自治医科大学発ベンチャー・DeepEyeVision,AIを活用した緑内障診療の精度向上に向けた研究開発に着手
OCT(光干渉断層計)画像からAIで視野を推測し,患者や医療機関の負担軽減を目指す

2024-9-17

AI


自治医科大学発ベンチャー・DeepEyeVision(株)(以下「DeepEyeVision」)は,日本の中高年における失明原因の第一位である緑内障に関する診療の精度向上と,治療時の患者の負担軽減を目的とし,OCT(光干渉断層計)で撮影された目の断層画像から,AIを用いて緑内障の診療に必要な,「視野」に関する値を推測する手法の研究開発に取り組む。

1.研究開発の背景

日本において,緑内障は,40歳以上の20人に一人が罹患しており,また,中高年における失明原因第一位の疾患(※1)であることから,急速な高齢化が進む日本の健康寿命を短くする要因の一つとなっている。
また,緑内障は早期発見と早期の治療の開始によって,病状の進行は遅らせられるものの,完治は見込めない疾患であることから,治療開始後は,永続的に通院や,視野欠損の把握を目的とした,高い集中力が必要となる視野検査等が必要となり,患者にとって,経済的・精神的に大きな負担がかかるという社会課題がある。
くわえて,医療機関にとっても,緑内障の治療にあたっては,1回あたり15分程度かかる視野検査(※2)の実施が必要になるなど,医療スタッフの大きな負担になっているという課題がある。

2.研究内容と意義

そこで,DeepEyeVisionでは,AIを用いて初期緑内障の診療精度向上ならびに検査の効率化を実現させる手法の研究開発に着手した。具体的には,ディープラーニング技術を用い,OCT(光干渉断層計)で撮影された目の断層画像から視野を推測するプログラムを開発し,視野欠損の把握に必要な検査時間を大きく削減することで,患者ならびに医療機関の負担を軽減する(※3)ことを目指す。加えて,プログラムによって得られた定量的な計測結果を,患者ごとにデータベースとして蓄積していくことで,医師による治療方針の策定支援に活用する手法の開発も探索する。

OCTデータ,24度+10度視野推測

OCTデータ,24度+10度視野推測

 

また,DeepEyeVisionでは,本研究開発推進のために,日本眼科AI学会等でハンフリー視野を推測するAIモデルを発表(※4)している古山 誠氏(医師,千葉県君津市「南子安眼科」院長)を同社顧問に迎えたほか,自治医科大学,筑波大学などの複数の学術機関や,国内外のOCTメーカーとの技術交流等を開始している。
これらの取り組みを通じて,DeepEyeVisionでは,本プログラムの将来的な社会実装(※5)とともに,緑内障によって健康を損ねる患者を一人でも多く減らすことを目指す。

3.第35回日本緑内障学会でのシンポジウム登壇と併設器械展示会への出展について

本研究に関して,DeepEyeVisionの顧問である古山 誠氏が,以下要領にて登壇する。

・第35回日本緑内障学会シンポジウム
シンポジウム2「緑内障のprecision medicineを目指したゲノム情報,ビッグデータ,AIの利活用」
日時:2024年9月20日(金) 15:25-16:55
会場:アクリエひめじ 第1会場(2F大ホール)
演題:3次元AIモデルを活用した緑内障診療支援
発表者:古山 誠(南子安眼科,DeepEyeVision(株) 顧問)
https://www.congre.co.jp/jgs2024/program/index.html

また,同学会併設器械展示会にて,本AIモデル(※6)のデモンストレーションを実施する。(学会に申請を行った上での,薬機法未承認品としての展示につき,販売・授与は一切できない)

・第35回日本緑内障学会 併設器械展示会
会期:2024年9月20日(金)~22日(日)
会場:アクリエひめじ 展示場A+B
小間番号:34
出展者名:DeepEyeVision(株)

■本研究開発に関するコメント(敬称略)

筑波大学 眼科 大鹿哲郎 教授からのコメント
古山 誠先生(DeepEyeVision(株)顧問,南子安眼科院長,筑波大卒)が取り組んできた視野推測AIは,緑内障患者の負担を大きく軽減し,治療成績を向上させる画期的な技術である。眼科AI分野で貢献してきたDeepEyeVisionとの協業により,眼科医療の進展と失明予防のさらなる発展が期待される。

山梨大学 医学部 眼科学教室 柏木賢治 教授(科長)からのコメント
緑内障診療への期待
失明原因の第一位である緑内障は加齢が発症の大きなリスクのため,高齢化が進む今日では,患者数はさらに増加することが想定されています。緑内障は回復不可能な視機能の障害を来すため,その早期発見と適切な治療が重要となり,そして,早期発見のためには多くの医療人材や資源の確保が,また適切な治療のためには患者の協力が必要ですが,現状ではいずれも充分ではなく,この状況の克服は容易ではありません。DeepEyeVision社が取り組もうとしている研究開発はこれら現在の緑内障が有する課題の解決に大きく寄与することが期待されます。

(※1)日本緑内障学会:日本緑内障学会多治見疫学調査報告書,2012
(※2)視野検査の手法および機器には複数の種類が存在し,また,医療機関の検査手法や検査目的により,検査時間は増減する。
(※3)従来の視野検査を代替させることは企図していない。
(※4)2021年 第2回日本眼科AI学会総会 眼科AIコンテスト 第1位入賞
古山. OCT画像から視野を推測する3次元の緑内障AIモデルについて, 2022
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202254722768345
Koyama M et al. 2024. OCT-based Visual Field Estimation Using Segmentation-free 3D CNN Shows Lower Variability than Subjective Standard Automated Perimetry.
MedRxiv doi: https://doi.org/10.1101/2024.08.17.24312150
(※5)医療機器プログラム(SaMD)の設計開発等も企図しているが,学術的観点および薬機法等の各種法規制に則り,今後,具体的な計画を策定していく。また,本発表に記載したアルゴリズムは,必ずしも,今後,DeepEyeVisionが設計開発を行う予定の製品に適用されるものではない。
(※6)本モデルは,未承認医療機器(非医療機器)として,学会に申請を行った上で展示されるものであり,DeepEyeVisionが設計開発を行う予定の製品とは異なる。

 

●問い合わせ先
DeepEyeVision(株)
E-mail: [email protected]

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