなどの具体的な手順や,Halcyonでの強度変調回転放射線治療(VMAT)によるTBIの利点などを述べ,同院の手法はすでに確立しており論文発表も行っていると報告した。
休憩を挟み,後半では,はじめに「Breakthrough in Siemens」が設けられた。シーメンスヘルスケア(株)放射線治療事業部の池田茂一氏は,「シーメンスヘルスケア放射線治療イメージングソリューション」として,バリアン社との事業展開について報告。高精度低侵襲放射線治療への要求に包括的に応えるため,シーメンス社ではイメージング側からのアプローチを行っていると述べ,放射線治療医計画支援装置“syngo.via RT Image Suite”や治療計画用CTおよびMRIなどを紹介した。
「3. Varian社製RALSによる国内での臨床経験」では,戸板孝文氏(沖縄県立中部病院)が座長を務め,2名の演者が講演した。中嶋 綾氏(京都大学医学部附属病院)は,「当院におけるBRAVOSの初期使用経験」として,2022年4月に稼働を開始した高線量密封小線源治療装置「BRAVOS」の国内第1号機による子宮頸がんの三次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)について,治療計画のワークフローなどを症例を踏まえて詳述した。金本彩恵氏(新潟県立がんセンター新潟病院)は,「組織内照射を利用する」と題し,小線源治療装置「VariSource iX」を用いた子宮頸がんの治療について,CTを用いた三次元治療計画・組織内照射導入から7年半が経過した同院における治療実績などを報告した。
「4. 大阪国際がんセンターにおけるHyperArc治療の軌跡」では,青山英史氏(北海道大学大学院)が座長を務め,同センターから宮崎正義氏と小西浩司氏が登壇した。“HyperArc”は,多発脳転移の複数の病変に対し,定位放射線治療(SRT)/ 定位手術的照射(SRS)を短時間で効率的に実施可能なソリューションである。同センターではHyperArcによる数百例の治療実績があり,現在はHyperArcを頭頸部がん治療にも用いている。はじめに,宮崎氏が技術編として,HyperArcによる定位照射および頭頸部がんの治療計画の特長や線量分布の検証結果,ワークフローなどについて報告。続いて小西氏が臨床編として,同センターにおける定位照射の実績などを述べた上で,頭頸部がんへの適応について症例を踏まえて報告した。
「5. 放射線治療統合管理システム『ARIA OIS』の使用方法紹介」では,小玉卓史氏(東京ベイ先端医療・幕張クリニック)が座長を務め,3名の演者が講演した。樽谷和雄氏(関西労災病院)は,「ARIA-OIS(Oncology Information System)によるVCP(Visual Care Path)の運用例」と題し,ビジュアル的なタスク管理を可能とするVCPを用いて治療RISを介在させないシステム構築を行っていることやその利点を,実例を交えて紹介した。白井真理氏(島田市立総合医療センター)は,「ARIA OISの運用—現状と展望—」として,ARIA OISの導入から現在までの実際の運用を報告。データの一元管理が可能なことや省スペースであることなどを利点として挙げた。遠山尚紀氏(東京ベイ先端医療・幕張クリニック)は,「放射線治療統合管理システム『ARIA OIS』の使用方法紹介」と題し,同クリニックで活用しているARIA OISの機能として,入力内容を統一する“Questionnaires”,レポート機能“AURA”,照射録の自動作成“Reporting”などについて詳述した。
イベントの最後には,同社常務執行役員営業本部長の渡邉隆史氏が,将来に向けたさまざまな取り組みを加速するとともに包括的ながん医療を提供できるよう努力していきたいと挨拶し,閉会した。
●問い合わせ先
(株)バリアン メディカル システムズ
マーケティング部
Email:[email protected]
http://www.varian.com/ja
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