京都薬科大学,セラノスティクス創薬研究基盤を構築
〜分子イメージング研究の新たな領域を創造し,世界貢献を目指す〜
2018-6-21
京都薬科大学は2018年6月15日,放射性同位元素研究センターにベルギーMOLECUBES社製の最新鋭SPECT(単光子放射型コンピューター断層撮影)装置およびX線CT(コンピューター断層撮影)装置を導入した。同時に,同研究センターで扱える放射性同位元素を18核種から60核種へと大幅に拡充した。これにより,さまざまなタイプのがんの診断と治療を並行して行えるセラノスティクス創薬を目指す研究基盤を構築,がんのさらなる早期発見・早期治療につなげる先端的研究を開始した。
「セラノスティクス(Theranostics)」は,治療(Therapeutics)と診断(Diagnostics)を組み合わせた新しい医療技術で,PET(陽電子放射型断層撮影)やSPECTのように病巣を目で見えるようにできる放射性薬剤を使った「分子イメージング技術」で“病気の診断”を行うとともに,同じ仕組みで治療用の放射性薬剤を患部に送り込み病巣だけを狙った「放射性同位元素内用療法」で“病気の治療”ができるようにする方法。この方法をがん治療に応用すると非常に小さな初期段階のがんを捉えることができ,これまでよりもずっと早期に治療を始められる。また,患者さんの身体の負担も大きく軽減できる。
本学では関連研究分野の研究者からなる「セラノスティクス創薬研究」グループを発足させ,前立腺がん,乳がん,肺がん,膵がんなどを対象とする精度の高い診断薬および治療薬の開発を,これまで培った本学独自の開発手法や化合物ライブラリーを用いて始めている。
今回導入した最新鋭「SPECT」装置は,体内に投与した放射性薬剤から放出される放射線を特殊カメラでとらえコンピューターで精密に画像化する装置。得られた画像から血流量や代謝機能を調べることができ,病気の状態をリアルタイムで知ることができる。このため,がん・中枢神経疾患・心疾患などの検査で特に重要な役割を果たすと期待されている。さらに,「SPECT」装置に「X線CT」装置を組み合わることで,診断の精度を格段に向上させることができる。
また本学は,学部学生が「セラノスティクス創薬研究」に加わることで,新しい診断・治療法に対する深い理解と実践能力を持つ次世代型薬剤師の育成を進める計画。同時に,放射性医薬品製薬企業・病院・国内外の大学や研究機関などと連携しつつこれまでにない創薬シーズを探し出し,京都薬科大学から世界に向けて新しい医療を提供することを目指している。
SPECT装置およびX線CT装置の概要は次の通り。
■SPECT装置およびX線CT装置で撮影した画像例(MOLECUBES社提供)
■導入する装置について※
1)SPECT装置(γ-CUBE)
2)X線CT装置(X-CUBE)
【特徴】
・卓上型で操作性に優れる
・双方で取得した画像を高精度に重ね合わせられる
・小動物を対象とした形態・機能情報の融合解析が実現可能
(※)γ-CUBEとX-CUBEの導入は,アジアでは初めて
(※)他の導入機関
ペンシルバニア大学(米国),シカゴ大学(米国),ゲント大学(ベルギー),デュースブルク・エッセン大学病院(ドイツ),アーヘン工科大学病院(ドイツ)
■分子イメージング技術について
放射線技術などを使って,人間の体内にある遺伝子やたんぱく質などの分子の動きを画像でとらえる技術のこと。代表的な臨床応用例がFDG-PETによるがんの診断。
分子イメージング技術の創薬支援や治験・診断支援への展開が試みられており,患者個人の詳細な生体情報を統合し最適な治療法を選択する新しい医療アプローチ(プレシジョン・メディシン)の中心的役割を果たすと期待されている。
■放射性同位元素研究センターについて
放射性同位元素を用いたライフサイエンス研究を実施するための共同利用施設。同センター内に長期飼育が可能な動物飼育施設も完備。同センターを核として,各研究分野,創薬科学フロンティア研究センター,共同利用機器センターおよびバイオサイエンス研究センターが連携し,がん・中枢神経疾患・心疾患を対象とした先端的分子イメージング法の開発やセラノスティクス創薬研究への応用を進めている。
●問い合わせ先
京都薬科大学 代謝分析学分野
准教授 木村 寛之
TEL 075-595-4630 FAX 075-595-4750
E-mail: [email protected]
https://www.kyoto-phu.ac.jp/