キヤノンメディカルシステムズとして初めての「画論 25th The Best Image」を開催
2018-1-29
25回目となる「画論 25th The Best Image」を開催
キヤノンメディカルシステムズ(株)は,2018年1月27日(土),「画論 25th The Best Image」をキヤノン(株)本社(東京都大田区)において開催した。同社製品のユーザーから応募された臨床画像から,画像のクオリティだけでなく臨床的価値の高い“Best Image”を選定する場として年1回行われる画論は,旧・東芝メディカルシステムズ時代の1993年にスタートし25回目を迎えた。今回は,2018年1月4日にキヤノンメディカルシステムズと社名を改めてから初めての開催となることから,大田区下丸子にあるキヤノン本社の御手洗毅記念館内ホールをメイン会場として行われた。Best Imageの発表式にはキヤノン代表取締役会長 CEOの御手洗冨士夫氏も来場し挨拶を行うなど,改めて名実ともにキヤノングループの企業となったことを印象づけた。
当日は,CT,MR,超音波の3つのモダリティに分かれて上位入賞施設が応募画像の発表を行うディスカッション,最新画像技術についての講演会「Made for Lifeアワー」,入賞施設の中から最優秀賞などを表彰する画論 25th The Best Image発表式が行われた。今回の応募数は527件(CT 176件,MR 181件,超音波 170件),そのうち最終審査に進んだ57施設がディスカッションに出席した。
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Made for Lifeアワーと題した講演会では,1993年にスタートした画論の歴史を振り返るビデオに続いて,最初にキヤノンメディカルシステムズ研究開発センター長の立崎寿氏が「画像技術の取り組み」を講演した。立崎氏は最初に旧・東芝メディカルシステムズとして取り組んできた画像技術開発の歴史をCTを例に振り返り,広範囲,高速,高精細,そして低被ばく化をめざし,ハードウエアと画像再構成技術の進化を例に歴史を振り返った。CTの開発としては,より広く,より速く,より細かく,より低被ばくをコンセプトに64列からADCTへと発展し,大幅な空間分解能の向上と高速撮影を実現した。また,画像再構成技術としてはMUSCOT,TCOTからAIDR 3D,そしてFIRSTへと進化した。現在,AIDR 3Dは4307台,FIRSTは90台の搭載機が国内で稼働していることを紹介した。
次に“高分解能化”“動態診断”“機能診断”への画像技術の展開として,CT,超音波,MR,X線それぞれの領域の診断画像を提示して技術を紹介した。CTでは超高精細CT(Aquilion Precision)による冠動脈造影(高分解能化),超音波ではSMI(Superb Micro-vascular Imaging)指関節(高精細形態画像),MRではTraining scan less k-t SPEEDER(動態画像),X線ではColor Coded Circulation(機能画像)などの画像を提示し,臨床現場に貢献していると述べた。
最後に将来に向けた開発の取り組みを紹介した。画質の向上と定量化が鍵になるとして,超音波で組織の粘性を画像化する“Shear Wave Dispersion Imaging”,MRではディープラーニング(DL)を用いることで従来と同じ撮像時間で高画質化,高分解能化を実現する“Deep Learning Reconstruction(DLR)”,さらにX線領域ではキヤノングループと連携して開発中の血管造影で必要な情報のみを強調表示する“Informative Imaging”について説明した。また,ヘルスケアITでは,1月16日から発売した「Abierto VNA」「Abierto Cockpit」を紹介し,今後,さらにAIの活用を進め,診療における意思決定支援が可能なシステムに向けて開発を続けていきたいと述べた。
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続いて特別講演として,広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室教授の粟井和夫氏が「次世代イメージングへの期待」を講演した。座長は,東京大学大学院医学系研究科生体物理学専攻放射線医学講座放射線診断学分野教授の阿部修氏が務めた。
広島大学の放射線診断学研究室では,2012年からCTとMRについて旧・東芝メディカルシステムズとの共同研究をスタートし,2018年からはキヤノンメディカルシステムズと共同研究講座の設立を予定している。粟井氏は,これまでの研究成果を基に現在の最新技術と近未来に実現が期待される技術や手法について,CT,MR,超音波の各領域で概説し,最後にAIと画像診断の関わりについても言及した。
CT領域では,モデルベースの逐次近似再構成法(Model based iterative reconstruction:MBIR)からDeep learning reconstruction(DLR)へ,Dual Energy CT(DECT)からPhoton counting detector CT(PCDCT)へ,そして,広島大学でも2018年1月から稼働しているUltra-high resolution CT(Aquilion Precision)への期待を述べた。粟井氏は,MBIR(キヤノンメディカルシステムズではFIRST)の空間分解能,ノイズ特性のデータを示し,従来法に比べ大きく向上したとし,冠動脈のステントの描出,超低線量CTによる肺がん検診,急性期脳梗塞の検出などでの成果を研究結果をもとに概説した。さらに,現在研究を進めているDLを用いた画像再構成法(DLR)についても触れ,DLを用いることで信号のリライアビリティを改善し,MBIRに匹敵する画像が得られていることを紹介した。
MR領域では,現在研究開発を進めている技術として,唾液腺流の定量化を可能にする“Quantification of flow”,“Ultra-short TE sequence”を用いた撮像法,計算画像(computed DWI)の高精度化の取り組みを紹介し,次世代技術として“Synthetic MR imaging”への期待を述べた。
粟井氏は,最後に人工知能の画像診断へのかかわりについて,(1) 1人の患者の医療情報をAIによってインテグレーションしたデータ提供による疾患の診断や治療法の決定,(2) 画像など診療情報のビッグデータ解析による類似症例の抽出や,検査結果の統計学的解析による診療支援,(3) DLによる画質の改善(DLR)を挙げた。粟井氏は,DLRでは短時間収集で短時間演算,低線量撮影で高画質画像の生成が可能だが,その処理には多くのデータと高画質の教師画像が必要で,そのためにはFIRSTのような高品質のデータ収集法,再構成法の開発が不可欠であると強調した。
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講演会終了後に「画論 25th The Best Image 発表会」として,各部門の最優秀賞の発表と表彰式が行われた。今回の発表は,CT,MR,超音波の順番で,部門ごとに審査員が最優秀賞を発表,講評を述べたあと,キヤノンメディカルシステムズ代表取締役社長の瀧口登志夫氏から記念品が授与された(受賞施設は下記リストを参照)。
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すべての発表と表彰の終了後にキヤノンの御手洗会長が登壇し挨拶した。「今回初めて画論のディスカッションを拝聴し,患者の負担を軽減しさらなる高画質をめざす取り組みを目の当たりにして,改めて臨床現場の先生方の声が機器の進化を後押ししていることを実感した。今回の旧・東芝メディカルシステムズのキヤノングループ入りによって,創業当時からの宿願であった本格的な医療機器産業への参画という夢を実現することができた。両社はともに,イメージング技術を核としてきた共通点のほかに,キヤノンメディカルシステムズの“Made for Life”,キヤノンの“共生”という相通ずる理念を掲げている。今後はキヤノンメディカルシステムズがメディカル事業の総本山として,先端技術やノウハウ,経営リソースを最大限活用することで,医療現場の思いを集めて業界の先頭に立って医療に貢献していきたいと考えている」と述べた。最後に瀧口社長が挨拶に立ち,Aquilion ONEが2017年に創設された日本医療研究開発大賞の厚生労働大臣賞を受賞したことを紹介。「これは,より良い医療を追究したいという先生方の思いを,われわれが製品開発で応え,その製品を全国の臨床現場で患者さんのために役立てていただくというサイクルが評価されたもので,Made for Lifeの理念そのものだ。画論も同様に,ここで発表された臨床例や手技などの知見が普及し広く使われることで,さらにその価値が高まる。Made for Lifeの理念で生まれた知見を全国に広げていくことがわれわれに与えられた責任であり,その活動を進めていきたい」と述べた。
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【受賞施設】
〈CT部門〉
●1〜160列部門
【最優秀賞】
国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
「十二指腸癌」
【テクニカル賞】
岩手医科大学附属病院
「両側ICA病変」
【特別賞】
(新技術「CT Boost」の臨床応用)
藤田保健衛生大学病院
「上肢腫瘤と血管奇形」
【優秀賞】
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
「もやもや病」
医療法人沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院
「小型肺病変に対するVirtual Assisted Lung Mapping(VAL-MAP)」
●1〜160列(心血管)部門
【最優秀賞】
医療法人社団寿量会 熊本機能病院
「下肢静脈瘤」
【テクニカル賞】
医療法人愛仁会 亀田第一病院
「プレート固定後の下肢CTAに対するSEMARの有用性」
【優秀賞】
日本赤十字社 姫路赤十字病院
「胸郭出口症候群」
医療法人社団高邦会 福岡山王病院
「3D下肢CTVenography症例」
●Aquilion ONE部門
【最優秀賞】
独立行政法人 労働者健康安全機構 富山労災病院
「右膝蓋骨骨折」
【テクニカル賞】
独立行政法人 地域医療機能推進機構 JCHO九州病院
「右主気管支食道起始症(気管支肺前腸奇形:BPFM)」
【特別賞】
(インプレッシブ賞:複雑な形態を綺麗に抽出した)
NTT東日本札幌病院
「遊走脾」
【優秀賞】
半田市立半田病院
「舟状月状骨(SL)靭帯解離」
社会医療法人北九州病院 北九州総合病院
「サブトラクションを用いた肝細胞癌(HCC)に対するTACE後の再発評価」
●Aquilion ONE(心血管)部門
【最優秀賞】【テクニカル賞】
医療法人春林会 華岡青洲記念心臓血管クリニック
「心臓サルコイドーシス」
【テクニカル賞】
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「右肺底動脈大動脈起始症」
【優秀賞】
島根大学医学部附属病院
「完全大血管転位症における新生児冠動脈CTA」
医療法人社団清風会 五日市記念病院
「脊髄硬膜動静脈瘻」
岩手医科大学附属病院循環器医療センター
「大動脈弁狭窄症」
〈MR部門〉
●1.5テスラ以下MR部門
【最優秀賞】
松戸市立福祉医療センター東松戸病院
「月経随伴性気胸疑い follow up」
【最優秀技術賞】
かなざわ内科クリニック
「造影なしでもSPIO(のような画像)」
【Elan of the year】
医療法人為久会 札幌共立五輪橋病院
「門脈圧亢進症の血流改変術前後に行う門脈血行動態シネ評価」
【Clinical Update賞】
順天堂大学医学部附属浦安病院
「シェーグレン症候群」
【優秀賞】
せきど脳神経外科クリニック
「硬膜動静脈瘻の疑い 後頭動脈 s状静脈間の瘻」
金沢医科大学病院
「シェーグレン症候群」
金沢医科大学病院
「頭部皮下血管肉腫」
医療法人社団長尽会 長久保病院
「排尿における膀胱・尿道の状態観察(ボランティア)」
医療法人顕正会 蓮田病院
「左腎動脈瘤」
一般財団法人 倉敷成人病センター
「子宮筋腫」
公益財団法人小倉医療協会 三萩野病院
「Time-SLIPとASLが新生血管の評価に有用であった肩関節周囲炎の一例」
●3テスラMR部門
【最優秀賞】
杏林大学医学部付属病院
「高分解能頭蓋内血管壁imagingによる梗塞巣責任病巣の診断・評価」
【最優秀技術賞】
社会医療法人社団慈生会 等潤病院
「肝腫瘍〜同期撮像が困難な事例〜」
【Clinical Update賞】
日本郵政株式会社 東京逓信病院
「膝前十字靭帯再建術後」
【優秀賞】
社会医療法人社団三思会 東名厚木病院
「乳癌(仰臥位撮像)」
広島大学病院
「変形性膝関節症」
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院
「IgA腎症、腎細胞がん部分切除前評価」
〈超音波部門〉
●心臓部門
【最優秀賞】
医療法人社団健心会 みなみ野循環器病院
「左室二腔症に僧帽弁副組織を合併した一例」
【特別賞】
新潟県厚生農業協同組合連合会 佐渡総合病院
「左心室内血栓」
【優秀賞】
医療法人社団千栄会 高瀬クリニック
「左室下壁より発生したpapillary fibroelstoma」
医療法人社団健心会 みなみ野循環器病院
「心精査時に描出された食道腫瘍」
滋賀県立総合病院
「僧帽弁輪下左室瘤」
●血管部門
【最優秀賞】
東邦大学医療センター大橋病院
「外傷性仮性動脈瘤」
【優秀賞】
一般財団法人 太田綜合病院附属太田西ノ内病院
「外傷性動静脈瘻」
医療法人 北関東循環器病院
「急性動脈閉塞」
徳島大学病院
「右五指 動静脈奇形」
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「下大静脈腫瘍塞栓疑い」
●腹部部門
【最優秀賞】
岩手医科大学
「肝細胞癌」
【優秀賞】
公益社団法人函館市医師会 函館市医師会病院
「門脈腫瘍塞栓を合併したびまん型肝細胞癌」
一般財団法厚生会 仙台厚生病院
「大腸ポリープ」
日本赤十字社 成田赤十字病院
「胃癌」
医療法人大植会 葛城病院
「魚骨による虫垂穿孔」
●乳腺・甲状腺・表在部門
【最優秀賞】
東邦大学医療センター大森病院
「ソナゾイド造影超音波で病変性状と範囲が明瞭にとらえられた乳癌の1例」
【優秀賞】
医療法人徳洲会 岸和田徳洲会病院
「悪性黒色腫」
聖マリアンナ医科大学病院
「バセドウ病」
独立行政法人 筑後市立病院
「腱鞘巨細胞腫」
●運動器・リウマチ部門
【最優秀賞】
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院
「弾発現象を認めた手根管内脂肪腫の一例」
【優秀賞】
東京大学医学部附属病院
「超音波検査で原因不明の関節痛の原因を同定可能であった一例」
●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
「画論 ザ・ベストイメージ」事務局
TEL 03-6369-9400
メールアドレス:[email protected]
(2018年2月1日以降 [email protected])
https://jp.medical.canon/