第6回 3D PACS研究会,乳腺をテーマにモニタの品質管理,トモシンセシス,造影MRIなどマンモ領域の最新の話題を議論
2013-12-25
同時開催の協賛企業による
機器展示の様子
第6回の3D PACS研究会が,2013年12月22日(日)に,東京都品川区のキヤノンマーケティングジャパン品川本社ホール Sで開催された。当番世話人は,滋賀医科大学医学部附属病院の牛尾哲敏氏。主催は3D PACS研究会(代表世話人:国立病院機構仙台医療センター・立石敏樹)で,キヤノンマーケティングジャパンとエーザイの共催となっている。今回のテーマは“乳腺”で,開会にあたって挨拶した牛尾氏は,「デジタルマンモグラフィが広がる中で,新しい装置や臨床応用,読影環境から精度管理まで取り上げた。企業展示を含めて総合的に乳腺の画像診断の現状を理解するきっかけにしてほしい」と述べた。
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プログラムは,エーザイモーニングセミナー「MR造影剤関連」でスタート。エーザイ画像診断領域室プロハンスプロダクトマネージャーの久本圭史郞氏が,日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン2013などで推奨されている乳腺の造影MRIの現状を紹介し,NSF(腎性全身性線維症)や授乳時などリスクへの対応や体重に応じた投与量で適切な容量製剤を選択することで廃棄などの無駄が省けることなどを説明した。続いて午前最初のセッションとして,国立病院機構仙台医療センターの立石敏樹氏と名古屋大学の津坂昌利氏を座長に,シンポジウム「乳房画像診断に用いる画像表示装置の特性と管理」が行われた。シンポジウムでは,最初に津坂氏がデジタルマンモグラフィに必要とされる画像表示装置(モニタ)の要件やその品質管理の必要性や方法について概説し,続いて企業からマンモ読影ビューワ,管理ツールに関するプレゼンテーションを行った。津坂氏は,マンモ読影用のモニタとしては5M以上の解像度が求められ,また経年劣化を考えた定期的な品質チェックが必要となるとして,測定ツールの紹介やテストパターンの読み方,DICOM GSDFに基づいたキャリブレーションの方法まで具体的に解説した。企業からのプレゼンテーションでは,マンモグラフィの読影ビューワの紹介として,クライムメディカルシステムズ「mammary」,フィリップスエレクトロニクスジャパン「IDS7/mx」,ジェイマックシステム「XTREK MAMMO」の各製品について特長とデジタルマンモグラフィ読影を支援する機能を中心に紹介された。管理ツールとしては,放射線機器管理(保守点検)のソリューションについてメディカルクリエイトが発表した。
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午前のもう1つのプログラムとして,済生会川口総合病院の富田博信氏を座長として,2題の基礎講演が行われた。基礎講演1は,奥村健一郎氏(千葉大学医学部付属病院)による「デジタルマンモグラフィの品質管理とその評価〜精度管理の重要性」。奥村氏は,乳腺X線撮影(MMG)では何を目的として撮影され,そのためにどんな装置やシステムが必要かを考えることが必要だとして,デジタルマンモグラフィに求められる環境を概説した。撮影装置を含めたデジタルマンモグラフィの精度管理・品質管理の進め方について,日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構,旧精中委)の「デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル」をもとに解説し,撮影装置の基本的なメンテナンスや画像の歪み,ラグ効果(加算ラグ・乗算ラグ),撮影画像のダイナミックレンジ,CNRの評価のポイントなどについて説明した。基礎講演2では,国立がん研究センター中央病院放射線診断科の五味志穂氏が「デジタルマンモグラフィの臨床」を講演した。五味氏は,デジタルマンモグラフィに至る技術的な進歩や同センターでのデジタルブレストトモシンセシス(DBT)の現状について紹介した。国立がん研究センターでは,マンモグラフィに関してMammomat Inspiration(シーメンス)と,読影環境としてsyngo MammoReport(2D),syngo PLAZA(トモシンセシス),syngo.via(マルチモダリティ)の構成で診療を行っている。五味氏は,デジタルマンモグラフィのこれまでの展開と現状の読影環境の利点と課題を総括して紹介し,今後についてマンモグラフィは大きい画像サイズや高精細モニタの必要性などで専用の環境が要求されてきたが,トモシンセシスやマルチモダリティの3Dデータの活用など,すべての画像情報を統合した読影が可能なPACS環境が必要だと述べた。
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ランチョンセミナーでは,キヤノンマーケティングが扱う乳腺診断関連商品として,キヤノンライフケアソリューションズ「MicroDose mammography SI」,テラリコン「Aquarius iNtuition REVIEW(iREVIEW)」,トーレック「乳腺組織エックス線画像表示装置MB-1024DR」について,各社から製品の概要を紹介した。
午後のプログラムは,新潟大学医歯学総合病院の金沢勉氏を座長として,「マンモ3Dの話題」のセッションでスタートした。最初に「CT:センチネル」と題して,国立病院機構災害医療センターの武田聡司氏がCTによるCT Lymphography(CTLG)の取り組みと評価について講演した。続いて,北福島医療センターの丹治一氏が「MR:マンモ撮像」として,乳房MRIの3D撮像の現状とイメージフュージョンやパラメトリックイメージングなどの診断ツールの活用を紹介した。
最後のセッションは,特別講演「デジタル時代における乳腺診断の基礎知識」。滋賀医科大学医学部附属病院の牛尾哲敏氏を座長として,国立がん研究センター中央病院放射線診断科の内山菜智子氏がデジタルマンモグラフィの読影に必要な知識について,ハード,モダリティ,画像表示技術から,CADの現状,トモシンセシスやMRIの臨床まで幅広く紹介した。内山氏は,トモシンセシスについて,乳腺の重なりがわかることで腫瘤のコントラストが明確になり病変を見つけやすくなることをメリットして挙げ,一方で画像のデータ量が増え読影に時間がかかることを課題とした。トモシンセシスが読影のフローの中に組み込まれたことで,マンモグラフィの読影ではトモ画像と2Dとの同時表示や広がり診断などで用いられるダイナミックMRIの解析などマルチモダリティ対応のPACSとの融合が求められており,今後マンモ専用ではなく多くの画像情報を利用できる高度で性能の高いビューワの開発が求められると述べた。
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セッションの間には,共催であるキヤノンマーケティングやテラリコンから今後の製品展開へのコメントが寄せられた。最後に津坂氏が閉会挨拶を述べ,再び壇上に上がった当番世話人の牛尾氏は「今までは医療情報関連の話題が中心で華やかさがなかったが,今回は乳腺をテーマにしたことで女性の参加が増え,明るく活発な議論ができた」と研究会の成果を振り返った。次回の第7回 3D PACS研究会は,済生会川口総合病院の富田博信氏を当番世話人として,2014年12月(日時は未定)に名古屋大学大幸キャンパス(医学部保健学科)で開催の予定。
【機器展示出展社】
キヤノンマーケティングジャパン/キヤノンライフケアソリューションズ/テラリコン・インコーポレイテッド/クライムメディカルシステムズ/インフォコム/EIZO/リマージュジャパン/エーザイ/メディカルクリエイト/フィリップスエレクトロニクスジャパン/ジェイマックシステム/フクダ電子/フォトロン/日本メドラッド(順不同)
●問い合わせ先
3D PACS研究会
http://www.3d-pacs.com
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