安全なMRI検査を考える会が,巨大地震をテーマにしたオンラインワークショップを開催
2020-12-1
巨大地震をテーマにした
オンラインワークショップ
一般社団法人安全なMRI検査を考える会は2020年11月19日(木),第2回MRI安全Webワークショップ「MRIの危機管理 検査中に巨大地震が起きたら」を開催した。同会は6月11日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をテーマにしたオンライン形式のワークショップを開催したが,今回は巨大地震をテーマにした。来年2021年は2011年に発生した東日本大震災から10年の節目の年である。また,現在,南海地震などの巨大地震のリスクが高まっていると言われている。そこで,ワークショップでは,東日本大震災や2016年の熊本地震を経験したゲストコメンテーター3名を交えて,第1部「その時,MRI室で何が起きるか? 震災から患者さんとスタッフを守るために」と,第2部「震災対応シミュレーション 自分の施設にあった震災対応マニュアルを作る」の2部構成でプログラムが組まれた。司会進行は土`井 司氏(高清会高井病院)が務め,内田幸司氏(脳情報通信融合研究センター)がコーディネーター,平野浩志氏(抱生会丸の内病院),土橋俊男氏(日本医科大学付属病院),平出博一氏(元・日本画像医療システム工業会安全性委員会委員長)がコメンテーターとして参加した。
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第1部では,熊本地震を経験した野田誠一郎氏(熊本中央病院),東日本大震災を経験した永坂竜男氏(東北大学病院),引地健生氏(ひろせ会広瀬病院)が当時を振り返った。野田氏から,熊本地震では震度7,6強,6弱の地震が群発し,MRI本体のカバーの脱落やマグネット移動といった被害が発生したことが報告された。また,永坂氏からは,検査施行中に東日本大震災が発生し,停電状態の中で小児の患者を救出に向かった経験が紹介された。続いて,東日本大震災におけるMRI装置被災状況の調査にもかかわった引地氏からは,東日本大震災におけるクエンチなどの被災内容について説明があった。東日本大震災では,津波による浸水被害が12台あり,さらに流出したMRIには磁場は発生の注意書きをして立ち位置を制限するなど,二次災害を防ぐ対策が取られたことなどが解説された。これらの報告を踏まえた上で,クエンチと電源に関するメーカーの見解なども紹介された。加えて,建物の構造についても言及があり,免震構造は耐震構造よりも被害が少なく,被害が大幅に異なることが示された。
休憩を挟み行われた第2部では,山本晃義氏(共愛会戸畑共立病院)が,同院におけるマニュアル作成とスタッフによるシミュレーションの結果について報告を行った。地震発生時の患者避難の方法などを紹介した上で,被災時にスタッフが落ち着いて行動できるよう,マニュアル作成や避難訓練の重要性が言及された。
このシミュレーションを踏まえて,土橋氏からは,マニュアルで重要となるMRIの緊急ボタンの機能や脱着式検査テーブルが外れない場合の対応などの解説があった。また,平野氏からは,地震発生時に施設全体でどのように対応するか,職員の参集ルールなどのBCPマニュアルや情報収集のあり方が示された。
当日は,視聴者へのアンケートも行われた。「MRI検査中に大地震が起きることを考えたことがありますか?」「ご自身の施設のハザードマップを調べたことがありますか?」「検査中に緊急地震速報を受信することができますか?」「緊急撮影停止ボタンを押したときに寝台はフリーになるか,ロックされるか,知っていますか?」「施設全体で災害訓練に取り組んでいますか?」といった質問が用意された。「施設全体で災害訓練に取り組んでいますか?」の問いに対して,161回答中7割近い110名が「取り組んでいる」と回答した一方で,「緊急撮影停止ボタンを押したときに寝台はフリーになるか,ロックされるか,知っていますか?」という質問では,158回答中約半数の81名が「知らない」と回答するなど,災害時の装置の取り扱いについて知識が十分ではない可能性も考えられた。大地震のリスクが高まっていると言われる中,多くの医療機関で,BCPの策定などMRIの安全性を確保する取り組みが求められていると言えよう。
●問い合わせ先
一般社団法人 安全なMRI検査を考える会
E-mail [email protected]
https://mri-anzen.or.jp/