「介護ロボット全国フォーラム」に35団体が出展
2020-2-4
介護ロボットを手がけるメーカー35社が出展
公益財団法人テクノエイド協会は2020年1月24日(金),TOC有明コンベンションホール(東京都江東区)において,「介護ロボット全国フォーラム」を開催した。このフォーラムは,厚生労働省「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」の一つとして行われたもの。テクノエイド協会は,本事業を受託しており,相談窓口を設けているほか,モニター調査などを実施している。介護ロボットの普及・啓発を目的として,2018年度からは全国各地で「介護ロボットフォーラム」を開催してきた。今回は全国フォーラムとして企画され,展示会とシンポジウムで構成。多くの参加者を集めた。
午前から始まった展示会は,高齢者や障がい者の自立・介助支援,介護者の業務負担軽減に寄与する介護ロボットを体験したり,操作説明を受けたり,相談を行う機会となり,35の企業・団体が出展した。カテゴリとしては,「見守り」が最も多く15社,次いで,移乗支援と排泄支援が各5社,リハビリ関連機器が3社,コミュニケーションと介護業務支援が各2社,入浴支援が1社,その他1社,ほかに大学生らが研究・開発成果を紹介する「介護ロボット学生チャレンジ」が展示された。
また,午後から行われたシンポジウムは,介護ロボットの政策動向に関する講演,介護事業者やメーカーからの開発・導入事例などの報告が行われた。始めに挨拶した同協会理事長の大橋謙策氏は,生産年齢人口が減る中,人材不足を補うには介護ロボットの普及が必要だとし,介護者の働き方改革の観点からも有用だと述べた。その上で,これまでメーカーと介護者のシーズ・ニーズのマッチングが進められてきたが,今後は次の段階として,開発したロボットを利活用する仕組みづくりが重要になると述べた。
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この後,厚生労働省老健局高齢者支援課課長の齋藤良太氏が登壇し,「介護ロボットの開発と普及のための取り組み」をテーマに講演した。齋藤氏は,介護分野における人材不足に言及した上で,厚生労働省が策定した「介護・福祉サービス改革プラン」とその中における介護ロボット施策について説明。介護現場革新会議や介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム構築などを解説した。さらに,2020年度からの地域医療介護総合確保基金の一つとして,施設の大規模修繕に合わせて介護ロボットなどの導入支援を行うことも取り上げた。また,次いで登壇した経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課医療・福祉機器産業室室長の富原早夏氏は,経済産業省の介護ロボット施策を報告した。富原氏は2015年2月に公表した「ロボット新戦略」について説明した上で,同省が進めるロボット介護機器開発事業について,開発成功事例も交えて紹介。さらに,スタートアップ企業を支援する「J-Startup」や医療機器開発支援ネットワークなどの施策について概説した。
3番目に登壇した東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の鎌田 実氏は,「高齢化社会におけるテクノロジーの活用について」をテーマに講演した。鎌田氏は,人口減少社会が進む中,交通などのインフラを含めた社会の仕組みを変える必要があると述べた。そして,過疎化の進行や独居の増加が進むことを踏まえ,介護のあり方も変えていく必要があると説明した。その上で鎌田氏は,介護ロボットやIoT,ICTを活用して事務作業の効率化を図ることが重要だとし,効果を生むためには業務の洗い出しが欠かせないと言及した。さらに,今後は在宅医療・介護が進むが,高齢者を孤立させないコミュニティづくりも大切だと強調した。
続いて,「介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調に関する成果と活用について」と題して,厚生労働省の「介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調協議会設置事業」の成果を,メーカー(開発者)と介護者それぞれの視点から報告があった。開発者側として,(株)幸和製作所開発本部長の戸塚健一氏が転倒防止ロボット歩行車の開発経緯を説明した。また,介護者側として,介護のロボットニーズ・シーズ連携協調協議会愛知県委員長の稲垣 毅氏が自動走行機能付き歩行車「ロボスネイルOVER」〔リョーエイ(株)〕開発の取り組みについて解説した。
次に,「介護現場のニーズを反映した介護ロボットの開発のために必要なこと」をテーマに,特定非営利活動法人結人の紬理事長の坊岡正之氏が発表した。坊岡氏は,介護のロボットニーズ・シーズ連携協調協議会におけるプロジェクトコーディネーターとしての経験を基に,活動テーマの設定や組織体制のあり方,プロジェクトコーディネーターに求められる役割を説明した。
この後,「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業の成果と活用」をテーマに,(株)NTTデータ経営研究所の吉田俊之氏と北九州市保健福祉局先進的介護システム推進室の竹枝健一郎氏が発表した。吉田氏は,「平成30年度介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業」を解説した上で,介護ロボット導入を成功させるポイントとして,情報収集,組織として取り組む合意形成,プロジェクト化,現場と経営層の協力体制,課題の可視化,導入計画,試行的導入,本格導入などの段階ごとに解説した。次に登壇した竹枝氏は,北九州市が取り組んだモデル事業での移乗介助型ロボットの導入による評価分析や介護者へのアンケート,導入マニュアルについて説明した。
続いて,「介護ロボット活用による実践研究の報告」を題して,導入施設から使用経験が報告された。まず,社会福祉法人野の花会の楠元寛之氏が,介護業務支援ロボットの「HAL」〔サイバーダイン(株)〕やコミュニケーションロボット「PALRO」〔富士ソフト(株)〕,見守りシステム「Neos+Care」〔ノーリツプレシジョン(株)〕などの使用経験を報告した。また,社会福祉法人スマイリングパークの山田一久氏は,「眠りSCAN」〔パラウマウントベッド(株)〕をはじめとした介護ロボット,ICT,IoTの運用方法を紹介したほか,慶應義塾大学などが開発した脳波測定器「ケアコミューター」による,職員のメンタルヘルスに取り組み,離職率低減を図ったことを解説した。
シンポジウムでも触れられたとおり,超高齢社会と生産年齢人口の減少が進む中,介護者の人材不足を補い,働き方改革を進めるには,介護ロボットやICT,IoTの活用がカギを握っている。当日は,展示会・シンポジウムとも多くの参加があり,介護現場から介護ロボットなどの技術に大きな期待が寄せられているのがうかがえた。
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