Varian Oncology Summit 2023
2023-9-13
(株)バリアンメディカルシステムズは2023年5月21日(日),ホテルオークラ神戸(兵庫県神戸市)において,放射線治療のエキスパートが同社ソリューションの最新臨床応用などを報告する「Varian Oncology Summit 2023」を開催した。本イベントの概要を紹介する。
Varian Oncology Summit は,昨年に続き2回目の開催で,対面でのイベントは5年ぶりとなる。当日の様子はライブ配信されたほか,オンデマンド配信も行われた。
冒頭,同社シニアマネージングディレクターの福島権一氏は,「今年度に入って当社リニアックの臨床稼働台数は600台を超え,がん医療を支えるメーカーとして身の引き締まる思いである」と挨拶。続いて,5つのセッションが設けられ,9名の演者が講演した。
「Varian Update」では,白井克幸氏(自治医科大学)が座長を務め,Sushil Beriwal氏(Varian, Vice President)が「ETHOS Therapy / IDENTIFY」と題して講演した。適応放射線治療(ART)のトータルソリューションである「ETHOS Therapy」は,日々の位置合わせに用いるコーンビームCT(CBCT)データと治療計画のテンプレートなどを活用し,daily adaptationを可能とするシステムである。Beriwal氏は,ETHOS Therapyでは人工知能(AI)を用いることで治療計画の自動化などが図られ,効率的なARTが実施できると述べたほか,より正確かつ安全なARTを支える製品として,体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」の特徴を概説した。
「Halcyon+TrueBeamは本当にベストパートナーなのか?」では,西村恭昌氏(生長会府中病院)が座長を務め,稲田正浩氏(近畿大学)と松本賢治氏(近畿大学病院)が登壇した。稲田氏は「臨床編」として,放射線治療医の視点から講演した。汎用型高精度放射線治療装置である「TrueBeam」と,強度変調放射線治療(IMRT)/強度変調回転放射線治療(VMAT)に特化された「Halcyon」の,それぞれの特徴を理解して使い分けることで,多くの患者を迅速に治療できていると述べた。松本氏は,「Halcyonの利用状況について〜TBのベストパートナー?〜」と題し,主にHalcyonの運用面について詳述した。さまざまな検証結果などについて述べた上で,VMATを短時間で実施でき,故障が少なく安定した治療が可能なHalcyonは,TrueBeamの良きパートナーであるとまとめた。
「これからの市民病院における放射線治療のあり方」では,小久保雅樹氏(神戸市立医療センター中央市民病院)が座長を務め,佐貫直子氏(市立四日市病院)と足立源樹氏(那覇市立病院)が登壇した。佐貫氏は,「三重県北部地域を担う公立病院の役割」と題して,地域の公的病院における放射線治療の実施状況や,限られたリソースで高精度放射線治療の割合を増やすための同院の取り組みなどを紹介した。足立氏は,「那覇市立病院の将来展望は?〜放射線治療の微妙な立ち位置〜」と題して講演。同院では,2台目の治療装置としてHalcyonを導入したことで,VMATを実施可能となり,地域がん診療連携拠点病院として十分な放射線治療の提供が可能になったと述べた。
「放射線治療における技術開発と,新しい技術の臨床化に必要なものについて」では,吉岡靖生氏(がん研究会有明病院)が座長を務め,神宮啓一氏と本間経康氏(共に東北大学)が登壇した。神宮氏は,「放射線治療における新しい技術を臨床使用する際に求められること」と題して講演した。東北大学病院における放射線治療の現状を紹介したほか,新技術の臨床導入におけるメリットや課題などについて,近年,注目されているAIチャットの回答を踏まえて考察した。本間氏は,「放射線治療における技術開発と新しい技術の臨床化に必要なもの」と題し,自身が開発に携わった画像誘導技術や照射制御などの動体対策技術の歴史などを述べた。その上で,新技術の臨床導入を推進するためには,さらなる自動化とAIの有効活用が重要であると指摘した。
最後のセッションとなった「京都大学におけるRapidArc 15年の歴史と,今後の高精度放射線治療のあり方について」では,永田 靖氏(中国労災病院)が座長を務め,中村光宏氏と溝脇尚志氏(共に京都大学)が登壇した。中村氏は,「物理・技術編」として,バリアン社のVMATである「RapidArc」の特徴や,固定多門IMRTとの比較などについて概説。RapidArcでは照射時間が大幅に短縮し,スループットが向上したほか,Eclipseのバージョンアップなどに伴い治療計画に要する時間の短縮や線量分布の改善が図られていると述べた。続いて,溝脇氏は,「京都大学におけるRapidArc 15年の歴史を振り返って」と題して講演した。RapidArcの導入当初からの利点として,固定多門IMRTと比較して照射時間が短縮し,MU値が低減することなどを挙げ,さらに,現在では線量分布調整の自由度も大幅に高まっていると述べた。また,RapidArcを用いた原発性脳腫瘍に対する永久脱毛防止の取り組みを,症例を踏まえて報告した。
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