ウィーメックス,「ChatGPT」と音声認識AIを搭載した薬歴入力支援システム,ツルハホールディングスの実店舗におけるトライアル利用を開始
~ 薬歴作成所要時間の約60%削減を見込む ~
2024-5-17
PHCホールディングス(株)傘下の ウィーメックス(株)(以下「ウィーメックス」)は,生成AI「ChatGPT」と音声認識AIを搭載した薬歴入力支援システム(※1)について,2024年5月より,(株)ツルハホールディングス傘下のツルハドラッグの一部店舗におけるトライアル利用を開始した。
■背景
薬剤師が薬歴の記載業務に掛ける時間は,1日当たり約1時間25分と言われており(※2),対物から対人業務への転換が求められている薬局・薬剤師にとって,薬歴の記載業務が大きなハードルのひとつとなっている状況がある。また,薬局の開局時間中は,患者対応・服薬指導・疑義照会・不足薬剤発注などの業務に追われ,薬歴記載は閉局後となるケースも多く,薬剤師の残業時間の増加も指摘されている。ウィーメックスは,薬剤師の業務効率化・薬歴記載時間の削減に貢献すべく,2023年より生成AI「ChatGPT」と音声認識AIを活用した薬歴入力支援システムの開発を進めてきた(※3)。2023年秋に実施した社内検証においては,1件の薬歴記載にかかる時間が薬剤種類数6種未満の場合で平均1.5分(通常3.9分→61.5%削減),6種以上の多剤調剤時で平均2分(通常6.3分→68.3%削減)(※4)と,大幅な削減を記録した。今回のトライアルでは,ツルハドラッグの協力を得て,実際の店舗で薬歴入力支援システムを2週間程度利用できる。店舗では,薬歴記載時間を計測するとともに,各種機能に対する薬剤師の要望を収集し,2024年夏の発売に向け,更なる改良点を探る。
■薬歴入力支援システムの流れと特長
特長1:対面・オンライン問わず,いつもと同じ服薬指導を行うだけで,SOAP形式でのテキスト表示が可能
特長2:服薬指導ごとにデータが蓄積されるため,時間があるときに確認・編集・薬歴への転記作業も可能
特長3:服薬指導の情報は,3省2ガイドライン(※6)に準拠した高セキュリティの国内サーバーで管理(※7)
※今回トライアル利用を行う「薬歴入力支援システム」は,ご利用の薬歴システムにコピー&ペーストで情報を転記する仕様となっている。本システムの今後の機能拡張として,ウィーメックスの電子薬歴と連携し,より簡単な薬歴入力を可能にするバージョンも開発中である。
■(株)ツルハホールディングス GR調剤戦略部長 立石 大介氏 コメント
当社はウィーメックスの「ChatGPT」活用実証実験に賛同し参画します。当社は,中期経営計画にて「臨床から臨生へ」,つまり「治療からケアへ」のスローガンを掲げ「対物から対人へ」の進化が求められる薬局業界において,薬局薬剤師の業務を「ケアに向けて開く」ことを目指しています。
この新システムは単なる作業効率化だけでなく,薬歴の中にある非定型データをアセットとして活用することで,真の意味でのEBM,SDMの実践,多職種連携やかかりつけ職能発揮のためのコパイロットとなるものと確信しております(※8)。
(※1) 特許出願中(特願2024-024868)
(※2) 出典:「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」(厚生労働省・令和3年)
(※3) 2023年10月6日プレスリリース
「ウィーメックス,「ChatGPT」と音声認識AIを活用した 薬歴入力支援システムの実証実験をスタート ~薬剤師の業務効率化,残業時間の削減に貢献~」
https://www.wemex.com/news/20231006_71.html
(※4)自社PoCでの検証データを厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第492回)議事次第」調剤についての資料内データと比較
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000846287.pdf
(※5)「SOAP形式」とは,「Subject(主観的情報=患者さんの訴え)」,「Object(客観的情報=所見や検査に基づく内容)」,「Assessment(S・Oに基づく評価)」,「Plan(計画=薬剤の内容や内服について)」のことであり,医療の場で広く使用される記録方法の一つ。
(※6) 「3省2ガイドライン」
医療機関が電子カルテや診療データをクラウドなど民間事業者が運営する外部設備に保存する際に準拠する必要がある2つのガイドライン。厚生労働省,経済産業省,総務省の3省が提示する。
(※7) Microsoftのクラウドサービス「Azure」とウィーメックスの「Medicom Cloud」の連動で,国内クラウドサーバーでの稼働をはじめ,セキュリティを高いレベルで実現している。
(※8) EBM:Evidence-Based Medicine, 根拠(エビデンス)にもとづく医療。データに基づく最善の根拠と医療者の経験,患者の価値観とを統合し,患者にとってより良い医療を目指そうとするもの。
SDM:Shared Decision Making,共同意思決定。医学情報と患者の価値観や選好に基づき,医療者と患者が協働して,患者にとって最善の医療上の決定を下すに至るコミュニケーション・プロセス。
コパイロット:もともとは副操縦士(Copilot)を意味する。AIが人間の操作や意思決定を支援する状態を指す。
●問い合わせ先
ウィーメックス(株)
E-mail:[email protected]