日本医学放射線学会が,中高生を対象にした市民公開講座「画像診断って面白い!」を開催

2019-7-1


未来の放射線科医をめざす中高生が参加

未来の放射線科医をめざす中高生が参加

公益社団法人日本医学放射線学会は2019年6月29日(土),東京大学伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホール(東京都文京区)において,第79回日本医学放射線学会総会「レントゲンの日記念」市民公開講座「画像診断って面白い!〜CT・MRIから人工知能,仮想現実体験まで〜」を開催した。共催は文部科学省課題解決型高度医療人材育成プログラム「放射線健康リスク科学人材養成プログラム」(長崎大学,広島大学,福島県立医科大学)。この市民公開講座は中高生を対象としたもので,画像診断の面白さや仮想現実などの最新技術を体験する機会として設けられた。開会に当たって挨拶した同学会理事長の今井 裕氏は,画像診断でどのようなことができるか知る機会としてほしいと述べた上で,レントゲン博士のX線発見の経緯や放射線医学の位置づけなどを紹介した。

今井 裕 氏(日本医学放射線学会理事長)

今井 裕 氏
(日本医学放射線学会理事長)

   

 

この後,6名の演者による講演が行われた。まず,長崎大学原爆後障害医療研究所放射線生物・防護学教授の松田尚樹氏が,「放射線の生物学的影響とは?」と題して講演した。松田氏は,放射線がDNAに損傷を与えることや被ばくによる確定的影響,確率的影響の違いなどについて解説を行った。続く2番目の講演では,東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座の越野沙織氏が,「CTで人体がここまでわかる!」をテーマに,自身が高校時代に研究発表したイラストロジックを用いた次世代CTの開発について紹介した。越野氏は,この研究で,国際科学コンテストであるISEFに参加している。次いで,東海大学工学部医用生体工学科教授の高原太郎氏が登壇し,「MRIで人体がここまでわかる!」と題して講演した。高原氏は,MRIの仕組みやCTとの違い,画像を得るための原理などを解説した上で,自身が開発に携わったDWIBS法について画像を示して紹介した。

松田尚樹 氏(長崎大学)

松田尚樹 氏
(長崎大学)

越野沙織 氏(東京大学)

越野沙織 氏
(東京大学)

高原太郎 氏(東海大学)

高原太郎 氏
(東海大学)

 

休憩を挟んで行われた4番目の講演では,国立研究開発法人国立国際医療研究センター国府台病院放射線科診療科長の待鳥詔洋氏が登壇。「ビッグデータって何?」をテーマに講演した。待鳥氏は,ビッグデータについて,流通分野のPOSシステムを例に挙げて説明した上で,同学会が取り組む「Japan Safe Radiology」の取り組みや人工知能(AI)研究のための「画像診断ナショナルデータベース(Japan Medical Image Database:J-MID)」について解説した。次に,慶應義塾大学医学部放射線科(診断)の橋本正弘氏が「人工知能で何ができる?」と題して講演した。橋本氏は,自身が取り組んできたAI研究について解説。その上で,現在のディープラーニングなどのAI技術ができることとして,「見分ける」「見つける」「色分けする」「脚色する」「真似する」の5つを挙げて,医用画像における応用例を示した。最後の講演では,国際医療福祉大学三田病院放射線診断センター病院教授の吉岡直紀氏が「3次元モデル構築,仮想現実・拡張現実の世界」と題して,3Dプリンティングによる臓器の立体モデル構築方法や,ヘッドセットを用いた複合現実(MR)について紹介した。

講演後には,用意されたヘッドセットを使ったVR体験やホログラムの操作体験,3Dプリンティングによる臓器立体モデル展示などが行われた。また,講演者への進路相談などの個別質問を行う時間も用意され,未来の放射線科医をめざす中高生たちが熱心に勉強法などを聞いていた。なお,受講者には同学会より認定証が授与された。

すべてのプログラム終了後には,同学会副理事長の青木茂樹氏が挨拶を行った。青木氏は,多くの参加があり非常に好評だったので,またこのような企画を実施したいと述べた上で,受講者に向けてぜひ放射線科医をめざしてほしいとエールを送って閉会となった。

待鳥詔洋 氏(国立国際医療研究センター国府台病院)

待鳥詔洋 氏
(国立国際医療研究センター国府台病院)

橋本正弘 氏(慶應義塾大学)

橋本正弘 氏
(慶應義塾大学)

吉岡直紀 氏(国際医療福祉大学三田病院)

吉岡直紀 氏
(国際医療福祉大学三田病院)

     
青木茂樹 氏(日本医学放射線学会副理事長)

青木茂樹 氏
(日本医学放射線学会副理事長)

   

 

ホログラムの操作体験コーナー

ホログラムの操作体験コーナー

 

 

●問い合わせ先
第79回日本医学放射線学会総会
市民公開講座事務局
E-mail [email protected]


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