RSNA2017 富士フイルム − ヘルスケアIT
「FUJIFILM AI」をベースとした画像診断領域でのAIを利用した開発の方向性をプレゼンテーション
2017-11-30
RSNA 2017 ヘルスケアIT
FUJIFILM Medical Systems(富士フイルム)は,RSNA 2017において「FUJIFILM AI」のコンセプトを掲げ,ヘルスケアIT分野で富士フイルムのAIを展開していくことを改めてアナウンスした。
富士フイルムでは,画像認識技術や解析技術における長い開発の経験と高い技術力を生かし,そのノウハウをベースに画像診断領域でさまざまな機器やシステムを開発し市場に投入してきた実績がある。しかし,昨今,ディープラーニングをベースにAI技術が急速に進化し,日本においては国が主導する保健医療分野へのAI活用の取り組みが進められるなど,医療分野でのAI利用を取り巻く環境は急激に変化しつつある。そこで,今回,RSNAのブースでは特に日本のユーザーに対して,同社のAI開発の位置づけと今後の方向性をプレゼンテーションし,これまでの技術開発の延長ではなく,改めてAI技術を組み込んだ機器やシステムの開発に取り組んでいることをPRした。
富士フイルムでは,AI開発をこれまでPACSの「SYNAPSE」で培ってきたデータ管理や解析のノウハウ,「SYNAPSE VINCENT」を中心とする“Image Intelligence”の画像認識技術をベースに進めている。開発のターゲットとなるのは画像診断業務の中でも,画像データの可視化からレポート作成の部分であり,この業務をAIを使って半自動化することで,読影医が診断に集中できる環境を構築することをめざす。
具体的な技術開発のアプローチとしては,1) 画像のセグメンテーション(臓器の自動認識など),2) 診断支援,3) ワークフローの効率化(自然言語処理によるレポート作成など)の3点となる。
1)のセグメンテーションは,構造を自動認識して臓器の分類などを行うものだ。例えば,体幹部の単純CTのボリュームデータから肺や膵臓などを自動認識して分離し,読影時の診断をサポートする。2)の診断支援では,びまん性肺疾患の病変部分の自動抽出と可視化,マンモCADでの検出能の向上,くも膜下出血の出血部分の自動認識と計測などの技術を紹介した。3)のワークフローの効率化では,自動認識した病変のサイズなどのデータを基に自然言語処理を行い,ワンクリックでレポートの文章を作成する技術を開発中で,読影医のレポート作成の効率化に寄与することをめざす。これらの機能は,富士フイルムのAIプラットフォーム上で提供され,それぞれのデータがプラットフォームに蓄積されることで,ディープラーニングによる認識精度や検出率の向上が可能となる。
具体的な製品化や機能の実装はこれからになるが,ブースではPACSへの機能の搭載例として,検査をAIで処理して脳の出血などを自動認識しリストに緊急のラベルをつける運用を紹介した。また,病変の大きさを自動で計測し,測定値を自然言語処理を行いレポートに反映するデモも行われた。
富士フイルムでは,CR,DRで培ってきたX線画像処理技術をベースとして,SYNAPSE VINCENTの画像認識技術やマンモCADの画像処理技術で特徴量の抽出やしきい値の最適化など,AIによる医療画像認識においても中核となる技術を蓄積してきた。また,実際のPACSやレポートシステムなどへの実装についても,臨床の中でAIをどのように組み込めば最適なソリューションが提供できるかといった豊富なノウハウを持っており,AIをベースにした画像診断システムにおいても大きなアドバンテージがあることをアピールした。