東京女子医科大学にスマート治療室「SCOT」のハイパーモデルが完成,臨床研究を開始
2019-4-5
東京女子医科大学に完成した
ハイパーモデル「Hyper SCOT」
東京女子医科大学は,「スマート治療室」のハイパーモデル「Hyper SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」が同大学病院に完成し,手術の効率性や安全性向上の検証を目的とした臨床研究を開始したことを発表した。スマート治療室は,IoTを活用して各種医療機器・設備を接続・連携させ,手術の精度や安全性の向上を図るプロジェクトで,同大学が国立研究開発法人日本医療開発研究機構(AMED)や信州大学,広島大学などの5大学,(株)デンソー,(株)日立製作所などの企業11社と共同開発を進めている。2016年にベーシックモデルが,2018年にスタンダードモデルがそれぞれ広島大学病院,信州大学医学部附属病院に設置され,今回,フラッグシップであるハイパーモデルが同大学病院第一病棟に完成した。
本モデルは,治療室用インターフェイス「OPeLiNK」を基盤に,日立社製の0.4TオープンMRI「APERTO Lucent」をはじめとした手術室のすべての機器を接続し,ロボティック手術台のプロトタイプや4K3D顕微鏡などを搭載している。OPeLiNKは,デンソーの産業用ミドルウエアORiN(Open Resource interface for the Network)を医用に転用したもので,通信規格やメーカーを問わず,各機器を接続・統合できる。Hyper SCOTでは,31社46機器が接続されている。OPeLiNKにより,各種医療情報を時系列の治療記録として収集・提供し,手術室外とも共有することで,治療の効率性や安全性の向上が期待される。また,術後の再現性が高まり,術中の判断の見える化が可能になるほか,世界への情報配信により,世界的な医療水準向上が期待される。
また,情報統合による手術の効率性・安全性向上の検証を目的に,2019年2月に,脳神経外科領域での臨床研究が開始された。さらに今後は,ロボティック手術台の実用化によるMRIへの患者自動搬送や術野位置コントロール機能,予後予測や術中の危険予測のアドバイスなどを迅速に行う臨床情報解析システム(Clinical Information Analyzer:C. I. A.)などを開発し,蓄積された臨床情報を高効率に利用する「AI Surgery」の実現をめざす。
2019年4月3日(水)に同大学(東京都新宿区)で行われた記者発表会では,同大学理事長の岩本絹子氏と病院長の田邉一成氏が挨拶に立ち,プロジェクトの同院における位置づけなどについて述べ,Hyper SCOTを中心に,一人でも多くの患者の治療にあたっていきたいと期待を示した。
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続いて,プロジェクトに参画した各大学・企業の代表者らが登壇し,今回完成したハイパーモデルについて紹介が行われた。東京女子医科大学先端生命医科学研究所教授の村垣善浩氏とデンソーメディカル事業室室長の奥田英樹氏が,ハイパーモデルやOPeLiNKの詳細を解説したほか,AMED産学連携部部長の竹上嗣郎氏は,平成31年度末にスタンダードモデルの事業化を進め,新規ロボット医療機器や精密誘導治療の新技術を導入したハイパーモデルも順次,事業化をめざしていきたいと今後の展望を述べた。また,日立製作所外科治療ソリューション本部本部長の中西 彰氏は,同大学で開始された臨床研究をはずみとして,海外へも販路を広げたいとの意気込みを示した。
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記者説明会終了後には見学会が行われ,Hyper SCOTが披露された。4K3D顕微鏡を用いた手術のデモンストレーションが行われたほか,術中MRI撮像時には,手術内に設置されたオープンMRI側に頭部を配置するように手術台が自動で転回し,適正な位置に移動した後,撮像後には,自動で撮像前と同じ位置に戻る様子が実演された。
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●問い合わせ先
日本医療研究開発機構 産学連携部医療機器研究課
TEL 03-6870-2213 FAX 03-6870-2242
E-mail:[email protected]
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