ITEM2022 富士フイルム ブースレポート
グループ4社合同1200平米の広大なブースでITソリューションを核にCT,MRIまでシナジーの成果を大きくアピール
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2022-5-13
富士フイルムグループブース
富士フイルムグループは,ITEM2022の展示ブースを“ONE FUJIFILM”として富士フイルム(株),富士フイルムメディカル(株),富士フイルムヘルスケア(株),富士フイルム医療ソリューションズ(株)の4社合同で構成した。X線,CT,MRIからITソリューションまでフルラインアップをそろえ,一体となったブースは1200m2というITEM2022の最大の面積となり,会場で存在感を放った。初日に当たる4月15日に行われたプレス向けブースツアーで挨拶した富士フイルムホールディングス代表取締役社長・CEOの後藤禎一氏は,「富士フイルムが得意とする画像処理や人工知能(AI)技術などのITソリューションと,富士フイルムヘルスケアのCT,MRIなどのモダリティソリューションの双方の技術が融合して,富士フイルムグループとして新しいシナジーが生まれつつあることが感じられる充実したブースとなった。富士フイルムグループの中でメディカルシステム事業は堅調に推移しており,2026年度に7000億円の売上高達成が射程距離に入ったと感じている」と述べた。ITEMに先立つ4月5日に行われた,富士フイルムホールディングスのメディカルシステム事業戦略に関する説明会で,富士フイルムの執行役員メディカルシステム事業部長の秋山雅孝氏は,富士フイルムヘルスケアとのグループシナジーの創出やAI技術の活用範囲が拡大していることなどをメディカルシステム事業の強みとして挙げ,継続的に強化しバランスよく成長させることで2026年度に現在の倍となる売上高7000億円の達成を実現したいと述べた。また,富士フイルムヘルスケア代表取締役社長の山本章雄氏は,この1年のシナジーとして,“ONE FUJIFILM”としての組織体制の変更や販売,プロモーションでの連携が進んだことを挙げ,さらに開発のシナジーとして富士フイルムヘルスケアのCT,MRIに富士フイルムの3D画像解析技術の搭載が進んでいることを紹介した。
ITEM2022の展示では,CT,MRI,X線診断装置などのモダリティソリューションから,PACS,画像処理ワークステーションなどのITソリューションまでがそろい,その中で実際に富士フイルムAI技術ブランド“REiLI”を中心としたさまざまな連携や融合が進み,成果が着実に実を結びつつあることを感じさせる展示内容となった。
●富士フイルムメディカル
X線:薄型フィルムTFTを採用したCALNEO Flowを核とした多彩なラインアップをアピール
AI:胸部X線画像に対する画像解析を“どこでも”可能にする「EX-Mobile」の多様な運用を紹介
マンモグラフィ:Dynamic Visualization Ⅱによる画像処理や新しいマンモグラフィ装置を展示
AIプラットフォーム:所見文候補自動作成など読影ワークフローを支援する機能を強化したSYNAPSE SAI viewer
3DWS:膵臓解析や非造影での臓器認識機能を強化した「SYNAPSE VINCENT」の最新バージョンの機能を紹介
●富士フイルムヘルスケア
X線TV:“3WAY ARM”で患者を動かさずに安全な内視鏡検査をサポートする「CUREVISTA Apex」を発表
CT:高速演算能力を生かして心拍動によるブレを低減する“Cardio StillShot”を搭載するSCENARIA View Plus
MRI:“REiLI”など富士フイルムとのシナジーを生かした1.5T MRIのECHELON Smart Plus
超音波:AI技術を活用したノイズ除去技術DeepInsightを搭載した超音波診断装置2機種を展示
●富士フイルム医療ソリューションズ
治療RIS:治療部門のタスクを可視化してスタッフを支援するワークフロー支援機能を強化
PACS:検索や通知機能を強化したレポートシステム「ShadeQuest/Report」
線量管理システム:ShadeQuest/DoseMonitorが富士フイルムのF-RISとSYNAPSEと新たに連携
●富士フイルムメディカル
X線:薄型フィルムTFTを採用したCALNEO Flowを核とした多彩なラインアップをアピール
〈FUJIFILM DR CALNEO Flow G80〉
X線では,薄型フィルムTFT基板と画像読取技術ISS(Irradiation Side Sampling)を採用し,高画質と軽量化を実現したカセッテDR(FPD)「FUJIFILM DR CALNEO Flow」(CALNEO Flow)の5機種と,開発中の長辺32インチ(約80cm)の長尺パネル「FUJIFILM DR CALNEO Flow G80」を参考出展した。
CALNEO Flowは,蛍光体にGOS(ガドリニウムオキサイドサルファ)を採用し軽量なGシリーズ2機種(14×17,17×17インチ)と,X線エネルギーの変換効率が高いCsI(ヨウ化セシウム)採用のCシリーズ3機種(10×12,14×17,17×17インチ)のラインアップで展開している。軽量化ではG47(14×17インチ)で1.8㎏(バッテリーを除く)を,高画質化ではCシリーズで58%のDQEの向上を実現している。
参考出展したCALNEO Flow G80は,蛍光体にGOSを採用しパネルの長辺が32インチと従来の約2倍の長尺パネルで,ワンショットで全脊柱や小児の全身撮影など広範囲の撮影が可能になる。従来のパネルでは,撮影時にはパネルをずらして複数回の曝射が必要で,撮影後には複数の画像を1枚につなげる作業が必要だった。CALNEO Flow G80では厚さ15mmで従来の長尺用の撮影台をそのまま利用できるほか,無線通信と内蔵バッテリーの可搬型ワイヤレスタイプで目的の撮影室に持ち込んで撮影が可能になっている。
〈FUJIFILM DR CALNEO CROSS〉
2021年のITEMでは参考出展として紹介された外科用Cアーム「FUJIFILM DR CALNEO CROSS」は,製品化され2021年10月に発売された。X線検出部にカセッテDR(CALNEO Flow)を採用し,1台でX線透視とX線静止画の撮影が可能な装置である(X線透視撮影にはCALNEO Flow Cシリーズが必要)。静止画撮影時には,パネルホルダーからカセッテDRを取り出して撮影できるため,術中の透視撮影と術後の確認のための静止画撮影が1台で可能で、ワークフローの効率化が可能になる。また,パネルホルダーは取り外しが可能で,用途に合わせて最適なカセッテDR(10×12,14×17,17×17インチ)を選択できる。また,本体重量約249kgと軽量化してコンパクトな装置にしているほか,本体にバッテリーを内蔵しモニターカートやフットスイッチとの接続をワイヤレス化して手術場などでの取り回しを容易にしているのも特徴だ。
AI:胸部X線画像に対する画像解析を“どこでも”可能にする「EX-Mobile」の多様な運用を紹介
「EX-Mobile」は,カセッテDRとクリニック向け画像診断ワークステーション「C@RNACORE」のオプションである小型拡張ユニットで,胸部単純X線画像から結節・腫瘤影,浸潤影,気胸の候補領域を検出する「胸部X線画像病変検出ソフトウェアCXR-AID」の動作環境を提供する。従来,AIによる画像処理は負荷が大きく汎用PCでの解析は時間がかかることが課題だったが,EX-Mobileは重量約500gの軽量小型の本体にGPU(画像演算ユニット)を搭載し,カセッテDR(CALNEO FlowおよびCALNEO Smart)から受信した画像を高速処理して結果をコンソール(Console Advance)に提示する。これまで読影室など病院内の特定の場所での利用に限られていた画像解析技術を,救急部門や,クリニック,在宅医療などさまざまな臨床現場に拡大することができる。
EX-MobileにインストールされたCXR-AIDは,胸部単純X線画像を自動解析して結節・腫瘤影,浸潤影,気胸が疑われる領域を検出し,ヒートマップ(確信度が低い=青から,高い=赤)とスコアで表示する。これによって医師の読影を支援し見落としなどのリスクを低減する。CXR-AIDは,SYNAPSEやSYNAPSE SAI viewerにもアプリケーションとして搭載されているが,EX-Mobileによって利用シーンが大きく広がった。ブースでは,携帯型X線撮影装置である「CALNEO Xair」と,カセッテDR,モバイルコンソール,EX-Mobileを組み合わせて,在宅医療や災害医療などの現場で撮影からCXR-AIDによる解析結果の確認までが可能になることを紹介した。また,EX-Mobileと同様の動作環境を提供する外部画像処理キットを内蔵した移動型デジタルX線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO AQRO」によって,手術室や処置室,病棟などでの運用できることをアピールした。
マンモグラフィ:Dynamic Visualization Ⅱによる画像処理や新しいマンモグラフィ装置を展示
マンモグラフィでは,デジタルマンモグラフィ「AMULET Innovality」や同装置で利用できる圧迫自動減圧制御(Comfort Comp)機能“なごむね”などを展示した。AMULET Innovalityは,50μmサンプリングと直接変換方式FPDを採用してトモシンセシス,トモバイオプシーまで対応したマンモグラフィ装置で,すでに国内で多くの導入実績がある。展示では,痛みを軽減する機構である“なごむね”と併せて,受診者への負担の少ないマンモグラフィ検査を提供することで,マンモグラフィ健診への啓発につながることを紹介した。また,AMULET Innovalityの画像処理に,新たにダイナミック処理の“Dynamic Visualization Ⅱ”が適用された。Dynamic Visualization Ⅱの処理によって,乳腺濃度の高い領域においても性状の認識がしやすくなり,石灰化の形状についても認識しやすくなっていることを症例画像を含めて展示した。
また,開発中の新しいデジタルマンモグラフィ装置を展示(薬機法未承認)。クリニック向けのシンプルな構成の装置で,2D専用でコストを抑えた装置として開発を進めているとのことだ。
AIプラットフォーム:所見文候補自動作成など読影ワークフローを支援する機能を強化したSYNAPSE SAI viewer
AI技術を活用して画像診断のワークフローを支援するAIプラットフォームの「SYNAPSE SAI viewer」は,2019年の発売以来,“臓器セグメンテーション”,“コンピュータ支援診断”,“ワークフローの効率化”をコンセプトに開発を進めてきた。SYNAPSE SAI viewerでは,病変がどこにあるかだけでなく,その病変がどの臓器の,どのセグメンテーションにあるのかを認識することで,それを所見作成につなげて読影ワークフローの効率化を支援するAIプラットフォームとしての役割を担う。ITEM2022のブースでは,胸部領域を中心に開発されてきたAI技術が,腹部や頭部といった全身の臓器に展開されていること,さらに所見文候補の自動作成など読影効率化につながる機能が強化されてることを紹介した。
胸部CT画像での画像診断支援では,肺結節を自動で検出し経時変化の比較や検出された肺結節の性状分析を行い,その結果の所見文の候補を自動で生成する。読影医がレポートを1から作成する手間を削減して読影業務を支援する。また,最新バージョンに搭載された“肋骨骨折検出プログラム”では,肋骨の骨折部位を自動で検出し,それが何番目の肋骨か自動でラベリングする。肋骨骨折は合併症を起こすことがあるため,骨折の存在を把握することが重要となる。骨折のより詳細な読影にはCTが用いられるが,湾曲した肋骨の骨折箇所を見落とすことなく診断することは読影医の負担が大きかった。肋骨検出プログラムでは,自動解析と骨番号の自動ラベリングなどで医師の読影をサポートする。
また,胸部領域以外の部位に対するアプローチでは,腹部での肝臓領域,膵臓領域抽出が可能になった。肝臓における亜区域を認識して色分けで表示するほか,領域をセグメンテーションすることで肝臓腫瘍の所見についても自動で候補文の作成が可能になった。所見文候補表示機能など所見作成を支援する機能の強化,胸部で培ってきた臓器セグメンテーション技術が腹部(肝臓の区域表示)へと拡大していることを紹介した。
3DWS:膵臓解析や非造影での臓器認識機能を強化した「SYNAPSE VINCENT」の最新バージョンの機能を紹介
3次元画像解析システムボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」の最新バージョンであるv6.7に搭載された新しい機能を中心に紹介した。その1つが“膵臓解析”のアプリケーションで,膵臓とその周辺臓器(脾臓,十二指腸,胃など)や血管系(動静脈,門脈)を自動抽出する。膵臓内の拡張性の膵管や腹腔鏡下手術で膵臓観察のメルクマールとなる左腎臓を含めて抽出して,それらを統合して画像観察が行える。さらに,術前の切除シミュレーションでは,膵臓の断端面や膵管の走行の状態を確認しながら切除領域と残膵領域の体積の割合などを計算できる機能を提供する。膵領域の手術では,周囲の血管走行が複雑で患者ごとのバリエーションも多く,位置関係の把握のためにも術前の立体観察によるシミュレーションへの要望が多かった。AI技術を活用した画像認識技術を応用することで,これまで困難だった各臓器,組織の自動抽出を実現した。
また,血管や臓器の抽出に関しては非造影データを利用して実施したいという要望が強くあり,造影検査に依存しない抽出アルゴリズムの開発を進めている。その一つとして,非造影による肺の動静脈(PA/PV)分離の機能を紹介した。“肺切除解析”のアプリケーションの中の抽出アルゴリズムとして,従来の造影データからの抽出に加えて非造影データでの血管の抽出と肺動静脈分離を可能にした。これに加え汎用の画像解析機能の中の“大動脈抽出”の解析に非造影のアルゴリズムを搭載し,両アプリケーションを組み合わせることで,新たに非造影画像データから肺の大血管と動静脈の画像抽出・観察が行えるようになったこともアピールした。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムメディカル株式会社 営業本部マーケティング部
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
mail:[email protected]
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/
●富士フイルムヘルスケア
X線TV:“3WAY ARM”で患者を動かさずに安全な内視鏡検査をサポートする「CUREVISTA Apex」を発表
X線では,ITEM初日の4月15日にプレスリリースされたデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Apex」が,正面のステージに大きくフィーチャーされた。X線透視下での内視鏡検査・治療に特化したX線透視システムとして開発され,ユーザーの声(要望)を基に画質から撮影機構,操作性などの検査ワークフローまで多くの新しい機能を搭載した。その一つが縦・横・斜め方向に可動する3方向アーム(3WAY ARM)だ。内視鏡検査・治療では,手技に合わせた視野の移動が必要である。従来,X線管アームの移動でカバーできない場合は天板を横方向に移動させて対応していた。一方,CUREVISTA Apexでは,アームが縦と横方向に可動し,これによって天板を動かすことなく安全に手技が行える。ところが,デバイスと臓器の重なりを回避したり,対象の臓器の奥行きを確認したりするために,体位を変換することがある。そこで,CUREVISTA Apexは,第3の方向として左右軸方向の“斜め”にも視野を傾けることができるようになった。これにより,患者の体位変換を伴わずに安全に観察できるようになった。また,操作については声でシステムの操作が行えるボイスコントロール“MAGICHAND”を実装。画像処理の切り替えなど一部の項目を声で操作でき,処置具の操作などで手がふさがっていても非接触で検査を進めることができる。さらに,散乱X線を可視化して術者の被ばく線量の低減に貢献する線量マップ“IntelliMAP”を搭載した。X線透視下での検査や処置の増加によって,関係する医療従事者の職業被ばくも増加傾向にあると言われている。IntelliMAPは,目に見えない散乱X線を可視化することで医療従事者のX線被ばくへの意識を変え,被ばく低減につなげることをめざしている。実際の照射線量から散乱X線マップ(線量・分布)をシミュレーションして,装置イラスト上に直感的なヒートマップで表示する。
CT:高速演算能力を生かして心拍動によるブレを低減する“Cardio StillShot”を搭載するSCENARIA View Plus
CTでは,ITEM直前の4月5日に発売されたSCENARIAファミリーの最上位機種「SCENARIA View Plus」と,2021年12月にリリースされたSupriaファミリーの最上位機種「Supria Optica」の64列CT2機種を展示した。両機種とも,AI技術を活用して開発された画像処理機能“IPV”,検査効率向上技術である“SynergyDrive”が搭載され,高画質で低被ばく検査を最適なワークフローの下で提供できる製品となっている。また,富士フイルムのAI技術である“REiLI”の適用によって,さまざまな機能がさらに強化されていることをアピールした。
SCENARIA View Plusは,2018年に発売されたSCENARIA ViewにGPU搭載型コンソールを搭載したモデルである。従来はCPUベースで処理されていた解析をGPUで行うことで,処理のスピードが向上し解析機能が大きく向上した。GPUを活用した演算ユニットとして“FOCUS Engine”を搭載することで,IPV使用時の画像処理速度が従来の演算ユニットに比べて最大で2倍となっている。それを生かしたのが心臓CTにおける拍動によるブレを低減する技術“Cardio StillShot”である(オプション)。Cardio StillShotでは,RawDataで心臓全体の動きを四次元的に推定した“4D動きベクトルフィールド”を用いて,収集したデータの動きを補正することで,動きによる影響を抑えて高分解能の再構成画像が得られる。これによって,高心拍や心拍が不規則な患者でも動きのアーチファクトを低減した画像を得ることができる。Cardio StillShotを適用した場合,SCENARIA View Plusの0.35秒/回転で実効時間分解能は28msecとなる。IPVを適用することでより低被ばくで高画質の画像データの取得が可能で,冠動脈だけでなく心臓の弁の描出なども期待される。
Supria Opticaは,Supriaファミリーのオープン&コンパクトというコンセプトはそのままに,富士フイルムのAI技術であるREiLIで強化されたIPVやSynergyDriveといった機能を搭載した64列CTだ。IPVの適用で従来のFBPの画像処理に比べて最大83%の被ばく低減,90%の画像ノイズ低減を実現した。Supria Opticaでは,16列CTと同等の2MHUのX線管装置と電源容量30kVAが搭載されているが,IPVと組み合わせることで換算値で最大12MHU相当の性能が得られ,ランニングコストを抑えながら幅広い検査に対応が可能になっている。
MRI:“REiLI”など富士フイルムとのシナジーを生かした1.5T MRIのECHELON Smart Plus
MRIでは,検査自動化ソリューションであるSynergyDriveや高速撮像技術“IP-RAPID”を搭載した1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」を展示した。ハードウエアの特徴として,顔の前面部分の覆いをなくしたオープンヘッドコイルと,MRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」を紹介した。通常のヘッドコイルでは頭部全体をカバーするため顔の前面部分に覆い被さるような形状となっているが,閉所が苦手な被検者にとっては圧迫感を感じる要因にもなっていた。ECHELON Smart Plusのオープンヘッドコイルは,前面を開放したオープンなデザインになっているにもかかわらず,信号の受信強度は通常と変わらない性能を維持している。また,前面の覆いがなくなったことで,円背の患者や救急などで挿管された状態での検査も容易になる。Smart Theatreは,海や空などの開放感のある映像をボア内に投影することで,検査環境を向上するシステムだ。富士フイルムヘルスケアのSmart Theatreは,投影用のプロジェクタを検査室内に設置できることから大がかりな工事が不要で,また,ゴーグルなどを使わずにボア内に直接投影することで,開放感を損なわない運用ができることが特徴だ。プロジェクションマッピング技術を用いることで,ボア内でもひずみのない映像が投影できる。投影方法も,検査中に直接視聴できるボア内上部と,検査前にボアの側面に投影して心理的な圧迫感を避けるなどさまざまなスタイルで利用できる。
また,画像面では,今回,新たに富士フイルムの3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」の中から,放射線科領域向けの解析機能に特化したソフトウエア「SYNAPSE VINCENT Core」をリリースし,富士フイルムヘルスケアのCT,MRIと接続する端末で使用することができる。SYNAPSE VINCENT Coreでは,自動臓器認識機能を利用でき撮影後にすぐに各種の解析と3D画像の作成ができるほか,基本的な解析機能に加えて,MRIでは拡散強調画像からテンソル解析などの機能を利用できる(オプション)。
さらに,高速化,高画質化,自動化を実現するSynergyDriveは,富士フイルムのREiLIの下でさまざまな機能や解析が強化された。高画質化および高速化では“REALISE Plus”によって従来よりもSNRを最大で46%向上した。これによって,従来と同じ画質であれば時間短縮も可能あり,その時間を3D-GEIRやBPASなどシーケンスの追加が可能になることを紹介した。また,操作性向上機能の“Auto Exam”は頭部でのMRAの自動クリッピング処理“AutoClip”や膝関節の自動撮像など領域が広がっていることを紹介した。自動位置決めは精度が良いところをアピールした。
超音波:AI技術を活用したノイズ除去技術DeepInsightを搭載した超音波診断装置2機種を展示
超音波診断装置では,AI技術を活用したノイズ除去技術“DeepInsight”を搭載した「ARIETTA 850 DeepInsight」と「ARIETTA 650 DeepInsight」を初出展した。富士フイルムヘルスケアが提案する“これからの超音波画像があるべき新しいかたち”として,RSNA2021で発表されたDeepInsightは,正確性(Accuracy),再現性(Reproducibility),視認性(Visibility),効率性(Efficiency),そして機械学習(Utilization of AI)の5つをクリアする超音波画像の理想形であり,それらを実現する技術を指す。その実現に向けて新たに開発されたノイズ除去技術が“DeepInsight技術”である。DeepInsight技術では,AI技術を活用してエコー信号と電気ノイズを高い精度で区別し,診断に必要な信号を選択的に抽出して画像化することで,体内深部でも鮮明な画像が得られる。
ARIETTA 850 DeepInsightではDeepInsight技術と,超音波送受信技術“eFocusing”,組織構造を見やすくする“Carving Imaging”といったこれまでのARIETTAシリーズで培ってきた高画質技術を組み合わせることで,画質の向上や検査者間でのバラツキの少ない安定した検査を提供する。eFocusing技術は,1回の送信ビームに対して複数の受信ビームを取得し合成処理することで画像を生成し,浅部から深部までクリアな画像が得られる。ARIETTA 850 DeepInsightでは,さらに複数の周波数をブレンドすることで高感度,高コントラスト,高い空間分解能を実現した“eFocusing PLUS”となった。プローブには単結晶構造の圧電素子を採用して高感度,広帯域の検査を可能にした。また,モニタには有機EL(OLED)モニタを採用し,高コントラスト分解能と視野角の広いモニタで検査をサポートする。ARIETTA 850 DeepInsightは大学病院などの大規模医療機関に向けたプレミアムモデルで,ARIETTA 650 DeepInsightはコンパクトな筐体でクリニックや健診センターに向けたミッドハイレンジモデルと位置づけられる。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルムヘルスケア株式会社
住所:〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
mail:[email protected]
URL:https://www.fujifilm.com/fhc/ja
●富士フイルム医療ソリューションズ
富士フイルム医療ソリューションズは,PACS,RIS,放射線治療のソリューションを提供している。富士フイルムグループとなってから3年,ITEM2022では“ONE FUJIFILM”の広大なブースの中で,各領域のソリューションでグループ間の製品連携が進み,機能の強化やワークフローの効率化などで進化し続けていることをアピールした。
治療RIS:治療部門のタスクを可視化してスタッフを支援するワークフロー支援機能を強化
放射線治療部門情報システム(治療RIS)の「ShadeQuest/TheraRIS」では,新たに機能を強化した“ワークフロー支援機能”や,富士フイルムが開発したAI技術を活用して治療計画における輪郭抽出を支援する放射線治療計画支援ソフトウェア「SYNAPSE Radiotherapy」との連携強化などを紹介した。
治療RISのワークフロー支援機能では,実際の照射が始まるまでの輪郭抽出や固定具作成などの業務の進捗状況を把握できる一覧画面が新たに用意された。患者ごとの各業務を一覧表示し,放射線治療にかかわるスタッフが患者単位の進捗を把握できるほか,職種ごとや担当者ごとのタスクなども容易に確認できる。従来,紙などを使って個別に作成していたが,スタッフのスケジュールや業務量の把握が難しく手間と時間がかかり,治療RIS上での対応が強く望まれていた。また,SYNAPSE Radiotherapyとの連携では,治療RISで輪郭作成したい該当患者のCTオーダを右クリックしてSYNAPSE Radiotherapyを起動して,該当CTの輪郭作成が始められるようになった。SYNAPSE Radiotherapyは,富士フイルムのAI技術ブランド“REiLI”の技術を活用して開発されたソフトウエアで,臓器セグメンテーションを応用して放射線治療計画で作成されるリスク臓器の輪郭作成を支援する。
PACS:検索や通知機能を強化したレポートシステム「ShadeQuest/Report」
富士フイルム医療ソリューションズのレポートシステム「ShadeQuest/Report」では,読影業務の支援やレポートの未読の防止など医療安全のためのさまざまな機能を強化してきた。新しい機能の強化として通知機能が紹介された。読影業務に集中する中で,至急読影の依頼や細胞診の依頼結果の返送などシステムの通知をレポートの画面上に表示することで,適切に注意を促すことができる。通知はコメントやアイコンへのバッジなどで表示が可能で,通知の内容や表示方法はカスタマイズできる。例えば,MRIの検査を登録することで読影が必要な件数をアイコンとバッジで表示して,自分の業務の進捗状況を把握できたり,読影後のフォローが必要な患者を登録することで検査結果が出たことを表示するなどの使用方法が可能になっている。
また,検索機能も強化された。ShadeQuest/Reportでは,従来からキーワードや条件を設定した全文検索が可能だったが,検索のために詳細画面を開く必要があり,検索サイトのような簡易な検索機能が要望されていた。そこでレポートの画面上に検索のためのエリアを設けて,ウィンドウを開くことなく直接文字を入力して検索できるようにした。また,それに伴って検索結果の表示までのスピードも高速化された。検索エリアの内容や項目についてもブロックごとに配置を自由に変えられるになっている。
そのほか,読影中に診療科から別検査の読影依頼(コンサルテーション)があった場合のレポートとShadeQuest/ViewR-DGの症例参照のスタイルも変更された。従来は,読影中のレポートを終了して読影依頼のレポートを開く必要があったが,症例参照で検索をすると該当する検査一覧が別ウインドウで開き,リストやレポートの内容が参照できる。さらに画像は,まったく別のモニタに別ウインドウで開き,ウインドウ上部には赤く症例参照の画像であることが明示されるようになった。これによって患者の画像の間違いを防ぎ,通常の読影業務にもすぐに戻ることができる。
また,画像ビューワ「ShadeQuest/ViewR-DG」では,放射線治療計画画像を表示できるようになった。同社では放射線治療計画用のビューワとして「ShadeQuest/ViewRT-DG」があるが,計画用画像の参照しかできないことから,治療前と治療後のCT画像を比較して読影したいという要望に応えたものだ。
線量管理システム:ShadeQuest/DoseMonitorが富士フイルムのF-RISとSYNAPSEと新たに連携
線量管理システム「ShadeQuest/DoseMonitor」は,最新バージョンで富士フイルムのPACS「SYNAPSE」,放射線情報システム「F-RIS」との連携が可能になったことを紹介した。ShadeQuest/DoseMonitorは,既存のPACSやRISと連携した線量管理が行えることが特徴で,オーダ情報や撮影情報などと紐付いた最適な被ばく線量管理を支援する。今回の展示では,富士フイルムグループのシナジーとして最新バージョンで富士フイルムの放射線情報システム「F-RIS」とPACSの「SYNAPSE」と連携したことを紹介した。
●お問い合わせ先
社名:富士フイルム医療ソリューションズ(株)
住所:〒106-0031 東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
TEL:03-6452-6880
URL:https://www.fujifilm.com/ffms/ja