日本CT技術研究会が第1回学術大会を広島で開催

2013-7-2

CT


350人が参加したJSCT2013会場

350人が参加したJSCT2013会場

日本CT技術研究会は2013年6月29日(土),広島大学医学部において,第1回学術大会(JSCT2013)を開催した。同研究会は,2012年11月に設立。金沢大学の市川勝弘氏が代表を務める。研究会の目的は,「学術的な標準やエビデンスを追求した技術開発の普及」「実績に基づいたセミナーの開催」「CT技術研究を進める研究者の実績拡充」としている。今回の学術大会の大会長を務める市川氏は,開催にあたっての挨拶で,これらの目的を説明し,研究発表にとどまらず,その内容を基に論文を執筆し,実績を築いていくことが重要だと述べた。また,市川氏は,2年後をめどに,学会へ移行することも明言した。

大会長:市川勝弘 氏(金沢大学)

大会長:市川勝弘 氏
(金沢大学)

大会のプログラムは,特別講演が1題,Refreshers Seminarが2題,エーザイ(株)共催のLuncheon Seminarが1題のほか,テーマごとに3つのセッションが設けられ,各演者が発表を行った。

まず,Refreshers Seminar 1(線量評価)では,「CTにおける画質評価の基礎—スライス面内の解像特性評価(1)—」をテーマに,広島大学病院診療支援部高次医用画像部門の西丸英治氏が講師を務めた。西丸氏は,空間分解能と解像特性を説明した上で,ワイヤ法によるスライス面内の解像特性評価,MTF測定について解説した。

続くSession 1では,画像・画質評価をテーマにした一般演題が6題発表された。6番目に発表した東北大学大学院医学系研究科保健学専攻の後藤光範氏は,「異なる逐次近似応用再構成法における挙動の違いについて」をテーマに,GE社,シーメンス社,東芝社の逐次近似応用再構成法で,線量を減らした場合の解像度を比較し,挙動の違いを検討した結果を報告。逐次近似応用再構成法の線量に対する挙動が種類によって異なり,撮影条件によって画像への影響も変化するとし,臨床での運用にあたっては,これらの影響因子を考慮する必要があるとまとめた。

次いで,Refreshers Seminar 2(被ばく)が行われた。講師は,金沢大学医薬保健研究域保健学系の松原孝祐氏。「CTにおける線量評価の基礎—CT線量指数—」をテーマに,CT線量指数(CTDI)について解説を行った。松原氏は,CTDIは,CTに特化した線量評価法に基づく線量指数であり,多重スキャン時のスキャン中心のにおける線量を表していることなどを説明した。

この後,Luncheon Seminarが行われ,東北大学名誉教授の森 一生氏が「画像再構成の復習:理屈を感覚で分かりたい」と題して講演した。投影データについて述べた後,解析的再構成法として,コンボリューション補正逆投影,フィルタ補正逆投影の解説をした。

西丸英治 氏(広島大学病院)

西丸英治 氏
(広島大学病院)

松原孝祐 氏(金沢大学)

松原孝祐 氏
(金沢大学)

森 一生 氏(東北大学)

森 一生 氏
(東北大学)

 

Luncheon Seminar後には,Session 2(造影・検査技術・画像処理)とSession 3(被ばく・線量評価・その他)が設けられた。Session 2では,6題の演題が用意され,慶應義塾大学病院中央放射線技術室の杉澤浩一氏による「Pseudoenhancement effectに対する仮想単色X線CT画像の効果」といった,monochromatic imagingや,造影剤コントラストの定量評価などをテーマにした発表があった。また,Session 3では,北海道社会保険病院放射線部の山口隆義氏による「心電図同期CT撮影法のX線照射時間に関する検討」や静岡県立静岡がんセンター画像診断科の瓜倉厚志氏による「多列CTにおけるover-beaming, over-rangeの評価とdynamic z-collimatorの動作特性に関する検討」など,6題の発表があった。

特別講演:粟井和夫 氏(広島大学)

特別講演:粟井和夫 氏
(広島大学)

さらに,特別講演として,同研究会の顧問である広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門放射線診断学教授の粟井和夫氏が「日本CT技術研究会に期待すること」をテーマに登壇した。粟井氏は,臨床研究の意義や倫理について,19世紀のロンドンで発生したコレラに対する研究などの事例を挙げて説明。さらに,英語論文作成のポイントや英語を学ぶための参考書,勉強法などを紹介した。

閉会にあたって,優秀発表賞として,後藤氏が表彰された。市川氏は閉会にあたり,研究会の目的を踏まえ,研究発表にとどまらず論文としてまとめてほしいと改めて訴えた。当日は診療放射線技師,メーカー技術者など350人の参加があり,1講義室に収まらず別室を中継会場とするなど,盛況であった。なお,次回の学術大会は2014年6月に,名古屋市内を会場にして開催する予定である。大会長は名古屋大学大学院医学系研究科医療技術学専攻医用量子科学講座の小山修司氏が務める。

小山修司 氏(名古屋大学)

小山修司 氏
(名古屋大学)

優秀発表賞の表彰

優秀発表賞の表彰

 

 

●問い合わせ先
日本CT技術研究会
事務局(広島大学病院放射線部内)
TEL 082-257-5556
[email protected]
http://www.jsct-tech.org

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