放医研,医療被ばく情報の自動収集・解析システムの試験運用を開始
〜放射線診断での被ばく線量の適切な低減に向けた取組への道筋〜

2015-2-2


独立行政法人放射線医学総合研究所(以下,「放医研」)では,国内の医療被ばくの実態を把握することを目的として医療機関及びメーカと連携し,CT装置など画像診断装置から医療被ばくに関する情報を自動収集しデータベース化するシステムを稼働させた。

放射線診断による被ばく線量の適切な低減を進めるための参考となる「診断参考レベル」(Diagnostic Reference Levels :DRL)の使用がICRP( International Commission on Radiological Protection:国際放射線防護委員会)により勧告されている。これは,放射線診断における線量が,必要以上に高くなっていないかどうかを判断する目安となる線量指標で,国あるいは地域ごとに被ばくの実態を考慮して,年齢別,検査別,撮影部位別に値が設定される。欧米諸国では,既にDRLの導入が進められ,被ばく線量低減に役立てられている。日本においては,一人当たりの医療被ばくが世界的に見ても高いと考えられている一方,DRLの設定はなされてはいない。医療被ばく防護の観点からは,日本でもDRLが導入されることが望ましいと言えるが,その設定にはまず,国全体の放射線診断による被ばく線量の実態を把握することが必要である。

そこで放医研では,独自に開発した各医療機関の画像診断装置あるいは医療用画像管理システム(PACS)に格納されているデータを収集するツールと,様々な画像診断装置メーカが開発しているデータ収集支援ツールを用いて,自動的に医療被ばくに関連するデータを収集してデータベース化する試みを5つの医療機関と連携して開始した。その第1段階として,放医研が開発した収集ツールとGEヘルスケア・ジャパンが開発し現在市販されている支援ツールを用いて,既に東北大学病院,大阪警察病院のデータ収集が開始されている。さらに,その他3機関においても,それぞれ1か月間の情報収集を行う予定で,およそ1施設ごとに4,000検査分の実データの収集が見込まれるため,半年後には20,000件余りのデータが収集される見込み。

今後,日本の医療機関における放射線診療による被ばく線量の実態を把握し,DRLの設定を含め,正当化・最適化へ貢献するために,この医療被ばく情報の自動収集・解析システムをより多くの医療機関やメーカの協力の下に本格稼働させることを目指す。

●実証の内容と経過

以下の図に示すように協力病院に既設されているCT装置あるいはPACSに対し,放医研が開発した収集ツール,あるいはGE社製の支援ツールを接続することにより,被ばく情報を検査単位で自動収集する。この場合,CT装置から出力される情報は,DICOMで規格化された情報に限定さる。なお,これらの収集ツールから放医研のデータベースに情報を送信する手法には,オンラインで直接データベースに送信する方法と,CD-Rなどの媒体を利用する方法があるが,これらの選択は医療機関のセキュリティポリシーに依存する。
既に東北大学病院と大阪警察病院にて実際の情報の収集を始め,1月の下旬には放医研のデータベースに情報を格納する予定。
また,収集された情報は,分析を行い診断参考レベルなどの算出に利用されるほか,各協力機関は,他の医療機関の情報との比較参照をweb上で行うことがでるため,各医療機関における被ばく線量のばらつきの低減も期待できる。

流れ

 

●問い合わせ先
独立行政法人 放射線医学総合研究所 企画部 広報課
TEL 043-206-3026
FAX 043-206-4062
E-mail:[email protected]
http://www.nirs.go.jp


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