NEC Visionary WeekでNECと済生会熊本病院が取り組む医療DX事例を講演
2020-12-10
NEC Visionary Week〜
創ろう明日を,描こう未来を
NECは,New Normal時代のデジタルイベントとして「NEC Visionary Week〜創ろう明日を,描こう未来を」を2020年11月12日(木)〜12月4日(金)までオンラインで開催した。11月12日と13日にオープニングセッションが,テーマセッションが11月24日〜27日と12月1日〜4日に行われ,2021年1月29日(金)までオンデマンド配信中である(https://wisdom.nec.com/ja/event/nvw/ )。
テーマセッションでは“ひと”“まち”“産業”“テクノロジー”をテーマに,講演やセミナー,展示などのイベントが設けられたが,12月3日に“産業”のテーマセッションの「ワークスタイル変革」の中で,社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院院長の中尾浩一氏が「COVID-19のインパクトと加速する医療DX」を講演した。
中尾氏は,COVID-19がもたらした病院経営へのインパクトを,外来や救急における水際対策や院内感染対策など感染症が直接的に及ぼす“外部リスク”,感染症対応に伴う行動規制や情報共有の片寄りから組織内部に分断が起こる“内部リスク”,風評被害や偏見,行政手続きへの対応などに起因する“社会的リスク”の3つに類型化し,これらに対応する困難さが医療機関を苦しめていることを説明した。
さらに,COVID-19は,医療現場へのデジタル技術の導入の遅れを明らかにし,医療機関においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められていると述べた。
その上で,医療におけるDXの目的について,済生会熊本病院では医療の価値を高めることと定めて,生命予後やQOLの改善といった成果(Outcome)を上げると同時に,合併症や被ばく,患者・家族の心理的・社会的・経済的な負担(コスト,犠牲)を下げることで価値を高められると説明した。同院では,2021年度からの中期事業計画である“VISION 2021-2024”の中で,「デジタル化を基盤とした『価値中心の医療』」を掲げ,デジタル化の推進によって“高価値医療の提供”“医療連携の強化と地域との共生”“Withコロナ時代の職場環境づくり”を進めるとしている。中尾氏は,デジタル化の技術として,データ分析,オンライン・リモート,プロセス自動化が対象になるとして,済生会熊本病院でのデータ活用の取り組みについて,クリニカルパスの推進とJCI(Joint Commission International)の導入と継続について説明した。
クリニカルパスでは,電子カルテに搭載された電子化パスと,パスデータの抽出や解析を行うNECV(Novel Electronic Clinical pathway analysis Viewer,ネック・ブイ)を活用している。また,JCIの審査では,医療安全と医療の質を診療記録中で証明することが求められるが,同院では電子カルテのダイナミックテンプレートを活用して,350のテンプレートを整備,構造化した記述方式で診療行為を漏れなく入力し,抽出・分析が容易にできるシステムを構築している。そのほか,Business Intelligence(BI)の活用や画像診断報告書の見落とし防止のための既読管理システムの構築などの取り組みを紹介した。
最後に中尾氏は,NECと進めている“DXプロジェクト”について言及し,現在,「セキュリティ(IT活用で安心・安全な環境)」「連携(診療プロセスのオンライン化)」「PFM(同)」「診療記録(データ活用を地域へ)」「オンライン基盤整備(院内システムとクラウドサービスの融合)」という,5つのグループと4つのテーマ(カッコ内がテーマ)で取り組んでいると述べた。セキュリティでは,顔認証技術の診療プロセスへの取り込みを検討している。また,連携,PFM(Patient Flow Management),診療記録では,地域医療連携の中で前方連携や転院調整,インフォームド・コンセントなどのシーンで,“Web予約”,“Zoom接続システム”,“ファイル共有”,“Web問診”の4つのツールを活用した情報連携・共有,構造化されたデータ収集に向けた取り組みを行っていく。中尾氏は,地域医療連携を考える際にも,そのプロセス(シーン)をモジュールとして整理して,そのシーンに最適なツールを選択し,高度急性期病院としてのオンライン診療のあり方を探っていく必要があるとし,便利で安心・安全な地域医療の提供に向けてNECとの共創を進めていきたいと述べた。
●問い合わせ先
NEC Visionary Week事務局
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