第38回医療情報学連合大会が開催
2018-12-10
「ユビキタス時代の医療ICTへの挑戦」がテーマ
第38回医療情報学連合大会(第19回日本医療情報学会学術大会)が2018年11月22日(木)〜25日(日)の4日間の日程で,福岡国際会議場・福岡サンパレス(福岡県福岡市)を会場に開催された。大会長は宇都由美子氏(鹿児島大学)が務め,大会テーマには「ユビキタス時代の医療ICTへの挑戦−医療保健チームの広がりと新たな機能分化−」が掲げられた。大会2日目の11月23日午前に行われた開会式で挨拶した宇都大会長は,“ユビキタス”という言葉を古いと思った人もいるかもしれないが,この言葉が使われ始めた2000年代前半は,スマートデバイスが社会に普及していることが想像できなかったと述べた。そして,ユビキタス時代の真っ只中にいる今こそ,私たちは医療ICTを見直す必要があると言及した。さらに,宇都大会長は,現在,チーム医療の重要性が高まっていると指摘した上で,これからのチーム医療ではICTの活用が求められていると,大会テーマに込めた思いを述べた。また,開会式の後には,日本医療情報学会の第1回学術論文賞表彰式が行われた。最優秀学術論文賞には,岩井 聡氏(東京大学)らの“Effects of Implementing a Tree Model of Diagnosis into a Bayesian Diagnostic Inference System”(Stud. Health Technol. Inform., 245, 882〜886, 2017.)が選出された。また,学術論文賞には,辻 真太朗氏(北海道大学)らの“Developing and Evaluating Radiotherapy Ordering System Applied JJ1017 Codes”(J. Med. Imaging Health Info., 7・1, 64〜72, 2017.)と,Ma Xiaojun氏(東京大学)らの“A Semi-Automatic Framework to Identify Abnormal States in EHR Narratives”(Stud. Health Technol. Inform.,245, 910〜914, 2017.)が選ばれた。表彰式では,学会長の大江和彦氏(東京大学大学院医学系研究科)から表彰状が授与された。
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開会式において,宇都大会長は,医療資源の有効活用には働き方改革が重要であり,医師の働き方が変わればほかの医療従事者にも影響を与えるとして,厚生労働省「医師の働き方改革検討会」委員,四病院団体協議会(四病協)「病院医師の働き方検討委員会」委員長を務める岡留健一郎氏(日本病院会副会長/済生会福岡医療福祉センター総長/済生会福岡総合病院名誉院長)に特別講演を依頼したと述べた。その岡留氏は,大会2日目の特別講演において,「医師の働き方改革検討会の現況−タスク・シフティング(業務の移管)の重要性−」をテーマに登壇した。座長は,熊本一朗氏(鹿児島大学)が務めた。岡留氏は,医師の業務負担を軽減するためのタスク・シフティングについて,厚生労働省検討会や四病協委員会での検討内容を解説。厚生労働省検討会が2018年3月にまとめた「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の後の状況について説明した。岡留氏は,これまでの議論について,医師の勤務時間を規制すると医療の供給量が減る可能性があるためタスク・シフティングにより負担軽減を図るべきであり,特に事務的な業務においてはタスク・シフティングが必要であるといった意見を紹介した。さらに,岡留氏は,今後タスク・シフティングを推進していくためには,移行可能な業務の抽出,具体的な業務移管方法や業務分担する医療従事者への教育システムの確立,医療安全や医療の質の低下を招かない仕組みが求められると述べた。
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今回の大会では,このほかにも,鼎談形式の大会長講演1題,学会長講演1題,教育講演1セッション,学会企画シンポジウム1セッション,大会企画10セッション,共同企画11セッション,公募シンポジウム9セッション,公募ワークショップ7セッションといった企画が用意された。このうち,2日目に行われた大会企画1では,松村泰志氏(大阪大学)と,石田 博氏(山口大学)が座長を務め,「電子カルテを臨床研究に利用する場合の課題」が行われた。このセッションは,日本医療情報学会課題別研究会「電子カルテの臨床研究利用研究会」の活動の一環として設けられた。最初に登壇した猪飼 宏氏(山口大学)が,National Clinical Database(NCD)の症例登録システムへの入力をSS-MIX標準ストレージなどのデータから自動で行うシステムの構築と運用について解説するなど,4名の演者が電子カルテといった医療情報システムのデータを臨床研究に活用するための取り組みを報告した。
同じく2日目に行われた大会企画2は「AMED理事長講演」として,末松 誠氏〔日本医療研究開発機構(AMED)理事長〕が,「AMEDのミッション:グローバルデータシェアリング」と題して,日本の医療研究において重要な役割を担うAMEDの活動を紹介した。座長は,大江氏が務めた。末松氏は,AMEDのミッションは,「1分1秒でも早く患者さんに医療研究開発の成果を届けること」だと説明。その実現のための戦略として,(1)データシェアリング,(2)医療研究開発に資する人材育成,(3)横断的医療研究開発のための基盤整備,3点を挙げた。そして,具体的な取り組みとして,遺伝子解析などによって希少疾患の確定診断を行うプロジェクトである「未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases:IRUD)」の成果などを報告した。
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また,2日目に行われた共同企画2「遠隔医療学会:大学病院の外来の一部は遠隔診療(オンライン診療)にすることを考える。」では,本多正幸氏(長崎大学)と近藤博史氏(鳥取大学)が座長を務め,5名の演者が登壇した。このうち,加藤浩晃氏(京都府立医科大学)は,オンライン診療の法整備や行政の施策について解説を行った。また,武藤真祐氏(医療法人社団鉄祐会)は,(株)インテグリティ・ヘルスケアのオンライン診療サービスである「YaDoc」を用いた心不全や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疾病管理事例などを紹介した。
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●問い合わせ先
第38回医療情報学連合大会大会事務局
鹿児島大学病院医療情報部
TEL 099-275-5176
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