ITEM2021 GEヘルスケア・ジャパン ブースレポート
“Intelligently Efficient”をテーマに,MRIのプラットフォーム“AIR IQ Edition”など,医療の質向上と効率化に貢献する技術・ソリューションをPR
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2021-5-6
GEヘルスケア・ジャパンブース
GEヘルスケア・ジャパンは,今回のITEMで“Intelligently Efficient”をテーマに掲げて展示を行った。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより,世界中の医療現場は厳しい状況にある。日本においても,陽性患者を受け入れる病床のひっ迫や患者の受診控えによる医業経営の悪化などの問題が生じている。また,日本は,2040年に65歳以上の高齢者人口がピークを迎えるいわゆる「2040年問題」を抱えており,さらに人口減少に伴う労働者人口の減少も進む中で医療従事者の確保も,医療機関にとっては大きな課題となっている。このような状況において,医療機関には,限られた医療資源の有効活用を図るための効率化を推し進め,質の高い医療を提供するための取り組みが求められている。GEヘルスケア・ジャパンでは,この課題に向け,人工知能(AI)やビッグデータの活用をするためのソリューションを提供していく。今回の展示テーマ“Intelligently Efficient”は,このような姿勢を表していると言える。
“Intelligently Efficient”のソリューションとして,今回の展示では,モダリティだけでなく,AIやデータドリブンへの取り組みを大々的にアピールした。AIについては,「Edison」ブランドを展開しており,その開発環境である「Edison Platform」で開発を進めている。モダリティに組み込まれるAIアルゴリズムである“Edison Smart Devices”の技術として,今回,ディープラーニングを用いたMRIの画像再構成技術“AIR Recon DL”を発表した。この技術は,MRIの新プラットフォーム“AIR IQ Edition”でて提供される。また,AIを画像診断のワークフローに組み込むための技術として“Edison AI Orchestrator”も発表した。同社のAIソフトウエアだけでなく,東陽テクニカ社,エルピクセル社といったパートナー企業の製品も,シームレスに読影業務で使用できるという。
一方で,データドリブンのためのソリューションとして,「コマンドセンター」を発表した。コマンドセンターは電子カルテなどの医療情報システムの情報からリアルタイムに病床やスタッフの状況を分析・可視化して,ユーザーに提示する。日本国内では,滋賀県の社会医療法人誠光会草津総合病院において,4月1日から運用が始まっている。
また,COVID-19のまん延により,保守サービスなどの医療機関への訪問活動が困難な状況を踏まえて,新たな会員制サービス「OriGEn」を4月1日から開始したことを発表した。専用アプリケーション“MyGEHealthcare App”でサービス依頼を行えるほか,サポート・稼働情報などの一元管理が可能。また,CTやMRIといったモダリティの日常点検の実施や,安全管理のためのeラーニングコンテンツなどを提供するポータル“Future”を利用できる。
なお,ITEM後の4月22日には,恒例の成長戦略発表会を開催した。この場において,多田荘一郎代表取締役社長兼CEOは,医療機関にはリアルタイムデータに基づく迅速な意思決定,行動変容が求められており,持続可能な医療提供体制を築くことが重要だと述べた。さらに,多田社長は,プレシジョン・ヘルスの実現に向けてプラットフォームを整備し,医療機関や企業とのパートナーシップを推進していくことをアピールした。
●MRI:“AIR Recon DL”などMRIの画質向上と検査時間短縮を図る新プラットフォーム“AIR IQ Edition”を発表
●ヘルスケア・デジタル(1):AIソフトウエアをワークフローに組み込むための“Edison AI Orchestrator”をPR
●ヘルスケア・デジタル(2):リアルタイムでの病床管理や看護師の要員配置などの意思決定を可能にする「コマンドセンター」
●サービス:タブレットから保守依頼や消耗品購入,日常点検などを行えるリモートサービス「OriGEn」の提供を開始
●MRI:“AIR Recon DL”などMRIの画質向上と検査時間短縮を図る新プラットフォーム“AIR IQ Edition”を発表
GEヘルスケア・ジャパンのブースで一際来場者の視線を集めていたのが,MRIのコーナーだ。今回は,実機展示を行わなかったものの中身で勝負とばかりに,MRIの画質や検査のスループットを向上させる革新的な技術を発表した。それが,新プラットフォーム“AIR IQ Edition”である。同社では,2019年に,高画質と被検者の快適性を両立し,ワークフローの改善も図る“AIR Technology”を発表。ITEM会場ではAIR Technologyを搭載したブランケットのような“AIR Anterior Arrayコイル(AIR AAコイル)”を披露した。今回発表したAIR IQ Editionは,高画質と被検者の快適性,ワークフローの改善というAIR Technologyの思想をさらに,進化させたものと言える。
まず,高画質のための進化として,従来の画質を大幅に向上させる画像再構成技術“AIR Recon DL”と“AIR Recon”を紹介した。AIR Recon DLは,高画質化のためにディープラーニングによる学習を行った画像再構成技術。「Edison Platform」で開発された。k空間フィルタを用いずにrawデータにアルゴリズムを適用することで,MR信号を効果的に画像に反映できるようにした。学習には,高SNR・低SNR画像,高分解能画像・低分解能画像,トランケーションアーチファクトの多い画像・少ない画像を使用。これによって,SNRの優れた,鮮鋭度の高い,トランケーションアーチファクトを抑えた高分解能画像の生成を可能にした。AIR Recon DLを適用することで,従来装置と同等の撮像時間で高画質化を図ったり,従来装置と同等の画質を維持して撮像時間の大幅に短縮したりできる。もう1つの画像再構成技術であるAIR Reconは,コイルエレメントのノイズレベルから,受信チャンネルごとに重み付けを行う。この新たなアルゴリズムにより,画像の背景ノイズや撮像領域外のアーチファクトを低減。全身でSNRの高い画像を取得できる。
AIR IQ Editionには,このほかにもEdison Platformで開発された技術が採用されている。自動位置決め機能である“AIR x”は,3万6000に及ぶ画像データを用いたディープラーニングにより頭部や膝関節のスライス設定を行う。オペレータの操作を効率化するとともに,スループットが向上する。またオペレータの技能によらず,常に高精度の画像を取得できるようになる。
さらに,AIR IQ Editionには,新たな3D撮像のアプリケーション“oZTEo”も用意される。oZTEoは独自のゼロTE技術を応用し,従来困難だった骨の画像を取得できようになり,骨折線も明瞭に描出する。そのため,従来の一般撮影後にCTで骨折線を確認した後MRIで炎症を確認するという検査の流れを変え,CTを省略できる可能性がある。
このAIR IQ Editionは,同社が現行販売している3Tと1.5T 装置に搭載される。すでに装置を導入ずみ施設は,バージョンアップやアップグレードにより,AIR IQ Editionを使用できるようになる。搭載製品としては,3T MRIの「SIGNA Architect AIR IQ Edition 3.0T」「SIGNA Pioneer AIR IQ Edition 3.0T」,1.5T MRIの「SIGNA Voyager AIR IQ Edition 1.5T」「SIGNA Explorer AIR IQ Edition 3.0T」などがある。
このうち,1.5T装置の最上位機種であるSIGNA Voyager AIR IQ Edition 1.5Tは,ハードウエアが刷新された。軽量化と静磁場均一性を向上した新型マグネット“IPM(Innovative Platform Magnet”を採用しており,稼働時に必要となるヘリウム量も50%以上削減。世界的にヘリウムガスが高騰する中,コストを抑えた運用が可能である。また,ガントリもエルゴノミクスに基づいた操作性に優れたデザインへと変更された。着脱可能な寝台もワイド設計となり,体格の大きな被検者の検査が容易になったほか,肩の撮影などにおいてもアイソセンタとなるようポジショニングをしやすくなる。
●ヘルスケア・デジタル(1):AIソフトウエアをワークフローに組み込むための“Edison AI Orchestrator”をPR
ヘルスケア・デジタルのエリアでは,AIブランド「Edison」の展開が紹介された。Edisonは,AIを開発するための基盤「Edison Platform」,パートナー企業の製品を含めてAIソフトウエアの販売から導入,保守までを行う「Edison Ecosystem」,そして,臨床現場でAIソフトウエアを使うためにワークフローに組み込むEdison AI Orchestratorを展開している。
Edison Platformは,Amazon Web Servicesとのパートナーシップの下,開発環境を構築して,自社だけでなくスタートアップなどパートナー企業にも開放し,画像診断分野のAIの開発を進めている。開発されたAIアルゴリズムは,ソフトウエア単体で提供される“Edison Applications”とモダリティに組み込まれる“Edison Smart Devices”に大別される。Edison Applicationsは,ワークステーション「AW Server」や画像ビューワ「Universal Viewer」で使用できるほか,他社の画像ビューワとも連携することが可能だ。一方,Edison Smart Devicesとしては,AIR Recon DLやCTの画像再構成技術“TrueFidelity Image”など,すでに多くのモダリティへの実装が進んでいる。また,同社ではAIの開発戦略を,検査前から撮影後のrawデータの状態までを“UPSTREAM”,撮影後のDICOMデータを用いるAIアルゴリズムを“DOWNSTREAM”に分けている。UPSTREAMには,AIR Recon DLやAIR x,TrueFidelity Imageがある。対して,DOWNSTREAMには,AW Serverに搭載される解析アプリケーション“Bone VCAR”や“PROView”などがあるほか,パートナー企業のAIソフトウエア,Edison AI Orchestratorがある。
Edison Ecosystemでは,Edison Applicationsのほか,パートナー企業のAIソフトウエアをユーザーに対してまとめて提供する。ユーザーにとっては,負担となるAIソフトウエアの選定や契約,導入作業を簡略化でき,効率化を図れる。
さらに,Edison AI Orchestratorは,診断における医師の負担を大幅に軽減する。検査種ごとに,どの段階でどのようなAIソフトウエアを用いるかを直感的に扱えるインターフェイスで設定する。これにより,従来の診断のワークフローを大幅に変更することなく自然にAIソフトウエアを扱えるようになり,なおかつ不要となった作業を省略できるようになる。Edison AI Orchestratorでワークフローに組み込めるパートナー企業のAIソフトウエアとしては,ITEMの時点で東陽テクニカ社の“ClearRead CT-VS”(胸部CT画像の肺血管透過処理)と“ClearRead BS”(胸部X線画像の骨組織透過処理),エルピクセル社の“EIRL Lung nodule”(胸部X線画像からの肺結節候補域検出)と“EIRL Brain Aneurysm”(MR画像からの脳動脈瘤検出)を準備している。
●ヘルスケア・デジタル(2):リアルタイムでの病床管理や看護師の要員配置などの意思決定を可能にする「コマンドセンター」
電子カルテなどの医療情報システムが普及する中,医療機関内には膨大なデータが蓄積されるようになる。このビッグデータをどのように診療や経営に活用していくかが,医療機関にとっては大きな課題となっている。GEヘルスケア・ジャパンでは,この課題を解決するためのソリューションとして今回,コマンドセンターを紹介した。コマンドセンターは電子カルテシステムやICUなどの部門システムのデータをリアルタイム収集。病床の稼働状況や看護師などのスタッフの勤務状況といった絶えず更新される施設内の情報を可視化し,病床の割り当て,スタッフの配置をタイムリーに分析できるようにして,意思決定を支援する中央集中管制塔システム。データの統合分析サーバとクラウド上で動作する “タイル”と呼ばれるアプリケーションで構成される。米国では,すでにジョンズ・ホプキンズ病院をはじめ複数の医療機関で稼働している。
日本国内では,滋賀県の草津総合病院において4月1日から運用が始まった。同院では,タイルとして,リアルタイムに病床全体の稼働状況を可視化する“Capacity Snapshot”,病床ごとに医療従事者のリソースを可視化して,調整・再配分に役立てる“Staffing Forecast”,特定条件を設けて病床を区分し,その区分ごとに病床の状況を可視化する“Unit Event”,患者ごとのケアタスクを優先度とともに表示して,患者の入れ替えを円滑に行うための“Discharge Tasks”,入院患者の需要予測をする“Inpatient Growth”,ICUやHCUの病床マネージメントを効率化するために重症患者の対応状況を可視化する“News Scoring”,入院・退院・転入・転出情報を一覧表示する“Patient Flow”が利用されている。
●サービス:タブレットから保守依頼や消耗品購入,日常点検などを行えるリモートサービス「OriGEn」の提供を開始
COVID-19まん延の影響により,現在メーカー各社は,保守サービスなどを目的とした医療機関への訪問活動が十分できていない状況にある。これは,ユーザーにとってもモダリティの安全管理上のリスクにつながり,課題となっている。このような状況を踏まえて4月から開始したのが,新しい会員制リモートサービスのOriGEnである。
OriGEnは,GEヘルスケア・ジャパンのモダリティを導入している施設を対象にサービスが提供される。会員は,専用タブレットを用いて,モダリティのサービス依頼やサポート状況を管理する“MyGEHealthcare App”や,消耗品などを購入できる「GEヘルスケアショップ」を利用できる。さらに,オプションの「OriGEn Basicサービス」では,LINEやMicrosoft Teamsにより同社社員と容易にコミュニケーションがとれ,オンライン会議や同社が主催するオンラインセミナーにも参加できるなど,情報提供を受けられる。また,医療機器安全管理ポータル「Future」も利用できる。
MyGEHealthcare Appは,モダリティの管理と運用を効率化するために修理・点検履歴記録や稼働状況などのデータを可視化するサービス「iCenter」のユーザーを対象にしている。iCenterでは,検査を担当する診療放射線技師ごとの検査内容や装置ごとの稼働率といったデータの分析が可能で,検査の標準化や検査枠の増加などを図れる。タブレットからサービスの対応依頼や対応状況の確認をでき,サービス対応のスケジュールの管理も可能だ。GEヘルスケアショップは,必要なときにすぐにオンラインで備品や消耗品の発注ができるため,時間を無駄にすることなく,速やかに注文品を受け取れる。さらに,誤発注の削減にも有効だという。OriGEn Basicサービスでは,セミナーなどのイベントの案内を非対面で受け取ることが可能となり,ユーザーが必要なときに情報にアクセスできるようになった。Futureでは,モダリティの日常点検をタブレットで管理を行える。また,モダリティの操作マニュアルも動画,静止画で用意されており,安全管理に関するeラーニングコンテンツ“e-Training”も提供される。
●お問い合わせ先
社名:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
住所:東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021
URL:http://www.gehealthcare.co.jp/