東芝,日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ®v2」を用いたゲノム解析サービスを開始
2017-10-27
(株)東芝は,大学,病院臨床部門,製薬企業などの研究機関向けに,日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ®」を用いたゲノム解析サービスを2014年12月から実施注1してきた。今回,ゲノム解析で有効な一塩基多型(SNP;スニップ注2),ヒトの免疫に関わるHLA注3領域および疾病関連のSNPを増強した「ジャポニカアレイ®v2」を用いたサービスを10月27日より開始する。
ジャポニカアレイ®を用いたゲノム解析サービスは,同社のライフサイエンス解析センターにて,研究機関から送付された血液,唾液,DNA検体などから研究機関向けに個人ゲノムの多様性を解析するサービス。「ジャポニカアレイ®」についてはサービス開始以来,日本人向けのゲノム解析ツールとして幅広い研究機関で活用されている。
ジャポニカアレイ®は,東北大学東北メディカル・メガバンク機構注4が構築した「全ゲノムリファレンスパネル」を基にした日本人向けのゲノム解析ツールであり,COI東北拠点注5により開発された。高品質かつコスト競争力のある米・サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製のAxiom™ プラットフォームを採用し,日本人に特徴的な塩基注6配列を持つ約67.5万箇所のSNPを1枚のチップに搭載することにより,短時間での遺伝子多型解析を実現する。また,その解析結果から約30億塩基の全ゲノム構造を疑似的に再構成(インピュテーション注7)できる設計となっている。
「ジャポニカアレイ®v2」では,自己免疫疾患や臓器移植の際の移植片対宿主病など様々な疾病と関連が知られるHLA領域のSNPを約7,000個(従来のジャポニカアレイ®の約2倍)に増強した。この解析結果を研究機関に提供することにより,日本人における疾病や形質等と遺伝子多型との関連性を解明する研究を進展させ,個別化予防・個別化医療の実現の更なる加速やこの分野における日本の国際競争力向上に貢献していく。
また,「ジャポニカアレイ®v2」はCOI東北拠点によりバージョンアップされたものであり,ジャポニカアレイ®の特徴である全ゲノムインピュテーションの性能を引き続き兼ね備えている。
今後,同社は「ジャポニカアレイ®v2」の解析結果をもとに,HLAアレル型を算出するHLAインピュテーションサービスも,年内に開始することを計画している。このサービスにより,研究者は「ジャポニカアレイ®v2」を利用することで,SNP情報とHLAアレル型の両方を一度に取得することが可能になる。
なお,従来からの「ジャポニカアレイ®」を用いた解析サービスは,「ジャポニカアレイ®v2」を用いた解析サービスの開始後も継続する。
注1 ジャポニカアレイ®サービス開始時のプレスリリース
URL:http://www.toshiba.co.jp/about/press/2014_12/pr_j0101.htm
注2 ある集団で,ゲノム塩基配列が一塩基のみ異なる多様性があり,その頻度が1%以上のものを一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)と呼ぶ。
注3 赤血球の血液型(A型,B型,AB型,O型)があるように,白血球をはじめとする全身の細胞には,HLA(human leukocyte antigen:ヒト白血病抗原)と言われる型がある。自分と他者を識別するという大切な機能を持つ抗原で,体の防衛機能(免疫反応)の主役をつとめている。
注4 東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)
URL:http://www.megabank.tohoku.ac.jp/
注5 COI東北拠点
URL:http://www.coi.tohoku.ac.jp/
参考 革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)
URL:http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/coi/
参考 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム
URL:http://www.jst.go.jp/coi/outline/outline.html
注6 遺伝子の遺伝情報は塩基に保持されている。遺伝情報を構成する塩基はアデニン(A) ,グアニン(G) ,チミン(T),シトシン(C)の4種類。
注7 インピュテーションゲノムリファレンスパネルを基に,遺伝子型の補完を行う処理
●問い合わせ先
(株)東芝
ソリューション開発センター ライフサイエンス推進部
TEL 03-3457-2984
e-mail: [email protected]
http://www.toshiba.co.jp/genome/