医療放射線防護連絡協議会が第26回「高橋信次記念講演・古賀佑彦記念シンポジウム」を開催
テーマは「放射線治療における医療放射線防護*放射線と生きる*」
2015-12-16
会場風景
医療放射線防護連絡協議会は,2015年12月11日(金),国際交流研究会館国際会議場(国立がん研究センター内:東京都中央区)において,第26回「高橋信次記念講演・古賀佑彦記念シンポジウム」を開催した。同講演会は,CTの原理となるX線回転撮影法を開発し,日本の放射線防護の草分け的存在である高橋信次氏(1912〜85年)の名前を冠し,1990年より毎年開催されている。2010年からは,高橋氏に師事し,放射線防護において国内外で大きな業績を残した同協議会前会長の古賀佑彦氏の名前を冠したシンポジウムも同時開催されている。26回目となる今回は,「放射線治療における医療放射線防護*放射線と生きる*」をテーマに,教育講演1題,高橋信次記念講演1題,古賀佑彦記念シンポジウムが行われ,最後に参加者を交えた総合討論が行われた。
はじめに,医療放射線防護連絡協議会会長の佐々木康人氏が開会の挨拶に立ち,本会にて,わが国における放射線治療の歴史,現状,実践,そしてその防護管理について議論・検討していきたいと語った。
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教育講演では,慶應義塾大学医学部の茂松直之氏が座長を務め,東京女子医科大学放射線腫瘍学講座の唐澤久美子氏が「放射線治療における医療放射線防護とその課題」と題し,臨床での放射線治療における防護に関する実務,品質保証,業務組織などについて講演した。唐澤氏は,自身が専門としている重粒子線治療や物理学的側面の話題も交えながら,昨今の放射線治療についての所感や放射線治療業務組織の確立の必要性などを語り,放射線治療における医療放射線防護について,より良い治療体制と医療安全を築いていく体制を整えるべきだと訴えた。
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高橋信次記念講演は,佐々木氏が座長を務め,日本アイソトープ協会常務理事の山下 孝氏が登壇した。山下氏は「放射線治療と歩んで*放射線と生きる*」として,自身の40年以上にわたる放射線治療医としての経験を踏まえて,放射線治療の歴史と進歩について語った。山下氏は,放射線治療を施行された乳がん患者が術後,経過観察22年目に多発骨転移を発症した症例などを供覧し,放射線治療の効果・副作用は長く続くため,根治治療した患者を最後までみなくては放射線治療医として何も学べないと述べた。また,放射線治療が始まった頃から携わってきたさまざま治療法や,現在手がけている2015年10月にFDA510k認可を取得した,がんの超早期局在診断に対応した高精度X線治療システム(放射線治療装置)「CygneX I System」(アキュセラ社製)など,多岐にわたる話題を提供し会場を盛り上げた。
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午後は古賀佑彦記念シンポジウムが行われ,「放射線治療における医療放射線防護を考える」をテーマに4名のシンポジストが講演を行った。座長は,医療放射線防護連絡協議会監事の田中良明氏と同協議会総務理事の菊地 透氏が務めた。
まず,国立がん研究センター中央病院放射線治療科の伊丹 純氏が,「放射線治療医の立場から*放射線治療における有害事象,組織障害と2次がん*」について講演した。伊丹氏は放射線治療により起こった重篤な組織障害の症例を供覧し,線量を上げると組織障害が起こる可能性が上がることを十分に理解した上で治療を行っていくことが重要であると述べた。
埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科の熊崎 祐氏は,「医学物理士の立場から*線量管理と放射線安全*」と題し,放射線治療計画の最適化と医療安全管理体制の構築の必要性を語った。同センターで行っている品質および安全管理のプログラムやPDCAサイクルなどの医療安全体制を紹介し,医学物理士は先導的に医療の質の向上と患者安全に貢献するべきだとした。
名古屋大学大学院医学系研究科の小口 宏氏は,「診療放射線技師の立場から*患者セットアップ技術を考える*」として,患者の医療放射線防護の最適化という観点から患者のセットアップについて講演した。小口氏は,画像誘導放射線治療(IGRT)により正確な照射が可能になった一方,被ばくの増加が課題であるとし,IGRTの線量低減に向けた運用として,患者固定の再現性やセットアップ精度の向上により無用な撮影を減らし,施設内で最適化されたIGRTプロトコールを作成した上で実施することが大切だと説明した。
放射線医学総合研究所(放医研)重粒子線医科学センター病院の三上恵子氏が,「看護師の立場から*放医研の経験を踏まえて*」と題し,放医研の看護の現状について語った。三上氏は,重粒子線治療や密封小線源治療,治療前後など,さまざまな場面において求められる看護師の役割について述べるとともに,看護師自身が放射線防護の知識を得ること,得られる機会をつくることの必要性を訴えた。
最後に,演者・シンポジストが登壇し,菊地氏の進行の下,「放射線治療から学ぶ医療放射線防護の課題と展望」をテーマに総合討論が行われた。討論の前には,埼玉医科大学総合医療センター放射線科の本田憲業氏をはじめとする指定発言があった。本田氏は,ラジオアイソトープ(RI)内用療法における放射線防護について,国内では本法に対する法的規制に準拠した施行基準が準備されており,安全に実施しうる環境が整っていることを強調した。また,核医学での新しい展開として,同じ薬剤を診断用の核種で標識して診断し,治療用の核種で標識して治療する「Theragnostics」について触れ,標的を薬剤と患者の相互作用で選ぶという点でとてもユニークな試みではないかと評した。続いて,エレクタ(株),東芝メディカルシステムズ(株),住友重機械工業(株),(株)千代田テクノルが,各社のこれまでの放射線治療におけるかかわりと今後の展開について報告した。総合討論では,放射線治療に起因する障害や副作用とどう付き合うか,放射線治療にかかわる医療放射線防護についてどのように教育していけばよいのかなど,参加者を交えて活発な議論が交わされた。
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なお,2016年2月25日(木)には,首都大学東京(東京都荒川区)にて「歯科領域の医療放射線の利用と防護」をテーマに,第37回「医療放射線の安全利用」フォーラムが開催される予定となっている。
●問い合わせ先
医療放射線防護連絡協議会 (日本アイソトープ協会内)
TEL 03-5978-6433(月・水・金のみ)
FAX 03-5978-6434
Email [email protected]
http://www.fujita-hu.ac.jp/~ssuzuki/bougo/bougo_index.html