日本CT技術学会が第10回学術大会を開催
2022-7-21
テーマは「CT技術とエビデンス
−Critical Thinking and Analytical Skill−」
特定非営利活動法人日本CT技術学会は2022年7月9日(土),じゅうろくプラザ(岐阜県岐阜市)とオンラインのハイブリッド形式で,第10回学術大会を開催した。2012年に日本CT技術研究会として設立された同学会は,翌2013年に第1回学術大会を開催。今回は10回の節目となる大会となった。その大会長を,原 孝則氏(中津川市民病院)が務めた。開会に先立ち挨拶した原大会長は,今回のテーマ「CT技術とエビデンス−Critical Thinking and Analytical Skill−」について,診療放射線技師がエビデンスを構築していくことは,医療の将来の発展につながると述べた。
プログラムは,特別講演が1題,教育講演が2題,口述発表が3セッション,基礎講座が2題,ランチョンセミナーが2題で構成された。
最初に行われた教育講演1では,加藤秀記氏(中津川市民病院)が司会を務め,中屋良宏氏(東洋公衆衛生学院)が「CTを愉しむ方法−過去の研究発表を振り返って−」と題して講演した。中屋氏はこれまで自身が取り組んできた研究について,テーマの選定や経緯,成果などを紹介した。日常の検査業務の中で生じた課題や改善点から,肝細胞がん描出のための撮影タイミングの最適化や,造影剤使用量の適正化といった研究に取り組んだという。中屋氏はこれらの説明した上で,CTを「楽しむ」ではなく「愉しむ」ための考え方を述べた。
次いで行われた口述発表1では,佐藤和宏氏(北海道科学大学)が座長を務めて,「再構成アルゴリズム,画像評価」に関する4題の発表があった。この中で,最初に発表した渡邊翔太氏(近畿大学高度先端総合医療センター)は,「胸部低線量CTにおけるdeep learning-based reconstructionのノイズ非定常性と肺結節体積測定精度」をテーマに,ディープラーニング画像再構成とFBP,hybrid IRのノイズ抑制効果について,ファントム実験の結果を報告。ディープラーニング画像再構成が,他の画像再構成と比較して高精度に肺結節の体積を測定できると説明した。また,牛丸裕基氏(金沢大学大学院)は,「不均一構造における信号対雑音比の改善:2つのディープラーニング CT画像再構成の比較」と題して発表した。牛丸氏は,“TrueFidelity Image”〔GEヘルスケア・ジャパン(株)〕と“AiCE”〔キヤノンメディカルシステムズ(株)〕のそれぞれの特性について,ファントム実験の結果などを紹介した。
続く口述発表2では,西丸英治氏(広島大学病院)が座長を務め,「Dual Energy CT,臨床応用」について,4題の発表が行われた。2題目の発表では,板谷春佑氏(手稲渓仁会病院)が,「Dual Energy CTのeffective-Zを用いた肝臓組織の評価」と題して,肝硬変重症度が高いほど実効原子番号(effective-Z)が高くなるという検討結果を報告した。3人目に登壇した大村知己氏(秋田県立循環器・脳脊髄センター)は,「非造影仮想単色CT画像による頭蓋内静脈洞描出の検討」と題して,微小血管減圧術における手術支援画像を非造影仮想単色CT画像で作成する手法などを発表した。
2題用意されたランチョンセミナーでは,先にGEヘルスケア・ジャパン共催で,瓜倉厚志氏(国立がん研究センター中央病院)が司会を務め,川嶋広貴氏(金沢大学)が「Revolution CT:進化の根拠」と題して講演した。次いで,シーメンスヘルスケア(株)共催で,市川勝弘氏(金沢大学)が司会を務め,吉田亮一氏(東海大学医学部付属病院)が,「The impact of the world’s first Photon-counting CT−日本初号機導入から初期使用経験−」をテーマに講演した。吉田氏は,今年日本でも発表された世界初のフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」の技術的特徴などを解説した上で,画像を供覧した。
続いて行われた基礎講座1では,山口 功氏(森ノ宮医療大学)が座長を務め,室賀浩二氏(長野赤十字病院)が,「造影CT検査の情報管理」と題して講演した。室賀氏は造影CT検査について,造影剤を適切に使用し診断に必要な画像を得るには最適な造影プロトコールを構築し,安全で正確な検査を行うための情報管理が重要だと説明。インジェクタや管理システムの活用法を解説した。
また,基礎講演2では,小山修司氏(名古屋大学)が座長を務め,福永正明氏(倉敷中央病院)が,「X線CT検査における医療放射線に関わる安全管理」と題して講演した。福永氏は,effective diameterを体格指標にした線量管理や診断参考レベルの活用,臓器線量シミュレーションについて説明を行った。
特別講演では,原大会長が司会を務めて,松尾政之氏(岐阜大学)が,「がん治療における分子イメージングから量子イメージングの変遷:CTと他のモダリティの比較」をテーマに講演した。松尾氏は近年注目されている量子イメージングについて,国内外の研究動向を紹介し,MRIの感度を上げて生体内の代謝情報を可視化する超偏極MRIの現状と将来展望を詳説した。
この後行われた口述発表3では,木暮陽介氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院)が座長を務め,「画像解析,臨床応用」について,4題の発表があった。最初に発表した中島広貴氏(手稲渓仁会病院)は,「造骨性骨転移におけるDual Energy CTを用いた物質弁別解析の有用性」をテーマに発表した。中島氏は,物質弁別画像の水密度値を測定することで,腫瘍の定量評価ができる可能性を示した。
次の教育講演2では,船間芳憲氏(熊本大学)が司会を務め,市川氏が「 CT技術者に必要なX線画像の基礎−ついにphoton countingまで来てしまった時代だからこそ−」と題して講演した。市川氏はX線画像も画質を決める三大要素として,X線量,検出器感度,散乱線含有率を挙げた。そして,CTにおいて,検出効率を高くしてノイズを少なくするためには,X線量,検出器感度が重要な要素になるとし,フォトンカウンティングCTがそのゴールだと述べた。
すべてのプログラム終了後には,第11回学術大会の大会長を務める原田耕平氏(札幌医科大学附属病院)が閉会の挨拶を行った。第11回学術大会は,2023年7月7日(金),8日(土)の2日間,ホテルライフォート札幌(北海道札幌市)で行われる予定である。テーマには,「繋ぐ,そして挑む」が掲げられた。
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