日本福祉介護情報学会が介護現場のコロナ対策をテーマにしたオンラインワークショップを開催

2020-12-14

介護


介護現場のコロナ対策がテーマ

介護現場のコロナ対策がテーマ

日本福祉介護情報学会は2020年11月28日(土),「介護現場は新型コロナウイルス対策にどう向きあっているのか—利用者と実践者のための情報発信と情報共有—」をテーマにした,オンラインワークショップを開催した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは,介護現場にも大きな影響を及ぼしている。利用者数の減少やスタッフの確保など運営・経営面での課題に加え,利用者の感染症対策をとりながらケアの提供やコミュニケーションを図る必要に迫れている。このような状況を踏まえて,ワークショップでは,山田尋志氏(社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋理事長)のキーノート・スピーチのほか,シンポジウムが設けられた。冒頭に挨拶した,同学会の生田正幸代表理事は,コロナ禍の中,感染および重症化のリスクが高い高齢者の生活を支える介護現場の実情を発信する機会としてワークショップを開催すると説明。医療と比べて見過ごされやすい介護関係者の努力を,情報発信・共有の観点からとらえ,ウィズコロナ・アフターコロナにおける介護分野の情報化について考える機会としたいと述べた。

最初に行われた山田氏のキーノート・スピーチでは,「新型コロナウイルスで試されるケアモデル」をテーマに講演した。山田氏は,新型コロナウイルス感染症の影響による介護分野の課題として,高齢者の面会制限や孤立,地域社会での住民活動の制限,施設・事業者における職員の負担などを挙げた。一方で,山田氏は,日本の介護分野における感染症対策は世界的にも評価されていると述べた。その上で,「つながり」が制限されている状況でケアのあり方が問われているとし,国際障害分類(ICF)に基づき,心身機能・身体構造(生命の質)にはITとAI,活動(生活の質)にはIoT,参加(人生の質)にはZoomなどのツールを活用することが有用だと説明。SNSによりコミュニケーションのあり方が変わった社会の状況を踏まえ,介護分野でも地域包括ケアのケアモデルが後退しないよう,情報ツールを活用することが求められているとまとめた。

続く,シンポジウムでは,生田氏と林 恭裕氏(社会福祉法人愛和福祉会理事長/同学会副代表理事)が進行・コメンテーターとなり,「新型コロナ対策 現場からの発信」をテーマに,4名の演者が発表を行った。最初に,杉原優子氏(地域密着型総合ケアセンターきたおおじ施設長)が「高齢者介護施設における新型コロナ対策の実際と課題—暮らしの継続と変化への対応—」と題して,自施設の対応を紹介した。同施設は感染が拡大し始めた2月から面会の自粛文書を家族に送付するなどの対応をとる一方,3月から職員向けにExcelで体調管理確認表を作成し,職員間で情報を共有しながらケアを行った。また,入居者と家族間でのオンライン面会も行っている。杉原氏は,オンライン面会のメリットについて,海外も含めた多くの家族と同時に接続できることなどを挙げた。

また,2番目に発表した小林舞見氏(京都市紫竹地域包括支援センター長)は,「新型コロナウイルスからヘルパー(介護職)を守り,在宅療養者の在宅生活継続を支援する取り組み」をテーマに,ヘルパー支援事業について説明した。小林氏は,コロナ禍におけるヘルパーの不安を理解し,地域全体の課題としてヘルパーを支えることが重要だとして,支援事業をスタートとしたと報告。ヘルパーに指針,知識・技術,防護具を届けるための活動について説明した。さらに,小林氏は,オンラインでのヘルパー向けの研修も行い,短期間で,会場で開催する場合と同程度の参加人数を得て,効果的に情報を提供できたことなどを紹介した。

次いで,堤 洋三氏(社会福祉法人六心会理事長/滋賀県老人福祉施設協議会副会長)が「その時,何ができたのか—施設内クラスター発生時の応援調整を考える—」をテーマに,滋賀県老人福祉施設協議会が行った感染症対策に関するアンケート結果を紹介したほか,8月に行われたクラスター発生施設に対する同協議会のスタッフ応援派遣について説明。応援派遣スタッフへの検査体制や感染症への理解,情報提供など,今後に向けた課題を提示した。

最後に発表した大原みお氏(横浜市立みなと赤十字病院感染管理室感染管理認定看護師)は,「医療現場における新型コロナ対応の現状〜COVID-19患者受け入れの体験から〜」と題して,感染管理認定看護師の立場から感染症対策を説明した。大原氏は,ゾーニング対策などを紹介した上で,対応に苦労したこととして,防護用品の不足,情報の錯綜,未知のウイルスへの恐怖と不安,患者の療養先の確保などを挙げた。そして,これらの課題を解決するため,地域の介護施設・在宅ケアとの連携強化や日常的に相談できる体制づくりの必要性に言及。そのためには,科学的根拠に基づいた対策ができるように感染症に対する不安を軽減することが大事だと述べた。そして,これらの対応によって地域全体の感染症対策が向上するとまとめた。

介護分野は,医療に比べて,感染症対策が十分ではない可能性ある一方で,重症化リスクの高い高齢者が多い。そのためにも,ITなどを活用し,感染防止対策やクラスターなどの情報を地域全体で共有していくことが重要であろう。

 

●問い合わせ先
日本福祉介護情報学会オンラインワークショップ事務局
E-mail [email protected]

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