中期経営計画「VISION2019」の考え方

富士フイルムホールディングス（株）は2017年8月30日（水），2017～2019年度の中期経営計画「VISION2019」を策定したと発表した。今回策定した中期経営計画では，中長期的に安定して成長する事業分野での地盤を強固にして，社会的な課題を解決することで持続的な成長を図り，より良い社会を実現するための変革をリードする企業をめざすとしている。

その具体的な業績としては，2019年度の売上高が2兆6000億円，営業利益が2300億円，株主帰属当期純利益1500億円と，いずれも過去最高の利益を掲げている。これにより，2020年度には株主資本利益率を8％にするとしている。

業績目標を達成するための事業展開については，イメージング，インフォメーション，ドキュメントのソリューションごとに，それぞれに属する事業を「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3ステージに分けた。収益力向上によりキャッシュの安定創出を図り，主要事業の成長を加速させて売り上げと利益の拡大をめざして，未来の柱となる事業を育成していく。また，3年間で，M&Aに5000億円投資するとしている。

ヘルスケア関連事業はインフォメーションのソリューションに位置づけられており2019年度目標として，売上高5000億円，営業利益400億円，営業利益率8％をめざす。このうち，「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3つに該当するメディカルシステム事業は，X線撮影装置，超音波診断装置，内視鏡などと，競争優位性の高い医療ITシステムの総合力を生かし，ソリューションを提案していく。加えて，新興国市場に適した製品・サービスを提供する。さらに，医用画像データなどを最大限に活用した医療ITビジネスを進める。

メディカルシステム事業，ライフサイエンス事業の施策

また，医薬品・バイオCDMO（Contract Development and Manufacturing Organization）事業と再生医療事業は，「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」に位置づけられる。医薬品・バイオCDMO事業では，生産能力を拡大して収益力を強化し，年率2けたの売り上げの成長を目標にしているほか，アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」などの研究開発，マイクロニードル，リポゾームなどの独自技術を生かした製剤化技術の実用化を行う。再生医療事業では，創薬支援事業におけるiPS細胞由来分化細胞のラインアップ拡充などで事業の拡大を進め，眼疾患，心疾患，神経疾患，がんなどを対象にiPS細胞を用いた再生医療製品を開発する。このほか，「さらなる成長の加速」に位置づけられるライフサイエンス事業は，「アスタリフト イン・フォーカス」のブランド強化などを図る。

医薬品・バイオCDMO事業，再生医療事業の施策

ヘルスケア関連事業は，富士フイルムグループにとっての成長の柱とされているが，この中でもメディカルシステムは，今回の中期経営計画において重要な位置にあり，5000億円の売上高目標のうち7割程度を占め，営業利益率20％以上をめざしている。
発表当日は，同社の東京ミッドタウン本社（東京都港区）において記者説明会が行われ，代表取締役会長・CEOの古森重隆氏，代表取締役社長・COOの助野健児氏，取締役・執行役員の吉沢　勝氏，執行役員の稲永滋信氏，富士フイルム（株）執行役員の伴　寿一氏が出席した。古森氏が「富士フイルムが目指す姿」と題して挨拶したほか，助野氏が，計画の具体的な内容を説明。伴氏が，医薬品・再生医療事業の取り組みについて解説した。記者説明会の中で古森氏は，今回の中期経営計画について，富士フイルムグループの構造改革を終え結果が出始めた中で策定しており充実感があると述べ，目標達成に意欲を見せた。

古森重隆 氏 （代表取締役会長・CEO）	助野健児 氏 （代表取締役社長・COO）	吉沢　勝 氏 （取締役・執行役員）
稲永滋信 氏 （執行役員）	伴　寿一 氏 （富士フイルム執行役員）