第20回 日本CT検診学会学術集会 開催
─テーマは,低線量CT検診の普及。大腸CTも加えて,CT検診の広がりをめざす。
2013-2-18
受付風景
第20回日本CT検診学会学術集会が2013年2月15日(金),16日(土)の2日間,秋葉原コンベンションホール(東京)にて開催された。1994年に第1回胸部CT検診研究会大会が開催されてから20回目の節目の大会であり,大会長は,花井耕造氏(国立がん研究センター東病院放射線部診療放射線技師長)が務めた。
大会のテーマは,「低線量CT検診の普及─いつ,どこでも,安全で精度の高いCT検診を─」。CT検診の安全性と精度の高さを国民に見える形で明示できるシステムの構築について議論し,CT検診のさらなる普及をめざすというメッセージである。花井会長は冒頭の挨拶の中で, 2011年に米国で低線量CT検診の大規模RCTの結果が報告され,有効性が証明された中で,わが国でも体制の確立が求められていると述べた。被ばくに対する国民の意識がますます厳しくなっている今,CT検診における低線量化と線量情報記録等の一元管理が必要であり,認定医・認定技師・認定施設による精度の高いCT検診が全国に広がることをめざしたいと語った。
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また,本大会から「大腸CT(CTコロノグラフィ:CTC)」が取り上げられ,20回大会という節目に,CT検診学会の広がりがアピールされた。本学会は,2006年にNPO法人「日本CT検診学会」と名称を改め,研究対象は胸部以外にも腹部の動脈瘤,内臓脂肪の定量的評価,骨粗鬆症など全身に広がっているが,今回からは大腸CTも加わることになった。
同時に,本学会としては初めてとなるハンズオンセミナーも企画された。15日には,「肺結節検出支援ワークステーションを用いた読影」(司会進行:柿沼龍太郎氏,五味志穂氏・国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)と「線量計算シミュレーションソフト(CT-Expo)を用いた被ばく線量推定の実践」(司会進行:村松禎久氏・国立国際医療研究センター病院ほか),16日には,「大腸CT(CTC)トレーニングコース~医用3次元ワークステーションによる大腸解析の実際~」(司会進行:飯沼 元氏,三宅基隆氏・国立がん研究センター中央病院)の3つのコースが設けられた。
第20回大会の1日目は,金子昌弘理事長(東京都予防医学協会)によるオープニングトーク:20回大会記念講演で幕を開けた。金子理事長は,胸部を中心とした画像診断の進歩の歴史をひもとくと共に,1994年に発足した胸部CT検診研究会から今日までの歩みも振り返りつつ,これからは個々の疾患から全身のCT検診へ,守りの検診から攻めの健診をめざしたいと抱負を述べた。
午後には,今大会のテーマである「低線量CT検診の普及~安全で精度の高い検診を~」と題したシンポジウムが開催された。座長を花井会長と楠本昌彦氏(国立がん研究センター中央病院)が務め,5名のシンポジストによる講演,ディスカッションが行われた。
はじめに,長尾啓一氏(東京工業大学保健管理センター)が,「肺がんCT検診機構の役割」と題して発表した。NPO法人肺がんCT検診認定機構の代表理事を務める長尾氏は,肺がん検診の歴史を紹介した上で,肺がんCT検診の認定医師,認定技師の役割や現状を説明した。さらに,肺がんCT検診の安全管理,品質管理,確定診断・治療に関するネットワーク,検診精度管理(成績の公表)を実践できる認定施設について,その認定基準を策定中であることを紹介した。
続いて,五味志穂氏(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)が,「認定技師の立場からのCT検診の現状」と題して,同機構で実施した認定技師講習会受講者に対する肺がんCT検診の実態調査結果を中心に報告した。2010年から4回にわたる調査の結果,mAs値は,条件を見直す必要がある151mAs以上の施設が4~11%あり,検診施設よりも病院・クリニックにおける検診の方が線量が高い傾向にあった。五味氏は,低線量であっても腹部用の再構成関数を用いるなどの工夫で診断に有用な画像を得ることができることを示した。また,リファレンスレベルの検討としてNLSTと調査結果を比較して,mAs値やCTDIvolの上限設定の検討が必要であるとし,また,認定医師,認定技師のさらなる普及と,線量の全国的な一元管理の必要性を述べた。
3題目に,村松禎久氏(国立国際医療研究センター病院)が,「肺がんCT検診画像の精度管理」を講演した。村松氏は,より臨床に近い画像評価を行うために開発したファントムを用いた模擬腫瘤画像の,FBPと逐次近似(応用)再構成(IR)の画像を比較し,IRは低線量での撮影を可能にするものの,診断可能な画像を得るためには,安易に線量を下げるのではなく,注意深く検討すべきであると述べた。また,健常者を被ばくさせることになるCT検診においては,低線量の見える化が特に重要であると指摘し,適正な被ばく管理,画質管理のために,開発中のCT検診版Japan-DIRのパイロットスタディへの協力を呼びかけた。
これを受け,石垣陸太氏(京都医療科学大学)が,「低線量肺がんCT検診業務の精度管理用統合データベース「CADI」の開発」を発表した。現在開発中のCADIは,日本における肺がんCT検診データの全国規模での集積・解析を目的としたソフトウエアで,石垣氏は開発責任者を務める。石垣氏はまず,開発の経緯について触れ,CADIが米国IHEにて,照射線量などを総合的に扱う方法を示す統合プロファイルIHE-REMを満たしていることが認められたことを報告した。そして,CADIの概要や運用フローを説明し,パイロットスタディへの参加募集を当日(2月15日)から始めることを紹介した。
最後に,粟井和夫氏(広島大学大学院)が,「広島県地域保健対策協議会におけるCT肺がん検診への取り組み」と題して発表した。広島県では2012年度から肺がんCT検診に取り組んでおり,粟井氏はそのワーキンググループの座長を務めている。はじめに粟井氏は,広島県におけるがんの現状についてデータを示し,肺がん対策が県の重点事項となった経緯を説明した。広島県では,肺がんの検診から治療,経過観察まで,切れ目のない高度な医療を提供するために「肺がん医療ネットワーク」を構築しており,粟井氏はその概要を解説するとともに,座長を務める肺がん早期発見体制検討WGの活動について紹介した。さらに,広島県におけるCT検診の実態調査の結果と,低線量CTによる肺がん検診の対策型検診への導入の可能性を検討するために行った費用効果分析について結果を報告した。
●シンポジウム
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2日目には,新たに加わったテーマである大腸CTのスポンサードシンポジウム「大腸CT検診,はじめの一歩」が,飯沼 元氏と花井会長を座長に開催され,同日にはハンズオンセミナーも企画された。
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第21回日本CT検診学会学術集会は2014年2月14日(金),15日(土),京葉銀行文化プラザ(千葉市)にて開催される予定である。会長は,滝口裕一氏(千葉大学大学院医学研究院先端化学療法学)が務める。
●問い合わせ先
第20回日本CT検診学会学術集会事務局
国立がん研究センター東病院放射線部内
(担当:大沼)
E-mail [email protected]
日本CT検診学会 事務局
E-mail : [email protected]
http://www.jscts.org/
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