クラリス・ジャパン,「FileMakerカンファレンス2019」で医療分野での活用事例を紹介
2019-11-18
FileMakerからClarisへ社名を変更してから
初めてのカンファレンスとなった。
FileMakerプラットフォームの総合イベントである「FileMakerカンファレンス2019」が,2019年11月6日(水)〜8日(金)の3日間,虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催された。今年8月に米国のFileMaker, Inc.はClaris international Inc.に社名を変更,日本法人も8月20日付けでクラリス・ジャパン(株)となった。同社は,社名変更と同時にワークフローの自動化技術を持つstamplay社を買収し,さまざまなクラウドサービスを統合したサービスを構築できる「Claris Connect」の提供を開始する。オープニングセッションでは,Claris international Inc.のCEOで日本法人の代表取締役社長も務めるブラッド・フライターグ氏が講演,ワークプレイス・イノベーション・プラットフォームとしてのFileMakerの優位性とClaris Connectによるスケーラブルなクラウド利用の拡大によって,これからのデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるための強力なツールになることをアピールした。
11月8日(金)には,日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)との共催によるメディカルトラックが設けられ,クラリス・ジャパンからのプレゼンテーションを含めて9つのセッションが行われた。メディカルトラックのスタートに先立ち,J-SUMMITS代表の山本康仁氏(都立広尾病院経営企画室長/小児科部長)が挨拶に立った。山本氏は,前日までのセッションで印象に残ったこととして,2009年のTEDカンファレンスでサイモン・シネックが紹介したリーダーシップ論「ゴールデンサークル」を紹介した。良いリーダーは行動を促すために“Why”から始める,つまり「なぜそれをするのか」を明確にわかっていることが重要で,そこからHow,Whatへと行動していくゴールデンサークル理論を説明した上で,山本氏はJ-SUMMITSならではの枠として,その先の“Why”を提案。自らも手を動かしてソリューションやアプリケーション(What)をつくった先に,新しい意味(Why)を見つけ,人を動かしてきたメンバーが集まったのがJ-SUMMITSであると述べ,今回のFileMakerカンファレンスにも多くの“Why”が詰まっているだろうと期待を示した。
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「M-2:画像診断報告書確認システムの作成と運用」では,高知県厚生農業協同組合連合会JA高知病院院長の都築英雄氏が登壇し,FileMakerプラットフォームで作成した「画像診断報告書確認システム」の構築経緯とシステム概要を紹介した。都築氏は,画像診断報告書の確認不足が生じる要因を考察し,主な原因として「患者説明時に報告書が未作成で,その後確認していない」「専門領域の読影に自信があり報告書を見ない」「確認が不十分」「目的部位以外の異常所見」などを挙げた。特に,未読やリスクのある画像診断報告書を共有できていない点が問題であることから,電子カルテから読影レポートをテキストファイルで抽出,FileMakerで共有するシステムを作成し,医師と医療安全室がダブルチェックする運用を2018年9月から開始した。システムには,医師別依頼患者の報告書一覧表示と確認/未確認の管理,悪性や転移などリスクのある報告書のアラート機能,過去の報告書との比較,ログ管理といった,同院で求める機能が実装された。稼働後,医師別に確認までの日数や確認にかけている時間を調査し,十分に確認するよう警告した結果,確認状況が改善していることが報告された。さらに,画像診断報告書が治療に結びついたかを確認できるような機能なども追加し,さらなる改善を図っていることが紹介された。
「M-3:FileMakerプラットフォームで実現する手術部位感染管理とJANIS参画」では,独立行政法人労働者健康安全機構中国労災病院小児科部長の小西央郎氏が登壇。厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)のうち,手術部位感染(SSI)部門サーベイランスへの参加に当たって,サーベイランスデータ提出のためにFileMakerプラットフォームで構築したツールについて紹介した。SSIサーベイランスでは,フォーマットに沿ったTab区切りテキストでの提出が求められており,入力支援ツールが配布されているものの,電子カルテ内のデータを利用することができず手入力が必要だった。そこで小西氏は,電子カルテデータをCSVで取り出してFileMakerテーブルに取り込み,データをできるだけオンラインで収集する仕組みを構築した。その後,電子カルテの更新に合わせて,電子カルテデータをODBC接続で直接参照するように改修した。また,テーブルが大きい場合はODBC接続では実行速度が遅くなることから,カスタム関数も作成した。小西氏は経緯と概要を説明した上で,術前・周術期情報,術後情報の収集やSSI情報作成について解説。さらに,JANISで集計・解析の上,公開されているデータを用いて,ベンチマーク分析を行った結果を紹介した。
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「M-9:FileMaker3省ガイドラインの適用評価について」では,10月25日に公開された“医療情報システム向けFileMaker利用セキュリティリファレンス(https://www.mki.co.jp/solution/medical_security.html
)”の概要やねらい,利用におけるポイントを中心に3名の演者が登壇した。セッションに先立ち,クラリス・ジャパン法人営業部の日比野暢氏が経緯を説明し,医療情報システムのクラウド利用に関する各種のリファレンスガイドが公開されているが,膨大な項目を効率良く使いやすいガイドにするためにFileMakerのカスタムapp(FMP12のファイル)としてリリースしたと述べた。その上で,経済産業省の報告書「DXレポート」で挙げられた“2025年の崖”に言及,レガシーシステムがもたらす経済損失は医療機関においても起こりうることであり,FileMakerやClaris Connectを利用して,崖っぷちに立つことなくシステム運用を進めるためにこのリファレンスを活用してほしいとコメントした。セッションでは最初に,「概要説明・リファレンスの紹介」として三井情報(株)の望月洋明氏がリファレンス作成に至る経緯と意義を概説した。続いて,FileMakerのカスタムappを作成した(株)ジェネコムの高岡幸生氏が「FileMakerの医療基幹利用におけるTips解説」を講演した。高岡氏は,リファレンスに添付されているユーザー認証,パスワード管理,アクセス記録の収集,バックアップ,代行入力の5つのTips(技術資料)のポイントを説明した。最後に,「医療機関におけるITガバナンスの観点から見た本リファレンスの評価について」と題してKPMGコンサルティング(株)の沼澤功太郎氏が講演。沼澤氏は,個人情報保護の観点からFileMakerによる医療情報システムの構築では,ユーザビリティとセキュリティの両面を考慮することが求められているとし,そのためのガイドとなるのが今回のリファレンスであると述べた。
最後に閉会の挨拶として,松波総合病院副院長(J-SUMMITS副代表)の草深裕光氏がメディカルトラックの1日を振り返って終了した。
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