藤田学園,人工股関節置換手術支援ロボット「ROSA Hip」をアジアで初めて導入
10月22日にばんたね病院で1例目手術を実施
2022-10-24
藤田医科大学病院と藤田医科大学ばんたね病院に,米国ジンマー・バイオメット社が開発した人工股関節置換手術支援ロボット「ROSA Hip システム」がアジア※で初めて導入された(※オーストラリアを除く)。ばんたね病院整形外科で10月22日に1例目の人工股関節置換術を実施し,良好な成績を収めている。
〈配 備〉
藤田医科大学ばんたね病院 整形外科 1セット(新規設置)
藤田医科大学病院 整形外科 1セット(システム追加)
■手術支援ロボット「ROSA」
「ROSA」は,2007年にフランスで開発された神経外科領域・整形外科領域の手術支援ロボット。藤田医科大学病院は,2020年9月に人工膝関節置換術用の「ROSA Kneeシステム」を導入。今年9月末までに290例の置換術に成功している。
膝関節置換術用の「Kneeシステム」に加え,同じロボットに新たに人工股関節用の機能が追加されたものが,今回,両病院に配備する「ROSA Hipシステム」。同システムは,人工股関節の股関節側インプラントの設置角度サポートや両脚のバランスのズレを計測し最適なインプラントを選択できる機能など,正確なナビゲーション機能で手術中の執刀医をサポートするのが特長で,これまで術者の経験にゆだねられていたインプラントの設置をロボットがアシストすることによって,より低侵襲で合併症リスクの少ない手術を可能としている。「ROSA Hipシステム」による人工股関節置換手術は保険適応となっている。
〈ROSA Hipの特長〉
- 通常手技に近い感覚で術者の自由度が高く,効率的にロボットのサポートを受けられる
- 一方で,経験やイメージではなく数値で示されることで,これまで気づかないような誤差の範囲を数値として可視化。蓄積された数値をフィードバックすることで,より安全・安心な手術が可能に
- 両脚のバランス差を測定する機能があり,術中の状況を見ながら最適なインプラントの選択
- ナビゲーションやロボットで使われるピンが不要で低侵襲でのオペが可能
- インプラントの設置角度を1.0°,1.0mmといった細かい単位で設定できる
- 一般的な側臥位(横向き)ではなく,仰臥位(仰向け)でアプローチすることによって,最小侵襲手術と呼ばれるMIS法との併用が可能となり,より低侵襲な手術が実現できる
- 通常,CT撮影での術前計画をX線撮影で実施するため,患者の被ばくリスクが軽減
- 熟練度に関わらず,安全で正確な手術が可能に。技術の平準化が図れる
- ROSA Kneeの本体に,人工股関節置換術のシステムをインストールし,ハンドル部分を入れ替えることで,人工股関節置換術のサポート機能を追加することが可能
■難易度が高い人工股関節置換術
人工股関節置換術は,保存療法を行っても十分な効果が得られない場合や,重度の変形性股関節症および先天性の股関節形成不全の患者などを対象に,最も多く選択されている治療法。股関節の損傷している部分を人工股関節に置き換えることで,痛みを取り除き,歩く力を取り戻すことを目的としている。
人工関節がもとの関節のような自然な動きをするには,インプラント(人工関節)を正確な角度で骨盤に設置することが大切である。しかし,一人ひとり顔が違うように関節の形も人によってそれぞれ異なる。そのため,手術は術者の経験によるところが大きく,インプラントの設置角度や筋肉・腱といった軟部組織への侵襲程度などによって患者の予後に差が出ることが課題であった。手術支援ロボットは,正確性が担保されることで,術者の熟練度にかかわらず良好な手術成績が期待できる。
■MIS法+ロボット支援手術でより体への負担が少なく
藤田医科大学整形外科では,MIS法(最小侵襲手術)と呼ばれる術式による人工膝・股関節置換術に積極的に取り組んでいる。同術式は,筋肉・靱帯・腱など関節の周辺組織に可能な限りメスを入れず行うため,
・従来の術式と比べて痛みが少なく,回復が早い
・筋肉を切らないため術後早期の脱臼が少ない
・可動域が制限されないため,スポーツへの復帰等も可能
・従来法の約半分ほどの切開で済むため,審美的に優位
などのメリットがある。
一方で同術式は難易度が高く,専門的な知識と高度なテクニックが必要という課題もある。同術式にロボット支援手術を組み合わせることで,これらの課題を克服し,さらなる低侵襲手術の普及およびそれによる患者のQOL向上が期待できる。
●問い合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部
TEL 0562-93-2868・2492
MAIL:[email protected]