JIRAがradiomicsやAIをテーマにした「第9回画像医療システム産業研究会」を開催
2019-12-16
Radiomicsと機械/深層学習がテーマ
一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)は2019年12月12日(木),A-PLACE新橋駅前(東京都港区)において,「第9回画像医療システム産業研究会」を開催した。JIRAでは,「画像医療システム産業発展に向けて」をテーマに,2011年から毎年,同研究会を開催。医療や行政,産業界の有識者などの講演から,画像医療システム産業のさらなる発展に向けた展開を考える場としてきた。今回は「Radiomicsと機械/深層学習」のテーマの下,医用画像などの診療情報を網羅的に解析するradiomics研究の動向や,人工知能(AI)の中心的な技術である機械学習と,その手法の一つである深層学習に焦点を当て,ビッグデータ化する診療情報の利活用について産業界としてどのように対応すべきかを考えるため,基調講演のほか4つの講演が設けられた。
開会に先立ち挨拶したJIRA会長の新延晶雄氏は,医療分野におけるAIは実用段階となっており,適用も広がっているとし,radiomicsにおいても重要な技術であると述べた。その上で,12月1日〜6日に開催されたRSNA 2019について触れ,AI Showcaseには広大なエリアに144社が出展していたと説明。AIが画像医療システム産業に与えている影響の大きさについて言及した。
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新延氏の挨拶に続き行われた基調講演では,木下 学氏(大阪大学大学院医学系研究科・医学部脳神経外科)が登壇。「Radiomicsの展開と大規模臨床データの利用」と題して講演した。木下氏は神経膠腫における遺伝子異常の評価技術について解説し,MR画像から病変部を同定した上で,画像の均一化処理を行い,さらに画像の特徴量を算出して,その特徴量とそのほかの臨床情報の相関関係を明らかにするradiomics研究の手法を説明した。木下氏は講演のまとめとして,radiomicsには質の高いデータが必要なことや国際的な競争が激化していることに言及し,良質な医用画像データベースの構築が急務であると述べた。
次いで,登壇した高橋 慧氏(国立がん研究センター研究所がん分子修飾制御学分野)は,「Radiomics解析への機械/深層学習の利用と判断ロジックに関する解釈」と題して講演した。高橋氏は,機械学習のワークフローを述べた後に,神経膠腫におけるIDH遺伝子変異予測のためのテクスチャ解析など,これまでの研究成果を示した上で,radiomics研究の動向と問題点を整理した。
続いて,馬込大貴氏(駒澤大学医療健康科学部診療放射線技術科学科)が登壇し,「検査画像・医療情報を利用した患者の予後予測と機械/深層学習の適用」と題して講演した。馬込氏は,機械/深層学習による予後予測研究での治療の最適化について,前立腺がんのホルモン療法と再発確率のデータを示して解説した。さらに,馬込氏は,radiomics研究を進めることで医用画像の定量評価が可能になるとし,そのためには標準化が重要だとした。一方で,機械/深層学習については,解析内容がブラックボックスであり,臨床応用に向けては,この問題を解決する必要があるとまとめた。
次に,小林和馬氏(国立がん研究センター研究所がん分子修飾制御学分野)が,「放射線画像診断への機械/深層学習の応用と関連医療情報の活用」をテーマに講演した。小林氏は,国立がん研究センターとPreferred Networks,産業技術総合研究所で進めている「メディカルAI」プロジェクトについて,安全管理のための技術的・運用的対策を解説し,アノテーション付けといった実際のデータフローなどの研究手法を紹介した。また,講演のまとめとして,医用画像の機械/深層学習では,容易にデータセットを用意することが可能となったことで,今後はアノテーション付けやデータ収集が重要になると述べた。さらに,日本のAI研究開発が海外に後れを取っていることを指摘した。
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最後に,古川 浩氏(JIRAシニア・リサーチャ)が,「画像検査/診断分野での人工知能と法規制の関係」をテーマに,臨床研究法などでの個人情報の考え方,扱い方について解説したほか,医師法や薬機法におけるAI機器の位置づけ,市販後学習などの課題について取り上げた。
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すべての講演終了後には,JIRA副会長の佐藤公悦氏が閉会の挨拶を行い,盛況のうちに閉会となった。
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