Session I CT Image Contest 2015 Japanese Edition 
受賞者

2015-11-25


Best Overall(最優秀賞)

谷 和紀子(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

70kV Dual Powerを用いた脊髄動静脈瘻の描出
谷 和紀子(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

【背 景】67歳,男性。2014年9月頃から両下肢(右>左)の筋力低下が徐々に増悪し,転倒を繰り返すようになり,翌年5月,当院神経内科を紹介受診。腰仙椎MRIにてTh10レベルで脊柱管内に造影効果を伴う結節と,それから連続するような脊髄動静脈瘻様の管状構造物が認められたため,脊髄動静脈瘻の鑑別目的に胸腹部造影CTが依頼された。
【所 見】動脈早期相では,Th10レベルを中心に拡張蛇行する静脈の描出を認め,脊髄動静脈瘻であると考えられる。動脈後期相では,拡張した脈管はかなり強く造影されており,ここから連続してTh10の両側椎間孔へ向かう脈管が明瞭に描出され,流出静脈と考える。流入動脈は左Th10を疑う。アダムキュービッツ動脈は第7肋間動脈から分岐している。
【訴求ポイント】脊柱管内の細い血管を描出する際には,高線量での撮影および高レートでの造影剤注入が必要となる。動脈と静脈の分離が重要な脊髄動静脈瘻においては,複数時相の撮影が必要となり,被ばくの観点からも侵襲度が高い検査となる。本検査のポイントは,(1) 低電圧撮影により可能な限り造影剤のCT値を上げる:k-Edge近傍の70kVで撮影。(2) 低電圧撮影でも可能な限り画像ノイズの増加を抑える:2管球を用いてそれぞれから線量を与え(DSXXLモード),ピッチを小さくすることで十分な出力が可能となった。一方,頸椎から仙椎まで広範囲の動脈早期相および動脈後期相の2相撮影でも,70kVを使用することにより16.2 mGyと,胸腹部診断参考レベル以下の線量となった。(3) 再構成時にBeam Hardning Correction(BHC)およびADMIREを使用する:脊柱管内であっても高CNRを維持し,アーチファクトも少ない画像を得ることができた。

70kV Dual Powerを用いた脊髄動静脈瘻の描出
70kV Dual Powerを用いた脊髄動静脈瘻の描出

 

General部門

香川清澄(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

心臓カテーテルアブレーション術前低管電圧低造影剤量CT
香川清澄(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

【背 景】75歳,男性。強い運動時に動悸を伴うことと血圧上昇で他院受診。血圧上昇は一過性のもので家庭血圧も安定していたが,心電図にて心室期外収縮を認めたためホルター心電図を施行。発作性心房細動と非持続性頻拍6連を認め,カテーテルアブレーション治療の適応も含め,当院紹介受診となった。術前に,左房,肺静脈構造確認およびマッピング目的で胸部造影CTが依頼された。
【所 見】左心系と右心系は明瞭にコントラストがついており,十分識別可能である。明らかな肺静脈の破格は認められない。経食道エコーの所見と同様に,左房,左心耳に明らかな血栓は認められない。roof veinがあり,食道は左房左側を下行している。
【訴求ポイント】アブレーション手術が予定されており,被ばくと造影剤量を可能な限り抑えること,良好なマッピング画像を得るため肺動静脈の造影効果に差をつけること,心拍動の影響を受けないことを考えた。
造影剤注入方法は,テスト撮影と本撮影で注入時間を同一とし,テスト撮影時のみ造影剤と生食を5:5に混合しながら注入を行った。本手法ではテストと本撮影で同一時間にピークを持つTDCを得ることができるため,肺動脈に造影効果があること,肺静脈に造影効果がないことを正確に計ることができる。造影剤の注入時間は,肺動脈から肺静脈に移行すると言われる5秒とした。総量は30mL(テスト10mL,本撮影20mL)となり,造影剤量を抑えることができた。
本撮影はTurbo Flash Spiral Scanで行った。テスト撮影で計ったタイミングを高速撮影することで,肺動静脈の造影効果の差がついたタイミングを逃さず,心拍動の影響を抑えた撮影ができた。CERE kVセミオートで70kV,画像コントラストレベル11に設定し,ADMIRE4と組み合わせることで,低被ばく・低造影剤量でありながら,診断価値の高い画像を得ることができた。

心臓カテーテルアブレーション術前低管電圧低造影剤量CT
心臓カテーテルアブレーション術前低管電圧低造影剤量CT

 

Cardio-Vascular部門

佐藤和宏(東北大学病院診療技術部放射線部門)

包括的心臓CTと下肢動脈CTAのone-stop shop imaging
佐藤和宏(東北大学病院診療技術部放射線部門)

【背 景】労作時胸痛,左ABI低下を認めたため,CTによる精査が依頼された。高齢で糖尿病の既往があり,動脈に石灰化プラークが存在する可能性が高いと予測された。包括的心臓CTプロトコル(ダイナミック負荷パーフュージョンCT+冠動脈CTA+遅延造影CT )に,下肢動脈CTAを組み合わせたプロトコルを考案した。
【所 見】冠動脈CTAで左冠動脈前下行枝近位部,第1対角枝および右冠動脈近位部に非常に強い石灰化プラークを認め,内腔狭窄の評価は困難。左回旋枝には石灰化を認めるが,有意狭窄は認めない。ダイナミック負荷パーフュージョンCTで基部~中部前壁中隔~心尖部中隔,中部~心尖部前壁にかけて冠動脈血流低下を認め,前下行枝支配領域の虚血が示唆される。遅延造影CTで中部前壁の内膜下に遅延造影を認め,内膜下梗塞が示唆される。下肢動脈CTAで腹部大動脈遠位~両側総腸骨動脈領域に強い石灰化プラークを認め,左総腸骨動脈には石灰化プラークによる高度狭窄を認める。その他の領域では有意狭窄病変を認めず,左ABI低下の責任病変は左総腸骨動脈狭窄と考えられる。
【訴求ポイント】本プロトコルでは,冠動脈CTAの撮影直後に下肢動脈CTAを1回の息止めで撮影することが適当と考えられた。造影剤注入条件は包括的心臓CTプロトコルに則る。本症例では,パーフュージョン:50mL@5mL/s, CTA:[email protected]/s。左ABI低下が認められていることから,左下肢動脈の描出不良が懸念された。そこで,造影剤注入開始から撮影開始までの時間を推測し,ピッチを調整することによって,下肢動脈CTAの撮影時間を約15秒とした。また,CARE kV機能により80kVで下肢動脈CTAを撮影することで,造影コントラスト改善を図った。

包括的心臓CTと下肢動脈CTAのone-stop shop imaging
包括的心臓CTと下肢動脈CTAのone-stop shop imaging

 

Neuro部門

岡林 宏(高知医療センター医療技術局)

心不全を呈した新生児の脳動静脈奇形
岡林 宏(高知医療センター医療技術局)

【背 景】他院の胎児エコーで心拡大を指摘。出生後,呼吸循環状態安定せず,心不全あり。出生後の頭部エコーでは脳室拡大,左脳萎縮,脳動静脈の拡大が指摘され,全体像把握のためCTが施行された。
【所 見】血管内CT値250〜350HU。左大脳周囲に異常血管の発達と拡張した静脈,頸部では動脈・静脈の拡張が認められ,左頭蓋内を占拠する巨大脳動静脈奇形と診断された。左ACAの流入動脈,AVシャントからの血流量の増加が心不全の原因と考えられる。
【訴求ポイント】新生児の画像診断にはエコーやMRIが推奨されているものの,出生直後で患児状態が不安定なことから,短時間で検査が可能なCTが選択された。撮影には短時間で被ばくが少なく,時間分解能が高いHPSモードを使用した。造影効果,被ばく低減を考慮し,管電圧は100kVとした。HPSを使用することで,拍動や造影ムラによる画質低下がなく,有用な情報を提供することができた。術前や術中にCTデータを活用することで,血管内治療での被ばく低減に寄与でき,トータルの被ばく線量を抑えることが可能である。

心不全を呈した新生児の脳動静脈奇形

 

心不全を呈した新生児の脳動静脈奇形

 

Oncology部門

加來直樹(北九州市立医療センター診療支援部放射線技術課)

肺癌術前検査における呼吸動態撮影を利用した胸壁浸潤評価
加來直樹(北九州市立医療センター診療支援部放射線技術課)

【背 景】患者は71歳,男性。検診で左下葉(S6)肺癌疑い。術前精査にてCTが依頼される。
【所 見】左肺下葉S6背側に長径31mm大の結節が認められ,肺癌が疑われる。病変は胸膜とかなり密に接しているが,呼吸動態撮影では病変と胸膜の胸壁に対する可動性は良好で,明らかな浸潤の所見はない。
術中所見では肉眼的に腫瘍浸潤は認めなかった。また,病理組織学的にも臓側,壁側胸膜共に,腫瘍浸潤の所見はなかった。
【訴求ポイント】術前検査で行っている肺動静脈分離CTAに呼吸動態撮影を追加し,一度の検査で肺動静脈,気管支,腫瘍の解剖情報から病変の胸壁への癒着,浸潤の評価を行った。呼吸動態撮影ではAdaptive 4D Spiralを使用した。深吸気から深呼気までの間,連続撮影を行うため,被ばく線量の増加が懸念される。そこで1.2mmコリメーションを選択し,0.6mmコリメーションに比べ画像への線量効率を上げることで被ばく低減に努めた。1.2mmでは0.6mmに比べて分解能は劣るが,ターゲットとなる約31mmの病変の動態を評価するには,分解能の劣化は影響が少ないと考えた。また,病変の呼吸移動範囲と装置の時間分解能を考慮し,4D Range 84mm 1.25s,cycletime1.25sを選択することで,より連続性のある動態を表現できた。
術前検査において手術領域の解剖情報はもちろん,病期の分類を正確に評価することは術式決定や予後の予測には非常に重要である。特に,原発性肺癌のTNM分類による病期分類では,隣接臓器への腫瘍浸潤は重要な要素であり,これを正確に評価できることは非常に有益である。

肺癌術前検査における呼吸動態撮影を利用した胸壁浸潤評価
肺癌術前検査における呼吸動態撮影を利用した胸壁浸潤評価

 

Dual Energy部門

住田幸寛(津島市民病院放射線室)

肝がんTACE治療後のリピオドール定量
住田幸寛(津島市民病院放射線室)

【背 景】HBV陽性で肝硬変のある65歳,男性。肝S4に多血性腫瘤が出現し,HCCと診断されTACE治療が行われた。その3日後と21日後に,治療効果や合併症の有無などの評価のためCTがオーダーされ,Dual Energy Modeで施行した。リピオドール1本10mLは4800mgのヨードを含んでいる。本症例では肝動脈A4へのリピオドール投与量から計算して,ヨードが2068mg投与されたことになる。
【所 見】TACE治療後の通常CT画像やヨードマップ画像で,肝S4の腫瘤部にリピオドールの濃厚な沈着を示した。ヨードマップ画像でROIを設定することにより,ヨード濃度が測定できる。腫瘤性病変のヨード濃度が7.1mg/mL,局所的には34.1mg/mL,全肝では0.8mg/mLと計測された。各スライスにおいてヨード濃度と面積を記録して,スライス厚/スライス間隔をもとに腫瘤全体および全肝のヨードの定量を行うと,3日後で腫瘤726.2mg(投与量2068mgの35.1%),全肝943.4mg(45.6%),21日後では腫瘤648.0mg(31.3%),全肝663.1mg(32.1%)だった。
【訴求ポイント】画像診断装置であるDual Energy CTは,計測機器でもある。今回,肝細胞癌TACE治療後のリピオドール定量を行った。腫瘤部へのリピオドール集積は経時的減衰はわずかだったが,周囲健常肝からのリピオドールの経時的減衰が大きいことも定量的に示された。

肝がんTACE治療後のリピオドール定量
肝がんTACE治療後のリピオドール定量

 

Pediatric部門

南 汐里(金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門)

新生児複雑心奇形
南 汐里(金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門)

【背 景】生後1日目,身長45cm,体重2568gの女児。胎児エコーで心疾患が疑われた。母体が前期破水を起こしたため当院紹介となり,緊急帝王切開にて出生。出生時チアノーゼが持続するため心エコーを施行し,肺静脈灌流異常が確認された。心エコーにおいて右肺動脈のみ3mm程度確認できたが,左の肺動脈は確認できず,複雑心奇形の確定診断のため造影CT施行となった。
【所 見】ファロー四徴症の特徴の1つである肺動脈狭窄が閉鎖に至っており,極型ファロー四徴症である。心房中隔,心室中隔欠損あり。大動脈は両心室から出ているように見える。動脈管開存はなく,主要大動脈肺動脈側副血行路(MAPCA)が両側に3本認められる。左MAPCAは大動脈弓部から分岐している。右MAPCAは下行大動脈より2本分岐している。異所性右鎖骨下動脈も認める。
【訴求ポイント】(1) 造影剤量・生理食塩水の減量:造影剤量および生食の全体投与量の減量を小児科担当医に求められた。CARE Bolusを用い,トリガー後撮影開始直前に手動で造影剤注入を停止。全体の投与量(造影剤+生食)7mL,うち造影剤量4.6mLと,投与量の大幅な減量が可能となった。
(2) 低管電圧撮影における被ばく線量低減:CARE kVをONにして管電圧70kV,Flash Spiralのピッチ3.2を用いて撮影。被ばく線量を低減しつつ,3D画像作成にも十分な高い造影効果を得ることができた。

新生児複雑心奇形
新生児複雑心奇形

 

Emergency部門

香川清澄(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

深部静脈血栓症に対する緊急造影CT
香川清澄(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

【背 景】69歳,女性。主訴に数日前からの呼吸苦があり,検査当日はそれが急激に悪化し当院を緊急受診。胸部単純X線と心電図検査を施行するも明らかな異常所見なし。血液検査上Dダイマー高値で,肺梗塞の疑いがあり,緊急造影CTが依頼された。
【所 見】右肺動脈本幹から右肺動脈上葉枝や右中,下肺動脈にかけて,左肺動脈本幹から上葉枝の一部,下葉枝にかけて血栓を認める。ヨードマップでは右上葉全体,中葉の一部,下葉全体に区域性のヨード分布の低下を認める。一方,左上葉と下葉の一部にヨード分布の低下があるが右ほどではない。胸部CTでは,右に有意な血流の低下がある両肺動脈塞栓症と診断された。腹部から下肢CTでは左膝窩静脈内に造影欠損があり,左下肢静脈血栓症疑い。そのほか,中枢側には血栓は指摘できないと診断された。
【訴求ポイント】胸部撮影では,通常の造影CTでも肺塞栓の評価は可能であるが,肺血流の灌流情報まで得られるDual Energyで撮影した。モーションアーチファクトを抑えるため,回転速度を0.25sに設定した。腹部から下肢は,管電圧80-Sn150の組み合わせで撮影し,画像コントラストを得ることを優先した。検査後,その場でMixedイメージの割合を変えて,低管電圧側の情報を多く持つ条件で再構成することで,低管電圧寄りのコントラストがついた画像をすぐに提供できた。また,緊急に画像の作成が不要な症例,下肢静脈血栓が画像上はっきりしない症例では,Monoenergetic Plus解析で40keV画像を作成することで,より鮮明にコントラストをつけた画像を作成することもできた。緊急時の全身スキャンはFoVが広くなりがちだが,SOMATOM ForceではB管球側の収集が354mmに広がり,胸から骨盤,下肢にかけても解析FoVから欠けることなく撮影できた。

深部静脈血栓症に対する緊急造影CT
深部静脈血栓症に対する緊急造影CT

 

Technical部門

和田 彬(愛媛県立中央病院画像センター)

希釈造影併用にて肺動静脈分離+腹〜下肢CTA
和田 彬(愛媛県立中央病院画像センター)

【背 景】163cm,61kg,82歳,男性。肺がんにて胸壁合併切除を伴う左上葉切除術検討中。既知の腹部大動脈瘤,慢性解離,動脈硬化あり。動脈瘤精査と下肢痛出現のため,下肢血流障害の精査を行う。術前肺動静脈と気管支の3D,胸部から下肢までの3DCTAを依頼された。
【所 見】左肺上葉S1+S2の胸膜直下に既知の腫瘤影あり。最大径30mmで前回とほぼ変化なく肺がんと診断。胸壁と広く接し,臓側胸膜浸潤を疑う。近傍の肋骨に破壊像はないが,胸膜外脂肪織へ凸の形態を呈し,濃度も一部で上昇しており,胸壁浸潤の疑いあり。
(1) 明らかな遠隔転移は指摘できない。(2) 左舌区動脈はA4aが葉間型。肺静脈に明らかな変異なく,頭側で一部分葉不全あり。(3) 既知の腹部大動脈瘤と慢性期解離あり(最大短径32mm)。(4) 両側総腸骨動脈に壁在血栓あり。右には潰瘍形成も認められる。(5) 動脈硬化性変化を認めるが,明らかな狭窄を疑う所見は指摘できない。下腿三分岐の描出も比較的良好。
【訴求ポイント】(1) 冠動脈CTAで行っている希釈造影,肺動静脈分離撮影,造影剤減量を目的とした全血管CTA時のダブル・テスト・インジェクション法を併用してプロトコルを作成。(2) テストインジェクション時に希釈造影を選択することによって,造影タイミングの正確さと膝でのモニタリング時に造影剤が通り過ぎるのを予防できる。(3) 2か所で連続的にモニタリングを行うために,ボーラストラッキングのあとにシーケンス撮影をテストボーラス様に変更させて行った。(4) 1回の注入で撮影しているため造影剤の減量が可能。(5) 低管電圧撮影にて被ばく低減を実施。(6) 画像解析ワークステーションによって肺静脈相と腹部~下肢血管を加算することで,胸部~下肢動脈を3Dで作成可能なため,撮影範囲短縮による被ばく低減が可能となった。

希釈造影併用にて肺動静脈分離+腹〜下肢CTA
希釈造影併用にて肺動静脈分離+腹〜下肢CTA

 

Exceeding Expected Performance of  20-64 MSCT部門

和田貴人(医療法人回生会宝塚病院放射線科)

心房中隔欠損症(ASD)
和田貴人(医療法人回生会宝塚病院放射線科)

【背 景】72歳,女性。主訴は労作時息切れ。1995年に健診で心電図異常を認め,精査の結果,心房中隔欠損症を指摘されるも,無症状のため放置。2015年より,坂道や階段昇降時に息切れ出現のため当院受診。胸部症状に加え,高血圧症などの冠危険因子も多数あり,冠動脈疾患の有無と同時に腎動脈や下肢動脈疾患の把握も目的とする。
【所 見】心臓と腎動脈・下肢血管に高度狭窄は認められない。心房中隔欠損と肺動静脈拡張を認める。欠損孔の大きさは31.7mm×19.5mm,面積568mm2。心房中隔欠損症と診断される。
【訴求ポイント】当院では冠動脈CTAに加え,他の血管CTAを追加することが多いため,造影剤の注入方法や撮影タイミングなどを考慮する必要がある。本症例では,冠動脈CTAに加え,ASD,さらに腎〜下肢血管CTAを撮影するにあたり,造影剤量は100mLとした。
本装置の64MSCTの性能上,冠動脈CTAを撮影後,次の撮影まで10秒のdelay timeがあり,連続して下肢血管を撮影するにあたって,2段階注入を選択した。冠動脈撮影後,残りの造影剤と生食を各1.8mL/sで混合注入することにより,左右心房・心室が造影され,ASDを観察でき,さらに,2段階注入の効果で下肢血管CTAも良好に撮影できた。
心房中隔欠損孔を観察するため,任意MPR画像から心房中隔欠損孔の大きさ・位置・面積を描出。また,心房中隔欠損を観察するため,R-R間隔を20分割した画像で4D画像を作成し,この4D画像から心房・心室への動きや心房中隔欠損孔を観察可能となった。

心房中隔欠損症(ASD)
心房中隔欠損症(ASD)

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