医療介護向けSNSの活用を紹介する
「メディカルケアステーションサミット2014」開催
2014-2-17
医療介護向けSNSのパートナー企業も参加
ソフトバンクテレコム(株),(株)日本エンブレース,JRCエンジニアリング(株)の3社は,医療,介護向けのソーシャルネットワークサービス(SNS)である「メディカルケアステーション」を中心に,予防・医療・福祉が連携した地域包括ケアシステムの中でのICTの役割を考えるイベント「メディカルケアステーションサミット2014」を,2月12日(水)に東京都中央区の内田洋行本社ユビキタス協創広場CANVASで開催した。「メディカルケアステーション(MCS)」は,3社が2013年7月に開始した完全非公開型の医療・介護向けのSNSで,在宅医療・介護の場面で主治医や看護師,介護士,薬剤師などが患者を中心に“タイムライン”で情報の発信と共有が行えるシステム。
第1部として,MCSの概要やユーザーからの報告などの講演,第2部ではMCSと連携,協業する企業の医療アプリケーションやソリューションの展示とプレゼンテーションという構成で行われた。講演は,最初にソフトバンクテレコムから「ご挨拶・ヘルスケアビジネスへの取り組み」として,ヘルスケアビジネス推進室の古屋初男室長と小林広明氏が登壇して,ヘルスケア領域の事業展開とヘルスケアSNSであるMCSのコンセプトについて説明した。ソフトバンクグループでは孫正義社長の号令のもと,2010年から医療・ヘルスケアICTサービスに積極的に取り組んでおり,サービス付き高齢者向け住宅用にケアコムと連携した“ナースコール連携サービス”や,GEヘルスケアジャパンとの医療画像データホスティングサービス「医知の蔵」,遠隔病理診断ネットワークシステム,ソフトバンクモバイルの“fitbit”による健康管理サービスなどさまざまな事業を提供している。古屋氏はヘルスケアビジネスの方向性について,「ソフトバンクは“情報革命で人々を幸せに”というコンセプトで事業を展開しているが,ICT領域の豊富な経験と実績をもとにヘルスケア領域でもお役に立ちたいと考えている」と述べた。
その中のひとつの事業が2013年7月からスタートした医療介護向けSNSのMCSで,在宅医療や地域包括ケアにおけるモバイル端末の利用,クラウドによる多職種連携,SNSを活用した患者や医療従事者の満足度向上をめざすシステムである。小林氏は,MCSの事業展開について「ソフトバンクがオープンなプラットフォームを提供し,さまざまなパートナーに参加していただく水平協業モデルで展開する。医療・介護のICTの活性化を実現できるよう参加企業を支援していきたい」とソフトバンクテレコムとしての取り組みを語った。
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続いて,日本エンブレース代表取締役社長の伊東 学氏が「MCSのサービス紹介と今後の開発ロードマップ」について説明した。伊東氏は,コミュニケーション手段やデバイスの進化に比べ,変化が遅い医療介護システムに対してIT活用の方法のひとつがMCSであり,患者を中心にした多職種間の情報連携を簡単に即座に実現できることが特長だと述べた。「ソーシャル,クラウド,モバイルの技術を統合して医療・介護専用のSNSとして構築した。開発のポリシーとして,表面はあくまでシンプルに,複雑な仕組みはバックグラウンドに回した。LINEやfacebookのような“ゆるい連携”が可能なシステムでありながら,ゼロベースで構築することで招待制で完全非公開とし医療・介護に必要なセキュリティを確保している。タイムラインを見る,書き込む(つぶやく)という2つの行為だけですぐに使うことができ,これまでITへの敷居が高かった方を含めて情報共有を可能にする」(伊東氏)。MCSの導入は,豊島区医師会をはじめ武蔵野市や西東京市エリアなど,多くの地域で草の根的に広がっているほか,県域の医療介護連携ネットワークとしても3県で導入プロジェクトが進行中とのことだ。また,今後の開発ロードマップとしては,2月4日に患者アーカイブ機能,連携リクエスト機能のリリースに続き,パートナーと協力したアプリケーションの投入,あらゆる医療介護活動のソーシャル化,医師会・自治体向けパッケージの提供などを予定している。伊東氏は,「MCSは,診療やケアの質の向上や,さらには患者や家族の満足度の向上につながり,それが医療者のやりがい,モチベーションアップにつながるような仕組みとして発展していきたい」と締めくくった。
特別講演は,東京都豊島区でMCSを活用している土屋医院院長の土屋淳郎氏による「SNSによる多職種連携の実践」。土屋氏は,MCSの概要と特長を解説し,多職種連携の実際として,在宅の難病患者の医療スタッフによる情報共有,そこに患者自身が参加した例,主治医以外に他科医師が参加して連携したケースについて紹介した。実際に利用したメリットとして,情報のタイムラグが解消したことで家族の不安が減少したこと,患者参加型では医療者と患者の距離が近くなり医療連携がより充実したこと,他科医師連携では在宅であっても専門的な医療を容易に情報共有して実現できたことなどを挙げた。土屋氏は,MCSと連携して利用しているアプリケーションとして,入力支援のための手書き入力「医療辞書版mazec」(MetaMoji)と音声入力の「AmiVoice」(アドバンスト・メディア),今後の導入予定としてクラウド型電子カルテ,ORCAとの連携機能を紹介した。土屋氏は,MCSの口コミ的連携を核として,そこにさまざまな医療・介護のシステムを連携させることで,より広範な“横の連携”を構築することが可能であり,次の段階として指示書や報告書などの文書系情報,さらに診療情報と発展させることで,“縦の連携”にもボトムアップができるとした。さらに,これを1人の患者の生涯の“タイムライン”としてとらえることで,予防から医療,介護,福祉,在宅,終末期からグリーフケアまで,連続したシステムとして,“未来への連携”が可能になるのではと期待を述べた。
休憩を挟んで,金子稚子さんによる招待講演「死ぬことと,生きることは同じ〜夫・金子哲雄の闘病と死に併走して〜」が行われた。流通ジャーナリストとして知られ,2012年10月に肺カルチノイドで亡くなった金子哲雄氏の最期を支えた医療環境やICTについて講演した。続いて,今回のサミットの協力会社で会場ともなった内田洋行が会社の概要と医療・福祉分野での事業を紹介し,最後に日本エンブレースからMCS公式アプリパートナープログラムの説明が行われた。
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第2部は,会場を地下1階の展示スペースに移し,「パートナーソリューション展示/プレゼンテーション」が行われた。MCSは,共通API(Application Programming Interface)をパートナー企業に公開することで,電子カルテ,レセプトコンピュータ,PACSから入力支援用のアプリケーションまで,参加各社が連携をサポートする機能やソリューションを提供することが可能になっている。会場でプレゼンテーションを行ったのは,1)リンク(株)調剤薬局システム「ランシステム薬局版」,2)サンシステム(株)訪問歯科システム「SunnyーLOSA×ランシステム」,3)(株)メディアコンテンツファクトリー医療支援システム「メディタッチ」,4)(株)MetaMojiユーティリティ「Medical 7notes Pad+WC」,5)(株)アドバンスト・メディア ユーティリティ(音声入力)「AmiVoice for MCS」,6)メディカルドメイン(株) 医療支援システム「WOLF」「ERIS」,7)(株)両毛システムズ 調剤薬局システム「anysquare polaris」,8)JRCエンジニアリング(株)「ORCA サポート事業」。
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●問い合わせ先
メディカルケアステーション運営事務局
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