JSMRM 2016/第44回日本磁気共鳴医学会大会が開催
2016-9-12
1997年以来,2回目の会場となった大宮ソニックシティ
JSMRM 2016/第44回日本磁気共鳴医学会大会が2016年9月9日(金)〜11日(日)の3日間の日程で,大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)を会場に開催された。大会長は新津 守氏(埼玉医科大学)が務め,テーマには“MRI Now and Beyond”が掲げられた。このテーマには,MRIの現状を把握して課題を検討し,今ある技術を近未来にどのように展開していくか,そして未来に向けた“Seeding”を展望する場とするという,新津大会長の思いが込められている。
国内学会の国際化が進む中,日本磁気共鳴医学会も同様に国際化を進めており,今回の大会は,公式名称もJSMRM 2016とした。これに伴い,抄録・スライド・ポスター,一部の口演を英語としたほか,海外からも一般演題を募集した。また,従来,木曜日からの3日間だった会期を金曜日〜日曜日と1日ずらすことで,参加しやすいようにした(主催者集計で約1900名が参加)。
開会の直前に,元・埼玉医科大学放射線科教授で,2005年の第33回大会長を務めた平敷淳子氏が急逝した。初日9日のシンポジウム1「関節MRIのすべて」に先立って登壇した新津大会長は,平敷氏の訃報を伝え,その功績をたたえた。そして,会場の参加者全員で黙祷が捧げられた。
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初日午前には,第2会場において,社会ニュースでも話題になった,fMRIのデータ解析の問題をテーマにした緊急シンポジウム「クラスターレベルでの統計的推論の注意点~fMRIデータ統計解析にまつわる最近の論争をめぐって~」が行われた。座長を小畠隆行氏(放射線医学総合研究所)が務め,まず,八幡憲明氏(放射線医学総合研究所)が登壇。「fMRIソフトウェアに『バグ』が見つかったというのは本当か?」と題して発表した。八幡氏は,ソフトウエアにバグがあったのは事実であるが,問題の本質はクラスターレベル推測における空間的自己相関やスムーズさに関する過程が成立していなかったことが問題であると指摘。報道されている直近1年間の研究だけに間違いがあったわけではなく,誤りのあった論文も当初の4万から3500に訂正されていると述べた。また,川口 淳氏(佐賀大学)は,「偽陽性70%はなぜ出たのか~統計的クラスター推論の解説~」をテーマに講演し,Eklundらの“Cluster failure ; Why fMRI inferences for spatial extent have inflated false-positive rates”において指摘された70%という数字は,設定を正しくしていなかったためであるとの見方を示した。
この緊急シンポジウムに続いて,第2会場では,シンポジウム2「前立腺MRI:これからの前立腺癌診療のために」が開かれた。楫 靖氏(獨協医科大学)と後閑武彦氏(昭和大学)が座長を務め,新本 弘氏(防衛医科大学校)が前立腺がんの診断における拡散強調画像,片平和博氏(熊本中央病院)がPSA検査とMRI検査の位置づけについて発表した。また,髙橋 哲氏(神戸大学)は,前立腺がんのMRIの撮像や診断法の標準化を図る“Prostate Imaging Reporting and Data System(PI-RADS)”のversion2の解説を行った。さらに,中西克之氏(大阪府立成人病センター)は,「全身MRIによる転移診断」と題して、症例画像を交えて診断法などを説明した。
初日午後は,第1会場で,撮像法・検査法も優れたテクニックやコツが発表される場として前回大会で初めて設けられ,多くの参加者を集めたシンポジウム「匠の技」が今回も行われた。シンポジウム3「匠の技(1) MRS・fMRIと心臓MRIを磨く匠の技」と題し,豊嶋英仁氏(秋田県立脳血管研究センター)と北川 久氏(東京慈恵会医科大学附属第三病院)が座長を務め,テーマごとにノウハウが披露された。久保 均氏(福島県立医科大学)はMRSについて,その原理から撮像時の注意点までを解説。2番目の発表では,島田育廣氏(脳活動イメージングセンタ)がfMRIの撮像におけるパラメータ設定を説明した。この後,心臓MRIに関し,吉田学誉氏(東京警察病院)が遅延造影MRIを福澤 圭氏(虎の門病院)が3T装置でのMRAについて,撮像法の工夫などを紹介した。なお,最終日の11日には,シンポジウム10「匠の技(2) 乳腺MRI撮像と拡散強調画像を磨く匠の技」も行われた。
この後,第1会場では,高原太郎氏(東海大学)と堀 正明氏(順天堂大学)が座長を務め,シンポジウム4「Synthetic MR imaging の現状と展望」が設けられた。1回の撮像で複数のコントラスト画像を得る技術として注目されているSynthetic MRIをテーマにしたこのシンポジウムでは,まず,萩原彰文氏(順天堂大学)がSynthetic MRIの概要を説明。その上で,Synthetic MRIを開発したMarcel Warntjes氏(Synthetic MRI)が原理などを解説した。また,藤原広和氏(慶應義塾大学)が頭部,高原氏が頭部以外におけるSynthetic MRIの臨床応用について症例画像を提示して発表を行った。
2日目の10日午前中には,第1会場において,市川智章氏(埼玉医科大学国際医療センター)と上田和彦氏(がん研究会有明病院)を座長に,シンポジウム6「肝腫瘤のMRI:現状と展望」が開かれた。このシンポジウムでは,原留弘樹氏(日本大学)が肝腺腫,森阪裕之氏(埼玉医科大学国際医療センター)が混合型肝がんと細胆管細胞癌,米田憲秀氏が肝細胞性過形成結節について解説したほか,Sukru Mehmet Erturk氏(Adiyaman University)が“Malignant lesions of the liver and their masquerades”をテーマに発表した。
また,午後からは第2会場において,英語によるシンポジウム8“MR elastography, Now and Beyond”,シンポジウム9“MR Angiography and Techniques: Now and Beyond”が設けられた。このうち, MRエラストグラフィをテーマにしたシンポジウム8では,本杉宇太郎氏(山梨大学)と菅 幹生氏(千葉大学)が座長を務めた。まず,若山哲也氏(GEヘルスケア・ジャパン)がMRエラストグラフィの原理を説明し,その後,吉満研吾氏(福岡大学)と市川新太郎氏(山梨大学)が肝臓での使用経験を報告した。さらに,Richard L. Ehman氏(Mayo Clinic)が“Future direction”をテーマに登壇し,脳腫瘍など肝臓以外の部位への適応について解説した。
このほか,前回から毎年開催となった韓国のKSMRMと共催シンポジウム(KSMRM-JSMRM Joint Session)が2セッション用意された。2日目の午後には第3会場で,“Basic Sciences”が行われ,Chang-Beom Ahn氏(Kwangwoon University)と黒田 輝氏(東海大学)が座長を務め,日韓それぞれ3名の研究者が発表した。このシンポジウムに先立ち,KSMRM会長のYongmin Chang氏(Kwangwoon University)が登壇し挨拶した。
なお,次回の大会は,2017年9月14日(木)〜16日(土)の日程で,栃木県総合文化センター・宇都宮東武ホテルグランデ(栃木県宇都宮市)を会場に開催される予定である。大会長は瀬尾芳輝氏(獨協医科大学)が務め,テーマには「来た,見た,わかった。MR!」に決まった。
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●機器展示出展企業(五十音順)
AZE,アミン,エルイシステムズ,杏林システマック,ザイオソフト,産業科学,GEヘルスケア・ジャパン,シーメンスヘルスケア,スター・プロダクト,住商ファーマインターナショナル,太陽日酸,東芝メディカルシステムズ,東洋メディック,トーレック,ナモト貿易,根本杏林堂,バイテックグロールエレクトロニクス,日立製作所,PSP,フィジオテック,フィリップスエレクトロニクスジャパン,フジデノロ,メディテックファーイースト
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●問い合わせ先
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