AMED,4月に就任した三島良直理事長が記者説明会を開催

2020-9-7


オンラインで会見する三島良直理事長(AMED)

オンラインで会見する三島良直理事長(AMED)

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の三島良直理事長は,2020年8月28日(金),記者説明会をオンラインで開催した。三島氏は,2015年の設立から理事長を務め,3月に退任した末松 誠氏の後を受けて新理事長に就任。2012年から6年間,東京工業大学の学長を務めた経験を持つ。記者説明会では,理事長としての今後の推進方針や新型コロナウイルス対策に関する研究開発の最新の取り組み状況,令和2年度の医療分野の研究開発関連調整費などについて説明した。

2020年度のAMED予算には,日本医療研究開発機構向け補助金1272億円,調整費175億円が充てられ,さらに補正予算から新型コロナウイルス対策に関連する研究開発費用が加わる。三島氏は,今後の推進方針について,新型コロナウイルス感染症対策のほか,まずは第2期全体を通じて政府との協調が重要であると強調。医療分野研究開発推進計画の決定について,大きな方向性を定めていく政府と,その実現に向けファンディングエージェンシーとして研究開発に責任を持つAMEDという役割分担を互いに尊重し,協調・協働関係を形成することが肝要であり,そのために日常的にコミュニケーションを図ることが重要だとした。そして政府との協調・協働を通じた体制・運営の強化や国際競争力の向上,異分野融合,科学技術系シンクタンクとの連携強化を方針として掲げた。

また,第2期の研究開発プロジェクトでは,第1期の5つの「横断型」と4つの「疾患領域対応型」の計9つの統合プロジェクトから,モダリティを軸にした6つの統合プロジェクトに再編成し,各プログラムディレクター(PD)の下で,関係府省の事業を連携させ,基礎から実用化まで一元的に推進する。さらに,プロジェクトを横断する形で各疾患領域のコーディネーター(DC)を設置。DCは,理事長やAMED執行部およびPDに助言・提案を行う役割を担い,三島氏は,PDとDCの連携による研究開発の推進体制が第2期の特徴であると述べた。

第2期で進められる6つの統合プロジェクト〔日本医療研究開発機構(AMED)より提供〕

第2期で進められる6つの統合プロジェクト〔日本医療研究開発機構(AMED)より提供〕

 

なお,6つの統合プロジェクトのうち,シーズ開発・研究開発プロジェクトでは,異分野・モダリティ融合的なシーズの研究開発やほかの5プロジェクトと連携し,シーズの継続的発掘・育成に取り組んでいく。そのために,基礎研究や国際共同研究のファンドを活用した拠点のハブ機能の拡張,若手や女性,アントレプレナーなどの人材育成の強化を重点項目として挙げ,これらはほかのプロジェクトにも共通するものだとした。

三島氏は続いて,新型コロナウイルス対策に関するAMEDの最新の取り組み状況について解説した。新型コロナウイルス対策については,政府支援総額1480.6億円のうち,1129.9億円がAMED経費に充てられている。三島氏は,前倒しでの公募開始や審査期間の短縮,AMED内の決定プロセスの迅速化により,課題の早期採択に務めたことを強調。AMED支援による成果として,6月に製造販売承認を取得した抗原検査試薬(富士レビオ)や,4月に試薬の販売を開始した高速PCR検査機器(キョーリン製薬)などを例示した。

また,令和2年度の医療分野の研究開発関連調整費についても説明が行われた。調整費は,健康・医療戦略推進本部の決定により年2回配分され,AMED理事長の提案に基づく「理事長裁量型」と,推進本部長または副本部長などが策定する「トップダウン型」がある。そのうち理事長裁量型は,研究開発の前倒しや内容の充実などに効果的と判断した事業に配分される。令和2年度は,新型コロナウイルス感染症対策や6つの統合プロジェクトに関する研究開発の推進のほか,異分野などとの横断的・連携的取り組みの推進を3つの柱とすることを表明。新型コロナウイルスに関しては,より先を見据えた対応に重点を置き,スーパーコンピュータ「富岳」による治療薬探索などの研究の加速,統合的人工知能(AI)解析を含む遠隔ICT技術による臨床研究システムの構築などを含むとした。また,6つのプロジェクトのうち,医療機器・ヘルスケアプロジェクトでは,超偏極13C MRIに関する研究開発にも予算が配分される。

発表後の質疑応答で,第1期の評価や現場やアカデミアからのニーズの汲み上げについて問われた三島氏は,第1期については成果がめざましかったと評価した上で,アカデミアに対しては,理事長就任後,各研究所や製薬企業などを訪問して現場の意見を聞いており,今後もそれを続けていくとした。また,再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトへの支援については,2023年度までは支援を継続し,その後の対応は相談していくとの認識を示した。

 

●問い合わせ先
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
経営企画部評価・広報課
E-mail [email protected]
TEL 03-6870-2245


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