はじめに

2020年4月から一部の放射線診断装置に関して線量管理・線量記録が義務化されたことにより，診療放射線技師は通常の撮影業務のほかに，医療放射線安全管理責任者に携わること，それに付随する研修会や業務量の増加が想定される。線量管理システムを導入する前提として，診療放射線技師が新たな業務の負担をいかに軽減できるかは重要な要素と思われる。今回は，「INIFINITT DoseM」の特徴的な機能を紹介する。

特徴的な機能

1．Webベース
INFINITT DoseMはHTML5対応の製品で，院内の各端末にインストールする作業を省略することができる。
現在，線量管理システムは多くの施設でシステム管理者や診療放射線技師が中心となって運用しているが，今後，診療科の医師が閲覧するようになることも予想されるため，Webベースの製品として開発されたシステムである。

2．さまざまな連携方式に対応
装置から線量情報を出力する際に，通常DICOM Radiation Dose Structured Report（以下，RDSR）でPACSに出力される。しかし，モダリティ導入時にRDSRのオプションを付けていない場合や，既存モダリティが古くRDSR対応していない場合は，線量レポートからの光学的文字認識（optical character recognition：OCR）/DICOMヘッダなど，さまざまな様式で出力されるので，INFINITT DoseMはさまざまな連携方式に対応している。

3．グラフ＆レポート出力機能
INFINITT DoseMは，取得した線量管理情報を用いてグラフやレポートに出力する機能を有する。診療放射線技師が統計や比較に用いるグラフ出力から，院内用/患者提供用のレポートに関しても作成する機能を有する（図1）。
レポートとして出力するほかに，集計したデータはCSV形式で出力でき，Excelなどで二次利用することが可能である。

図1　各種統計グラフと報告書

4．臓器線量への対応
INFINITT DoseMは，モンテカルロシミュレーションを用いた臓器線量にも対応している。CT装置から発生したaxial画像とRDSRを基に各臓器の実効線量を計算することが可能である。
実効線量算出の過程では，患者の身長と体重から体型を判断し，最適なファントムを当てはめて実効線量の計算を行う。身長および体重の情報がない場合は，axial画像から患者の体型を判断する。

5．SSDE対応
米国医学物理学会（AAPM）が提唱しているSSDEにも対応している。SSDEの算出方法には，AAPM Report No.204およびAAPM Report No.220が存在する。No.204では各スライスのX軸，Y軸距離から実効直径（effective diameter）を算出し，各スライスの変換係数を用いてSSDEを算出する。No.220では，各スライスの平均CT値と面積から水等価直径（water equivalent diameter）を算出し，各スライスの変換係数を用いてSSDEを算出する。INFINITT DoseMではNo.220で算出したSSDEを表示するが，実効直径と水等価直径も表示することができる。

6．核医学分野の対応
核医学検査では，放射性医薬品の線量記録，撮影にかかる線量記録をDICOMやOCR，RDSRから取得が可能である。また，RISを運用している施設においては，検定日時放射能や実投与日時放射能などの画像上にはない放射性医薬品の記録を，INFINITT DoseMと連携することが可能である。検定日時放射能と検定日時を入力すれば，実投与日時放射能や実効線量をシステム上で計算し管理することが可能である（図2）。

図2　核医学検査の結果入力画面

まとめ

2020年に世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスの影響で線量管理システムの導入に向けた検討が遅れている施設が多い。しかし，そのような向かい風の中でも各施設が線量管理の義務化に対して対応を進めている。システム導入を検討している施設では，まずは施設にシステムを導入して「どのように運用して，システムに何を求めるか？」を明確にして，それを実現できる会社の線量管理システムを検討することがよいだろう。