北原病院グループとNEC,新技術等実証制度(「規制のサンドボックス制度」)を活用し,生体認証を用いた本人意思に基づく救急医療の実証を開始
〜救急搬送を受け入れる医療機関において,あらかじめ保管しておいた治療についての本人意思を生体認証で確認するシステム「デジタルリビングウィル」を実証〜
2019-7-9
東京都八王子市を拠点とする北原病院グループ(医療法人社団KNI(注1,以下 KNI)と(株)Kitahara Medical Strategies International(注2,以下 KMSI)は,日本電気(株)(注3,以下 NEC)と協力し,KMSIの会員制医療・生活サポートサービス「北原トータルライフサポート倶楽部」(注4)の会員を対象に,一人ひとりの受けたい医療や希望する生活に関する「意思」を取得・保管し,必要時に提携医療機関に提供することで救急医療等に活用可能なシステム「デジタルリビングウィル(以下 DLW)」の実証を7月より開始した。
今回の実証を開始するにあたり,KMSIは「新技術等実証制度」(いわゆる「規制のサンドボックス制度」)の認定を本年6月28日に取得した(注5)。本実証を通じて,救急医療受入時における生体認証による本人確認や,事前同意を踏まえた医療行為の提供等に関する効果検証を行う。なお,医療分野において,顔画像や指静脈・指紋による生体認証を用いた本人確認を活用した実証計画の認定は初めてとなる。
世界一の超高齢社会である日本では,高齢単身者の急増が社会課題の1つとなっている。高齢単身者の救急搬送を受け入れる医療機関では,迅速に検査や治療を開始しなくてはならない状況にも関わらず,家族を探して同意を得た上で検査や治療を開始することが求められるため,適切な医療提供の遅れや医療従事者の業務量増加が課題となっている。
また,高齢単身者の場合,救急医療が必要となった局面において,別居する家族の意見により,当事者本人の希望に沿わない医療が提供されるという事態も発生している。
これらを解決するには,一人ひとりの受けたい医療や希望する生活に関する「意思」を事前に取得・保管し,必要時にこれを提携医療機関等に提供して活用する仕組みと,それを支える制度基盤が重要となる。
これまでKMSIは,今後一層進む少子高齢化や,それと同時に問題化する社会保障財源の枯渇の中で,医療・社会の機能を維持するためのモデル「八王子モデル」(注6)を提唱するとともに,2018年3月から包括的な生活サポートを行う会員制のサービス「北原トータルライフサポート倶楽部」を提供している。
今回の実証では,「北原トータルライフサポート倶楽部」の会員を対象に,医療機関の救急医療受入時において,生体認証を用いた本人確認の円滑かつ安全な実施,DLWに登録された本人意思の確認,および,救急医療等の効率的・効果的な実施に資することについての確認を行う。生体認証を用いた本人確認は,世界トップクラスの技術や豊富な実績のあるNECの生体認証「Bio-IDiom」(注7)の顔認証や指静脈・指紋認証を組み合わせて行う。
将来的には,本システムが社会実装されることにより,患者の受けたい医療や希望する生活を守るとともに,救急医療現場での迅速かつ適切な医療提供や医療従事者の負担軽減を目指していく。
●実証の範囲
- 実証期間:2019年7月1日から2020年6月30日まで(1年間)
- 実施場所:KMSI,KNI,八王子市内の提携医療機関(1~3箇所程度)
- 参加者等の範囲:
- 北原トータルライフサポート倶楽部会員で規制のサンドボックス制度による実証の説明を受け,協力することに同意した方
- 救急搬送された会員以外の患者で生体認証データの検証が必要として依頼した方のうち同意した方
- 規制のサンドボックス制度による実証の説明を受け,協力することに同意した提携医療機関
北原病院グループとNECは,安心・安全・快適な超高齢社会の実現を目指し,2017年から共創活動(注8)を開始している。これまでもICTを用いて徹底した業務の効率化と医療の質を向上させるデジタルホスピタル(注9)の実現のために新技術の開発を続けてきた。
今後,超高齢社会とその先の未来において,人々の安心・安全・快適な生活を送れるトータルライフサポートの実現に向け,医療をツールとした社会改革を進めていく。
(注1)医療法人社団KNI:所在地:東京都八王子市,理事長:北原茂実
(注2)(株)Kitahara Medical Strategies International:所在地:東京都八王子市,代表取締役:檀香
(注3)日本電気(株):本社:東京都港区,代表取締役 執行役員社長 兼 CEO:新野隆
会員制のサービスで,登録された会員様の意志情報・医療情報・生活情報をもとに包括的な生活サポートを提供する。会員は加入時に自身の健康状態から想定される医療行為や突然の事故,病気の際の緊急処置など様々な状況に応じて,自分にとって最も望ましい対応(検査や治療の承諾,延命治療の有無など)を登録しておくことによって,実際に病気になったときなどに協力医療機関での速やかな対応を受ける事が可能になる。これにより病気の早期回復と,家族や関係者の様々な負担の軽減が期待できる。医療行為は協力医療機関である医療法人社団KNI(所在地:東京都八王子市,理事長:北原 茂実)が提供する。
本サービスでは基本健診パックなどの医療・介護サービスはもとより,会員のみが利用できるオプションサービスとして,「医療相談(コンシェルジュ)サービス」,「自費リハビリテーションサービス」,「生活支援サービス」,「終活サポートサービス」などの提供を行い,病気になる前の会員,病院を退院した後の会員の生活全般を支えていくためのサービスとなっている。また本サービスにかかる費用や協力医療機関での医療費の支払いをキャッシュレスで可能とするサービス「トータルライフサポート信託」が別途,三井住友信託銀行(株)の提供により利用可能となる。
(注5)新技術等実証制度(いわゆる「規制のサンドボックス制度」)
新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進することを目的に,生産性向上特別措置法(2018年6月6日施行)に基づき創設された。
本制度は,参加者や期間を限定すること等により,既存の規制の適用を受けることなく,新しい技術等の実証を行うことができる環境を整えることで,迅速な実証を可能とするとともに,実証で得られた情報・資料を活用できるようにして,規制改革を推進する制度。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/regulatorysandbox.html
(注6)八王子モデル:
八王子モデルは今後一層進む少子高齢化と,同時に問題化する社会保障財源の枯渇の中で,医療・社会の機能を維持するためのモデルで,北原トータルライフサポート倶楽部,デジタルリビングウィル,ヒーリングファシリティーとデジタルホスピタルから構成されている。まず東京都八王子市で上記システムを完成させ,それを日本中に広めていくことで,国の財源に頼らないサスティナブルな医療・社会の実現を目指している。
(注7)NECの生体認証「Bio-Idiom」:
「Bio-IDiom(バイオイディオム)」は,顔,虹彩,指紋・掌紋,指静脈,声,耳音響など,NECの生体認証の総称。世界トップクラスの技術や豊富な実績を活かし,ニーズに合わせて生体認証を使い分け,あるいは組み合わせることで,「誰もが安心してデジタルを活用できる世界」を実現していく。
NECの生体認証 https://jpn.nec.com/solution/biometrics/index.html
(注8)北原病院グループとNECの共創活動:
2017年10月23日プレスリリース 『医療法人社団KNIとNEC,AIを活用した医療・社会改革に向けた共創を開始』
https://jpn.nec.com/press/201710/20171023_01.html
2018年11月6日プレスリリース『医療法人社団KNIとNEC,デジタルホスピタルの実現に向けたAI活用の実証効果を確認』
https://jpn.nec.com/press/201811/20181106_01.html
(注9)デジタルホスピタル:
IT/AIを駆使してそれ自体が患者の状態を把握し治療する機能を持つ全自動運転化された病院を指す。現在,NECをはじめ,様々な企業や大学と共同開発を進めており,既に試験的に不穏予知システム,音声入力診療支援システム,生体認証セキュリティーシステム,自動患者搬送システム,予後予測システムなどの運用を開始している。デジタルホスピタルが実現することで「働き方改革」が促進され,医療現場の生産性を飛躍的に向上させることができる。
●問い合わせ先
(株)Kitahara Medical Strategies International
北原トータルライフサポート倶楽部 事務局 奥田,峯尾
TEL 042-642-8882
E-Mail:[email protected]
医療法人社団KNI 広報部 亀田
TEL 042-645-1356
E-Mail:[email protected]
NEC 医療ソリューション事業部
E-Mail:[email protected]