大阪公立大学医学部附属病院が西日本初,国内3施設目となる「Elekta Unity MRリニアックシステム」を稼動
導入を記念してプレスセミナーと内覧会を開催
2022-6-20
大阪公立大学医学部附属病院に
導入された「Elekta Unity」
大阪公立大学(旧:大阪市立大学)医学部附属病院は,エレクタ(株)の高精度放射線治療機器「Elekta Unity MRリニアックシステム(以下,Elekta Unity)」を西日本で初めて導入,2022年5月30日(火)に治療を開始した。Elekta Unityは,高磁場・高分解能なフィリップス社製1.5T MRI装置と高精度デジタルリニアックが一体化した放射線治療装置。治療直前および照射中に腫瘍や重要臓器の位置や輪郭を可視化でき,近接する正常組織への照射や有害事象を抑制できる。また,軟部組織をモニタリングできるため,腫瘍位置同定用マーカの埋め込みが不要で,患者負担が軽減する。
2017年にオランダのユトレヒト大学医療センターで1号機が稼働した後,日本国内では2019年5月に製造販売承認を取得。2021年12月に千葉大学医学部附属病院,2022年2月に東北大学病院で稼動開始したのに続き,国内3施設目かつ西日本初として同院に導入された。2022年6月14日(火)には,「Elekta Unity 大阪公立大学医学部附属病院で西日本初の治療開始〜放射線治療の新時代:リアルタイムに体内を映してがんを狙い撃ち〜」と題したプレスセミナーが同院とあべのメディックス(大阪市阿倍野区),オンライン中継で行われ,現地ではElekta Unity治療室の内覧会も開催された。
プレスセミナーでは,冒頭に大阪公立大学医学部附属病院副院長の日野雅之氏が登壇し,同院のがん治療体制について紹介した。日野氏は,同院では2022年4月に化学療法センターと高精度放射線治療センター,緩和ケアセンター,ゲノム医療センターを統合し,新たにがんセンターを設立したことを発表。さらに,同院はがん拠点病院として地域住民の健康に寄与する質の高いがん医療を提供するとともに,特定機能病院として高度先進医療の提供や,新たながん治療をめざした臨床研究による治療成績の向上を実現したいと述べた。
続いて,同院放射線治療科部長の澁谷景子氏が「MRリニアックで拓く,がん治療の新たな可能性」と題して講演を行った。澁谷氏は,がん放射線治療における技術革新の結果,コーンビームCT(CBCT)を用いた画像誘導放射線治療による治療効果への有用性が明らかとなり,保険診療として行われている半面,治療時に参照できるのが照射直前の情報のみで,リアルタイムな腫瘍や臓器の形状の変化に対応できないことに加え,画像の画質の点で未だ課題があると指摘した。その上で,今回同院で導入したMRリニアック(Elekta Unity)は,(1)CBCTより優れた描出能を持つMR画像で照射直前の正確な位置情報を基に,より高精度な照準を可能とする「MR画像誘導放射線治療」と(2)照射直前に治療計画を作成,照射する「即時適応放射線治療」,(3)腫瘍と周囲臓器をMR画像でリアルタイムに監視,照射する技術による「MR画像誘導即時適応放射線治療」を可能にし,パラダイムシフトを実現したと述べた。また,MRリニアックはCTでは同定できなかった極小腫瘍も描出でき,オリゴ(少数個)転移などへの適応拡大や照射範囲の縮小による有害事象の低減,照射回数の低減による治療期間の大幅な短縮などが可能になるとした。さらに,前立腺がんにおける尿道温存高線量照射のような新たな治療法の開発の可能性にも触れ,MRリニアックの活用によるがん治療の広がりに期待を示した。
最後に,同院中央放射線部技師長の市田隆雄氏が「放射線技術学で意味解く,西日本初の最新鋭機器の意義について」と題して講演を行った。市田氏は,MRリニアックの利点として,X線被ばくがなく,細かい解剖学的構造に優れるため,より高精度な治療が期待できるとした。また,拡散強調画像を利用することで造影剤を用いずに腫瘍と正常組織の鑑別が容易になり,加えて拡散係数(ADC)により腫瘍を定量化することで,良悪性腫瘍や炎症疾患の鑑別などが可能になるとした。その一例として,前立腺がんの腫瘍マーカーの一つである前立腺特異抗原(PSA)とADCが逆相関を示すという研究報告を紹介し,これを応用することで,治療中の腫瘍のviability(生存)を評価して追加照射などを検討し,効果や合併症を考慮した適切な治療につなげられるのではないかと述べた。
●問い合わせ先
エレクタ株式会社
マーケティング部
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