Case 6 大分県立病院
地域基幹病院で電子カルテと連携した退院サマリのシステムをユーザーとFBAが協力してFileMakerで構築
リハビリテーション科部長 井上博文氏
2011-7-15
ナースステーションでは,FileMakerで構築した
物品管理のシステムを活用
大分県立病院(578床)では,2011年1月に電子カルテシステム(HOPE/EGMAIN-GX:富士通)が稼働した。同院では,これに合わせて電子カルテと連携してFileMakerによる退院サマリのシステムを構築した。同院では以前から,リハビリテーション科の井上博文部長を中心に病院基幹システムと並行してFileMakerによる,さまざまなシステムを構築し活用してきた。井上部長にFileMakerによるユーザーメードの病院情報システム構築の取り組みをインタビューするのと同時に,基幹病院での電子カルテと連携したFileMaker活用の現状を取材した。
●手術室の進行状況をリアルタイムで表示する仕組みをFileMakerで構築
井上部長は,2000年に大分県立病院の整形外科に赴任し,2003年よりリハビリテーション科の部長を兼務している。まずは,井上部長にFileMakerでのシステム構築のきっかけを聞いてみた。
「本格的に使い始めたのは,この病院に赴任して整形外科の手術台帳を電子化したのが最初です。手書きの手術申込書が読みにくいという要望があって,FileMakerでフォーマットを作成しワープロがわりに使っていました。そこから,自分たちの手術予定を管理し,外来や病棟で共有して参照できるように発展していきました」
その後,病院機能評価認定の要件から,全科で共通の退院サマリが必要となり,カルテ管理部会で検討した結果,整形外科で運用していたFileMakerの退院サマリ,入退院管理のシステムを全科に拡大して構築することになり,FileMakerの全病院的な利用に発展した。
井上部長は,FileMakerによる手術台帳のシステムを展開させ,手術待合室の家族に対する「手術進捗状況表示システム」を2007年にスタートした。これは,手術室ごとの手術の進行状況のステータスを,待合室の液晶モニタに棒グラフで表示するもので,画面には,FileMakerのスクリプトにより,一定時間ごとに駐車場の利用案内などの病院情報や,ニュースや天気予報などが表示できる仕組みだ。 「手術の際には,事前に患者さんや家族におおよその手術時間を伝えるのですが,実際には入退室の準備や麻酔の時間などがあり,正味の手術時間と家族の待ち時間に齟齬があって,余計な不安感を与える要因になっていました。そこで,入室から手術の終了までの進行状況をFileMakerに入力して,控え室のご家族に“見える化”したのが進捗状況表示システムです。ステータスは,手術室内のスタッフが入力していますので,特に難しいことをしているわけではありませんが,ちょっとした工夫です」
手術室の進捗状況のステータス管理は,患者サービスの向上だけでなく,院内各部署からの参照を可能にしたところ,放射線部や病理部,輸血室などで手術の状況がわかることで,業務の予定が立てやすくなったと井上部長は言う。「今までは,進捗状況がわからず待機しているしかなかったのが,必要とされるタイミングを予測できるようになって予定が立てやすくなりました」
●電子カルテの導入と同時にFileMakerで構築した退院サマリと連動
電子カルテ導入にあたっては,井上部長もシステム導入委員会のメンバーとして携わったが,ベンダーも含めて変更になったため,従来のFileMakerベースの院内情報システムも大きく変わることになった。井上部長は,電子カルテと連携したFileMakerの活用について次のように言う。
「電子カルテだけでは,すべてをカバーできないことはわかっていましたので,導入過程で電子カルテと,FileMakerで構築する部分の業務の切り分けをする予定だったのですが,時間的な問題で十分な検討ができませんでした。そこで,まず最低限必要な退院サマリだけはFileMakerで継続して運用することにして,電子カルテと連携した新たなシステムを構築することにしました」
構築にあたっては,基幹系のシステム連携で多くの実績を持つ(株)ジェネコム〈東京〉が電子カルテとのデータ連携の開発を担当し,稼働後の保守・管理を地元の(株)ユビキタステクノロジー〈大分〉が行うことになった。ユビキタステクノロジーのSD事業部第2システム開発課の伊東岳課長は「病院情報システムの保守・管理の業務委託を受け,電子カルテと連携したFileMakerの運用を中心に継続的な開発を担当しています。当社はFileMakerと電子カルテのシステム連携は経験が少なく,当初の開発はジェネコムの協力を得て,その後の日常的な管理と運用は弊社で進める体制になっています」と語る(ジェネコムの開発は下記コラムを参照)。
●FBAと協力してユーザーメードと基幹システムとの連携を深める
従来から院内で構築してきたFileMakerのシステムは,退院サマリ以外も必要に応じて新しいシステムに移行していくという。井上部長は,FileMakerを利用したこれからの開発の方向性を次のように語る。
「電子カルテが対応できない部分で,院内で必要とされる機能をFileMakerでカバーしていくことが,第一の目標です。例えば,電子カルテで蓄積されたデータから,特定の麻酔科医が担当する手術の予定だけを一覧するという“横串を刺す”仕組みがありません。これを電子カルテ側で用意するにはカスタマイズになり時間と予算が必要ですが,電子カルテとデータ連携ができればFileMakerで簡単に作成できます」
井上部長にFileMakerによるユーザーメードのメリットと,基幹システムとの連携のポイントを聞いてみた。
「私自身はプログラミングの知識はないのですが,FileMakerではデータベースの形に構築することができましたし,困った時には経験豊富なFBA
やJ-SUMMITS
からアイデアや助言を得られます。院内でのユーザーメードの取り組みを拡大していくには,仲間を増やして組織的な動きにしていくことが必要です。今回は約1年前からファイルメーカー社の協力を得て,院内でFileMakerユーザー研修を実施するなどの活動をしてきました。ある程度の規模のシステムを継続的に構築していくためには,院内のユーザーを集めて組織化して特定の個人に頼らない体制をつくっていくことが重要です」
大分県立病院では,今後もパートナーと協力して,電子カルテとの連携を深めてユーザーメードのメリットを活用したシステムをめざして開発を進めていく予定だ。
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In-Side column
■ODBCを使用した富士通製電子カルテとFileMakerの連携
(株)ジェネコム 代表取締役 高岡幸生
大分県立病院では,電子カルテシステムHOPE/EGMAIN-GX(富士通)およびデータウエアハウス(DWH)とFileMaker Proの連携を行っています。連携には,共通のAPIであるODBCを使用しています。FileMakerには,ODBCを用いてRDBMS(Relational DataBase Management System)のテーブルからレコードを取り込んだり,RDBMS側のテーブルに対してデータ更新を行う機能が実装されています。データ取込作業は,FileMaker Serverによって行われ,あらかじめ登録されたスケジュールに従って,自動的に処理を実行します。これによって,患者基本情報,入退院情報,個人病名情報,紹介元履歴情報,手術情報などを定期的に取り込みます。
また,大分県立病院では,電子カルテ系DBとDWH系DBの2系統が存在することから,FileMaker側では,どちらのDBからもデータを取得する必要があり,これらのDBに対する取込処理を行うスクリプト(自動処理)を作成して対応しています。
院内共通の各サマリ系FileMakerDBのレコード作成は,電子カルテとDWHからFileMaker側へデータが自動的に取り込まれたタイミングで行われます。取り込まれたデータは,取り込み専用のFileMakerDB(電子カルテ連携基盤:入退院情報.fp7など)に蓄積した後に,退院サマリ(summary.fp7)などのサマリ系のFileMakerDBに必要なデータ(患者ID,サマリ種別,入退院情報プライマリキー)をコピーします。同時に,患者基本情報や病名マスタ,術式マスタなどのマスタデータから必要な関連情報が参照されます。
FileMakerで作成された退院サマリは,最終的に富士通の文書管理システム(Medoc)で管理されますが,FileMakerから退院サマリのPDFと属性情報が記録されたCSVファイルをエクスポートし,そのPDFとCSVファイルをMedocが自動的に吸い上げ,以降はMedocで退院サマリの確認が行えます。
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協力FBA:(株)ジェネコム ,(株)ユビキタステクノロジー
Claris 法人営業窓口
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医療分野でのお客様事例 : https://content.claris.com/itv-medical
03-4345-3333(平日 10:00〜17:30)
大分県立病院
大分市大字豊饒476
TEL 097-546-7111
病床数:578
FileMaker Site Licence:1000
http://www.oita-kenbyo.jp/