「放射線腫瘍学の役割拡大」をテーマに,日本放射線腫瘍学会第30回学術大会が開催
2017-11-20
「放射線腫瘍学の役割拡大」がテーマ
公益社団法人日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の第30回学術大会が2017年11月17日(金)〜19日(日)の3日間,グランフロント大阪北館(大阪市北区)のコングレコンベンションセンターなどを会場に開催された。1988年2月に設立されたJASTROは2017年に30周年を迎えた。記念すべき年の学術大会は,2回目となる大阪府での開催となった。大会長は手島昭樹氏(大阪国際がんセンター 放射線腫瘍科主任部長/大阪大学名誉教授)が務めた。
今回の大会テーマは,「放射線腫瘍学の役割拡大:ビッグデータ時代における挑戦(Challenge to Expand the Role of Radiation Oncology in the Era of Big Data)」。初日に行われた開会式で挨拶に立った手島大会長は,JASTROが30周年を迎え学会として発展をしてきたが,一方で欧米諸国と比べて放射線治療の適用率が低いことを課題として挙げた。そして,放射線治療症例全国登録(JROD),National Clinical Database(NCD)などのビッグデータを活用したデータ分析やほかの診療科との連携を図り,放射線治療の適応の拡大を図ることが重要だと述べた。今大会は,この観点からプログラムが組まれ,特別企画1「適応拡大1 大腸癌フォーラム」,特別企画2「適応拡大2 胃癌フォーラム」が設けられた。また,ビッグデータに関しては,日米のデータベース事業をテーマにした特別企画2「NCDB/NCD/JROD戦略:日米がん情報系の現状と将来」も行われた。このほか,シンポジウムなどでは,放射線治療以外の領域の演者も交えて,他科との連携を強く意識した内容となった。一方で,放射線治療の役割拡大を図るためには,一般市民の啓発も重要との考えから,市民公開講座や特別講演も用意された。このような充実したプログラムとなったことについて,同じく開会式で挨拶したJASTRO理事長の茂松直之氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授)は,手島大会長ほか大会役員,事務局スタッフに感謝の意を伝えた。
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開会式後には,手島大会長の会長講演が行われた。座長は早川和重氏〔北里大学医学部放射線科学(放射線腫瘍学)教授〕が務めた。手島大会長は,「放射線腫瘍学の適応拡大への挑戦:戦略,戦術策定のためのJASTRO登録事業(構造,症例)」をテーマに,JASTROの症例登録事業について,Japanese National Cancer Database(JNCDB)やJRODなどのこれまでの取り組みを説明した。また,米国外科学会が構築するNational Cancer Database(NCDB)のデータを基にした診療の質評価について触れ,JRODデータでも質の評価が可能であり,放射線治療の適応拡大に向けて活用してほしいとまとめた。
17日には,特別基調講演が2題設けられた。特別基調講演1では,茂松氏が座長を務め,平野俊夫氏〔国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)理事長〕が「量子メス:次世代量子線がん治療装置〜がん死ゼロ健康長寿社会を目指して〜」をテーマに講演した。平野氏はまず,2016年に放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構の量子ビーム部門・核融合研究部門が統合し設立された量研の活動を説明。量研について,“エネルギー” “いのち” “新産業創成イノベーション”の3つを事業の柱としており,その中で“いのち”に関しては,健康長寿社会の実現に向け,標的アイソトープ,量子メス,量子イメージングの研究開発に取り組んでいると述べた。また,1993年に設置された重粒子線治療施設「HIMAC」を紹介。線量集中性に優れ,強い生物効果があり,がん免疫機能を温存し活性化する重粒子線治療は,がん死ゼロの健康長寿社会に貢献できると説明した。さらに,平野氏は,現在開発している量子メスについて詳述した。量子メスは,現状の重粒子線治療施設よりも,超伝導技術やレーザー加速技術などで小型化が図れることに加え,マルチイオン照射といった高性能化が可能になるとし,新産業創成の観点からも海外に輸出して日本の国際競争力を高められると強調した。平野氏は,講演の最後に,量研では膵臓がんの治療に戦略的に取り組むとし,重粒子線治療,標的アイソトープ,量子イメージングを組み合わせて,克服したいと述べた。
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このほか,3日間の期間中には,アンサーパッドやTwitterを活用したセッションも多く用意され,演者以外の参加者が意見を発信しやすいように工夫が凝らされた。なお,次回,第31回学術大会は,2018年10月11日(木)〜13日(土)の3日間,国立京都国際会館(京都市左京区)を会場に開催される。大会長は西村恭昌氏(近畿大学医学部放射線医学教室放射線腫瘍学部門教授)が務め,テーマには「時間と空間の最適化」が掲げられた。
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●企業展示
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●問い合わせ先
日本放射線腫瘍学会第30回学術大会
運営事務局
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E-mail [email protected]
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