NECが個別化ネオアンチゲンワクチンの臨床試験を開始,最新AIを活用した創薬事業に本格参入へ
2019-5-28
個別化ネオアンチゲンワクチンの臨床試験を
共同で行うNECの藤川 修氏(右)と
Transgeneのエリック・ケメナー氏(左)
NECは,同社の最新人工知能(AI)技術群「NEC the WISE」を活用し,がんなどの先進的免疫治療法に特化した創薬事業に本格参入する。その第一弾として,パートナー企業であるフランスのTransgeneと共同で,HPV陰性頭頸部がんや再発卵巣がんを対象とした個別化ネオアンチゲンワクチンの臨床試験を,日本企業として初めて実施することを発表した。臨床試験は米国や英国,フランスで行い,いずれも2019年中に開始される予定。
ネオアンチゲンは,がん細胞の遺伝子変異に伴い新たに生まれたがん抗原。正常な細胞には発現せず,がん細胞のみに見られ,その多くは患者ごとに異なる。正常細胞とがん細胞のゲノム情報を比較・分析することでがん細胞特有の目印(がん抗原)を見つけ,それをターゲットとして免疫を刺激,誘導する個別化ネオアンチゲンワクチンの開発が世界的に進められている。
今回の臨床試験では,ゲノム情報の解析や対象とするネオアンチゲン候補の選定に当たり,NEC独自の“ネオアンチゲン予測システム”を活用する。NECが開発した機械学習技術“グラフベース関係性学習”や,専門家との協働により蓄積した実験データを基に,患者ごとに有望なネオアンチゲンを選定し,その結果に基づいて,Transgeneがワクチンを合成,投与する。なお,ネオアンチゲン予測システムの独自性が評価されたことで,NECはがん治療の向上をめざす国際コンソーシアムTESLA(Tumor neoantigEn SeLection Alliance)に日本の企業として初めて参画が認められている。
2019年5月27日(月)に大手町ファーストスクエアカンファレンス(東京都千代田区)で行われた記者会見では,NEC執行役員ビジネスイノベーションユニット担当の藤川 修氏が,「最新AIを活用した創薬事業への本格参入について」と題して,今回の臨床試験開始に至る経緯などを解説した。今後の目標として,2025年には,創薬事業において3000億円の事業価値創出をめざすとした。続いて,パートナー企業であるTransgeneのエグゼクティブバイスプレジデント・最高科学責任者のエリック・ケメナー氏が登壇,「プレシジョンメディシンとデジタルヘルスの時代をもたらすウイルスベクターを用いた免疫治療」と題して講演を行った。ケメナー氏は,NECとの協働ビジネスモデルについて,中長期的な連携により,ワクチンの適応拡大やグローバルな事業展開を図りたいと述べた。なお,日本での臨床試験の計画は未定となっている。
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