第3回「Rise up CT Conference」がオンラインで開催

2022-5-24

CT


今回もオンラインで開催されたRise up CT Conference

今回もオンラインで開催されたRise up CT Conference

第3回「Rise up CT Conference」が,2022年5月7日(土)に昨年に続きWebで開催された。2020年に10年間続いたADCT研究会を引き継いで発足したRise Up CT Conferenceだが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により,2年連続でオンラインでの開催となった。冒頭に挨拶した代表理事の井田義宏氏(藤田医科大学病院)は,「Rise Up CT Conferenceは,キヤノンメディカルシステムズの共催で,キヤノンのCTを活用するための有益な情報を共有することを目的に活動している。本日の講演を通じてより良い画像情報を臨床医やその先の患者さんに提供できるように願っている」と述べた。

代表理事:井田義宏 氏(藤田医科大学病院)

代表理事:井田義宏 氏(藤田医科大学病院)

 

プログラムは,“最新CTセッション”5題,“画論からのトピックス”3題,Rise up Lectureが設けられた。総合司会は長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)が務めた。プログラムに先立って,“CT装置最新情報提供”として,キヤノンメディカルシステムズから「ITEM2022 Canon CT Topics」と題したプレゼンテーションが行われた。キヤノンブースのCTコーナーでは,320列CT「Aquilion ONE/PRISM Edition」,80列CTの新製品「Aquilion Serve」,コンテナCTなどを展示した。各製品のポイントを紹介するとともに,展示会でも大きな注目を集めたAquilion Serveの世界第1号機が稼働した,福岡県・白十字病院での初期導入経験について,同院の山口広之氏がプレゼンテーションした。

総合司会:長澤宏文 氏(国立がん研究センター中央病院)

総合司会:長澤宏文 氏(国立がん研究センター中央病院)

 

最新CTセッションは,井田氏と宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生北見病院)が座長を務めた。最初に「Spectral Imageを臨床に活かす!~Bone Biopsyへの応用~」を遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院)が講演した。遠藤氏は,Aquilion ONE/PRISM Editionに搭載されたdual energy(DE)撮影である“Spectral Imaging System”を用いたCTガイド下骨生検について発表した。遠藤氏は,骨梁間型骨転移などの症例で,骨生検にVirtual Non Calcium Image(VNCa画像)や電子密度画像を用いた検討について報告した。
続いて,「PIQE Super Resolution Deep Learning Reconstruction ー心臓領域での活用」を松本良太氏(藤田医科大学病院)が講演した。松本氏は,Aquilion ONE/PRISM Editionに新たに搭載された超解像技術であるPIQEの物理特性や従来の再構成法との検証結果を報告した。PIQEは,教師データに高精細CTの高解像度データを用いて構成したDCNNを搭載することで,ADCTで取得された画像データを低ノイズ・高分解能化できる。松本氏は,空間分解能ではAquilion Precisionがやや優るが,時間分解能が高く心拍変動にも対応するADCTの心臓撮影にPIQEを適用できる意味は大きいと述べた。
3題目は,石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)が「AiCEにおけるノイズ低減技術評価のためのノイズ低減評価法の提案」について講演した。石原氏は,高精細CT「Aquilion Precision」のAiCEのBodyと新たに追加されたBody Sharpのノイズ低減について,従来のNPS(Noise Power Spectrum)ではなく,CFR(Central Frequency Ratio:中心周波数比),NMR(Noise Magunitude Ratio:曲線下面積比)を用いて行ったノイズ低減効果や視覚評価について報告した。続いて,「AiCEを併用した造影剤量低減下における腹部低電圧CT撮影:体重制限のないプロトコル構築を目指して」を梅田崚氏(豊川市民病院)が発表した。梅田氏は,Aquilion ONE/Nature Editionでの低電圧撮影による造影剤量低減のために行った検討結果を報告した。120kVから80kVの低電圧にすることで約45%の造影剤量の低減が可能であり,体重95kgまでは画質特性が担保されたと述べた。最後に高橋伸光氏(奥州市総合水沢病院)が「骨挫傷イメージ(BBI)5年目の現在地」を講演した。DE撮影の仮想非カルシウム画像(Virtual Non calcium image)を用いた骨挫傷や不顕性骨折などの診断のためのBBI(Bone Bruise Image)について講演した。高橋氏は,2017年に初めて臨床報告されてからBBIの5年間の成果について報告し,骨挫傷などで高い感度,特異度があること,椎体骨折の診断で入院期間の短縮など寄与していると述べた。また,課題の1つに専用アプリケーションがないことがあったが,現在はキヤノンメディカルシステムズの3Dワークステーション「Vitrea」に“VNCa”として搭載されていることを紹介した。

座長:井田氏(右)と宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生北見病院)

座長:井田氏(右)と宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生北見病院)

 

遠藤和之 氏(東海大学医学部付属八王子病院)

遠藤和之 氏(東海大学医学部付属八王子病院)

 

松本良太 氏(藤田医科大学病院)

松本良太 氏(藤田医科大学病院)

 

石原敏裕 氏(国立がん研究センター中央病院)

石原敏裕 氏(国立がん研究センター中央病院)

 

梅田 崚 氏(豊川市民病院)

梅田 崚 氏(豊川市民病院)

 

高橋伸光 氏(奥州市総合水沢病院)

高橋伸光 氏(奥州市総合水沢病院)

 

休憩を挟んで行われた“画論からのトピックス”では,辻岡勝美氏(藤田医科大学)を座長として2021年に行われたキヤノンメディカルシステムズの「画論 29th The Best Image 」でのCT部門受賞施設から3題の講演が行われた。
最初に,Aquilion Precision部門のテクニカル賞の石井郁也氏(国立がん研究センター中央病院)が「外陰がん」について発表した。AiCEのBody Sharpを用いたCE Boostによって,内外陰部の微細な動脈,静脈までを描出して手術支援を行ったテクニックを紹介した。続いて1〜160列(心血管)部門の優秀賞の「腹部大動脈瘤破裂」について,上山悠太氏(岩手医科大学附属病院)が発表した。上山氏は,CE Boostで平衡相から動脈相を差分して血管壁を強調するBlack Blood Image(仮)で大動脈瘤の破裂を明瞭に描出できることを紹介した。最後に,Aquilion ONE(心血管)部門のテクニカル賞「気管気管支および肺静脈還流異常症」について坂本和翔氏(福岡山王病院)が発表した。高心拍で被ばく低減が求められる小児の心臓撮影に,頭部のDynamic Volume撮影などで使われる“Time MIP”を利用してノイズ低減とコントラスト向上を可能にしたテクニックについて紹介した。

座長:辻岡勝美 氏(藤田医科大学)

座長:辻岡勝美 氏(藤田医科大学)

 

石井郁也 氏(国立がん研究センター中央病院)

石井郁也 氏(国立がん研究センター中央病院)

 

上山悠太 氏(岩手医科大学附属病院)

上山悠太 氏(岩手医科大学附属病院)

 

坂本和翔 氏(福岡山王病院)

坂本和翔 氏(福岡山王病院)

 

“Rise Up Lecture”は,石原氏が座長を務め,「頭頸部癌の治療戦略における最新CTの活用」を久保優子氏(国立がん研究センター中央病院)が講演した。 久保氏は,最初に頭頸部癌の治療戦略について原発巣,転移,治療の各シチュエーションにおけるCT,MRIなどモダリティ選択やその役割について症例を交えて概説した。その上で,最新CTの活用として,高精細CT,サブトラクション,再構成法について紹介した。再構成法では金属アーチファクトの低減について,dual energyの仮想単色X線画像の高keV画像とMetal Artifact Reduction(MAR)を用いることで,アーチファクトの低減効果のさらなる向上が期待できることなどを紹介した。

最後に挨拶した井田代表理事は,「一般的なCTの技術ではなく,1メーカーの特色のあるアプリケーションやプロトコール,撮影技術の工夫について情報共有できる意義は大きい。今後,ユーザーのすそ野を広げて,さらに発展させていきたい」と述べて閉会した。

 

●問い合わせ先
Rise up CT Conference事務局
TEL 0562-93-2748
E-mail [email protected]

CT


TOP